
奈良県五條市にある特別養護老人ホーム「祥水園」では、精神科受診のハードルや職員の対応への不安を解消するため、オンライン精神科医療養指導を導入しました。導入から1年が経過し、現場にどのような変化が生まれたのか。岡部様(水杜 施設長代理)と髙坂様(水がたり フロア長)に、お話を伺いました。
(取材協力:〈水杜〉施設長代理 岡部様、〈水がたり〉フロア長 髙坂様)
- 祥水園(水杜・水がたり)
- 特別養護老人ホーム 祥水園は「祥水園・野原西Village」内で、「ユニット型個室フロア・水杜(みずのもり)」「多床室フロア・水がたり」として運営しております。ご利用者の「尊厳ある暮らし」を見つめ、お一人おひとりの身体状況、生活スタイルに合わせたケアを実践しております。
《課題・効果》
課題
- 精神科受診のハードルが高く、必要なタイミングで専門家に相談できない
- 認知症か精神疾患か判断できず、対応を模索していた
- 自分たちの対応が正しいのか自信が持てなかった
効果
- 相談機会が増えたことで、職員の知識の引き出しが増え、ケアの質が向上
- 医師に相談することで薬への理解度が上がり、症状の背景も理解できるようになった
- 療養指導で、自分たちの対応に自信が持てるだけでなく、対応の引き出しも増えた
<導入前の課題>
施設にいながら医師に相談できる環境に魅力を感じた
ー導入前の課題についてお教えください
◆岡部様:精神的に不安定な様子が見られるご利用者さまが何名かいらっしゃたのですが、精神科への受診はやはりハードルが高く、ぎりぎりの状態にならないと専門家に頼ることが難しい状態でした。療養指導では、施設にいながら月2回、オンラインで精神科医に相談できるということで、その点に魅力を感じました。
現場の職員たちも、ご利用者さまの症状が精神的な問題なのか、認知症の問題なのか判断ができず、どう対応すべきか現場で悩むケースが多くありました。自分たちの対応は本当に正しいのかという不安もあり、そこが相談できるようになるのは大きいと思いました。
精神科医へのイメージがいい意味で覆った
ー導入にあたり、不安や懸念はありましたか?
◆岡部様:サービスの第一印象は「難しそう」でした。
医師とは病院に行って直接話すという経験しかなかったので、「オンラインでどこまで相談ができるのか」という不安はありました。
特に「オンラインで先生に相談してちゃんと伝えられるのか」「伝わるのか」「こんなこと聞いてもいいのだろうか」という不安がありました。
しかし、1回目の相談を終えてからは不安も払拭されました。先生がとても話しやすい方で、こちらの状況にしっかり耳を傾けてくれて、『一緒に悩んでくれる』というスタンスがありがたかったです。最初はちゃんと情報を整理しておかないと…という緊張がありましたが、悩みながら一緒に考えてくれる姿を見て、とても安心しました。すぐに現場でも「みんな相談しに行っておいで」と声を掛け合えるくらい、安心して相談できるようになりました。

<療養指導の受け方>
ー現在の療養指導の運用体制について教えてください
◆髙坂様:月2回の療養指導では、その日の勤務者のうち、相談したいご利用者さまがいるフロアの職員が参加しています。課題ベースで相談しているので、同じご利用者さまについて連続で相談することもあります。
最初はリーダー職の職員が中心になって相談に参加しましたが、1ヶ月ほどで現場職員も同席するようになり、徐々に広がっていきました。リーダーが相談の様子を把握し、それを現場に共有することで、現場の職員も安心して参加できるようになったと思います。現在は固定メンバーではなく、必要に応じて誰でも参加できる柔軟な体制になっています。
まるで同じチームの一員のように「一緒に悩んでくれる」存在
ー精神科医の先生の印象はいかがでしたか?
◆岡部様:非常にざっくばらんで、同じ温度感で、同じ目線で話してくれる方です。私たちの現場の状況にも理解を示してくれて、「一緒に考えましょう」と言ってくれるのが嬉しいです。病院だと待ち時間が非常に長い一方で、実際に診察が始まるとすぐに終わってしまうことが少なくありません。一方、療養指導は利用者ではなく職員向けのサービスであるため、現場の悩みにしっかりと時間を割けることがありがたいです。

◆髙坂様:最初はみんな緊張していましたが、「気さくに話せた」「相談して良かった」といった声がほとんどです。まるで同じチームの一員のようで、親しみを覚えています。単に表面上の課題を解決しようとするのではなく、どういう背景でその行動をしてくれるのか一緒に考えてくれるのが嬉しいです。現場からも「相談に乗ってもらえる機会が得られるようになってすごくよかった」という声をよく聞きます。
<導入後の効果>
相談できることに「圧倒的安心感」がある
ー相談を通じて、どのような効果を感じていますか?
◆髙坂様:お薬の効果や副作用について、しっかりとした説明や助言が得られるのがありがたいです。お薬の調整を経て夜眠れるようになった方もいて、現場としてはとても大きな安心感がありました。
◆岡部様:ほかにも、大声で話し続けてしまうご利用者さまへの対応において、私たちはコミュニケーションでの対応を試みていましたが、それが本当に合っているのかという不安がありました。それに対して先生から「いいですね、継続してくださいね」と言ってもらえたことで、「間違ってなかったんだ」と安心して対応を続けられるようになりました。誰も正解がわからない中で、「これで合っているんだ」と承認をもらえる安心感は大きいです。
精神科医がいるからこそ見えてくる、症状の原因と解決策がある
ー導入から1年が経過し、現場にはどのような変化がありましたか?

◆髙坂様:ご利用者さまへの対応に工夫が生まれ、職員の引き出しが増えたと感じています。たとえば、トイレットペーパーを持ち出してしまう方がいて、貼り紙で「みんなのものです」と伝える工夫をしたところ、落ち着いたという事例もありました。その方の認知レベルや性格、薬の飲み合わせなどを踏まえて一緒に解決策を考えてくれるので、現場だけでは気づかない医学的な視点をもらえます。
今までは症状にフォーカスがあたり、原因についてはわからないことが多かったのですが、「これは薬の飲み合せが原因で起きているんだ」「認知症ではなく、精神的なものから来る症状なんだ」と原因を知ることで、受け止め方が変わり、楽になりました。
◆岡部様:薬の影響で起きている行動や、疾患の背景にある要因について教えてもらえることで、職員も表面的な対応ではなく、根本的なアプローチを考えられるようになりました。職員の知識が深まり、ケアの質が確実に上がっていると思います。
<今後の展望>
“相談=学び”という文化を現場に定着させていきたい
ー今後の活用についてどのようにお考えですか?
◆岡部様:現在の月2回の体制は継続しつつ、未参加の職員にも参加を促していきたいです。現場の介護職員こそ、日々のご利用者さまの様子を一番よく知っていますし、直接医師と話すことで、よりご利用者さまの状況に即した対応が可能になると感じています。
“相談=学び”という文化を現場に定着させていきたい
ー導入を迷っている施設へメッセージをお願いします
◆岡部様:最初は「オンラインでちゃんとできるのかな?」という不安もありましたが、いざ始めてみると「本当にやってよかった!」と思います。気軽に相談できる安心感と場所をつくってもらえましたし、施設全体で関わり方の質が上がっています。
他の施設の方にも、まずは療養指導で相談してみてほしいと思います。関わりづらい方がいると、「この方は徘徊するから」「短気だから」とレッテルを貼ってしまいがちです。ですがそれは認知症の症状かもしれないし、病気による症状かもしれない。先生がいれば専門性を持って寄り添ってくれるので、職員の対応の幅が広がりますし、安心感が得られます。

◆髙坂様:精神科にかかること自体に抵抗を感じる職員も多いですが、こうして気軽に相談できる”居場所”があることで、気持ちが軽くなります。「共感してもらえる」「一緒に考えてもらえる」といった状況が、現場にとってどれほど力になるか。相談できることの安心感を、私たちだけではなく、ぜひ多くの方に知ってもらいたいです。
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