突然ですが、僕が研修医の時に、上級医の先生から
「青柳、治療はテクニックであり、退院調整はアートなんだ。青柳にはどちらもできるようになって欲しい!」
と言われたことがあります。
※退院調整とは
急性期病院での治療が終了し、患者のQOL維持のためにも早期退院できるよう、患者・家族の思いと状況にあわせて在宅療養、他院への転院、介護施設入所など関係者と連携をとり、退院後の療養方法の選択を支援し調整すること。
いろんな治療をしたいのに、退院調整ばっかり難しい患者さんを連続して割り振られて、むくれていた僕の様子を見て言ってくれたのでしょう。
治療というテクニックを磨きたかった僕としては、なんとく釈然とせずに上手く言いくるめられたなと感じていたのですが、やけにこの言葉が頭に残っています。
結果がわかりやすい治療、正解のない退院調整
治療は、ある程度ガイドラインがあって、決まった治療と薬があって、それをいかに組み合わせて、状況を解決できるようにしていくのかという勝負です。
治療が上手くいけば、患者さんはどんどん良くなっていくし、カンファレンスでも「いいじゃん!名医やな!」って言ってもらえて、治療者として喜びを感じます。
ドーパミン出ます。
でも、退院調整って正解はないし、ロジックだけじゃなくて本人の気持ちとか家族の気持ちとかも考えなければいけないし、自分が思った通りのスケジュールで進まないこともしばしばあるし、病状が悪化したりしたら仕切り直しだし。。
カンファレンスでは「良く考えてるね〜」という感じで、いまいちやってやったぜ感がないというか。。
大事なのはとても良くわかっているんですけどね。正直あんまり燃えなかったんですよね。
しかし、介護の領域を見て、あの言葉の意味が少し分かってきた気がします。
相手の気持ちを考えるアート
介護分野って、考えの軸が「ご利用者さんの思い」なんですよね。
どうすればこの人は喜ぶのだろう?自分らしくいられるのだろう?
それを軸にケアの仕方を考えているわけです。
そこにはガイドラインなんてもちろんなくて、その人の表情とか、ふとした仕草とか、前に言っていた言葉とか、そういうのを総合的に感じながら考えているわけですよね。
アートじゃないですか!!
上級医の先生もこう言いたかったんでしょう。
「退院調整は個別性が高くて、ロジックだけじゃなく人の感情なども入ってきて、不確実性というか自分の心を反映させる余地があるというか、なんか良くわかんないけど、その患者さんや家族が幸せだろうなという形を想像しながら、そのために今の状況でどうしたら良いのかを調整していくということなんだよ。これはまさにアートじゃないかね。」
まあ、きっと多分こんな感じだと思います。
ありがとうございます先生。
これでテクニックだけでなく、アートを理解することができました。
これからの介護に必要なこと
でも、その反面、逆に思うこともあるんですよね。
介護側にはテクニック的な要素がもっとあった方がより良くなるんじゃないかと。
高齢社会で介護施設に入居される方の医療的な問題が増えてきており、それに対する対処とか気づきというのは多くなっています。
つまり、介護の段階で早めに気づいたり、対処できる医療問題が増えれば、ご利用者さんをより不安なく最後まで自分らしくいられるようにケアできるのではないかと。
もちろん、医療知識の取得を介護現場に押し付けるのは余りにも酷です。
日々忙しく働いている介護スタッフの方が、莫大な量の医療知識を勉強するなんていうのは全員が全員できることではないと思います。
なので、そこは介護側と医療側のアクセスを良くすることで解決していきたいと思います。
遠隔だって、アドバイス程度だって、わかっている人にすぐに聞ければ良いんですよ。
その方がスタッフの方もご利用者さんも、関わっている医療者も皆んな安心でしょう?
ということで、介護(アート)を支える医療(テクニック)という形がもっとあって良いのだと思います。
ドクターメイトではその形の実践を行っていきます!