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2026年も猛暑予想! 高齢者の熱中症「予防」「早期発見」「緊急対応」ポイント

6月23日、東京都の小笠原諸島と沖縄県の一部に今年初の熱中症警戒アラートが発令されました。

近年、記録的な猛暑が続く日本の夏ですが、気象庁は今年の気温は全国的に平年より高くなる確率が高く、太平洋高気圧の勢力が強まる7月下旬から8月にかけてが暑さのピークと予想しています。また、今年から気象庁の正式な予報用語として最高気温40℃以上を示す「酷暑日」が導入されました。

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熱中症による死亡者 約8割が65歳以上の高齢者 死亡者全体の9割以上が屋内で

熱中症というと、かつては真夏の屋外、炎天下でのスポーツ中や作業中に発症するイメージでしたが、近年はその様相が大きく変化しています。

厚生労働省の「人口動態統計」によると、熱中症による死亡者数は深刻な増加傾向にあります。2024年(令和6年)の熱中症による死亡者数は2,160人に上り、2023年の1,651人、2022年の1,477人と比較しても、その被害が年々拡大していることが浮き彫りになっています。

ここで特に注目したいのは、熱中症による死亡者の年齢層と発生場所です。まず、2024年から過去10年間で見ると、死亡者の約8割が65歳以上の高齢者です。この割合は過去2~3年は約85%に達しています。同様に2024年夏の東京都監察医務院のデータによると、東京都23区内の熱中症死亡者の88%が65歳以上の高齢者でしたが、死亡者全体の95.1%の熱中症発症場所は屋内です。しかも屋内死亡者の約5人に1人は家族などと同居していました。

厚生労働省 熱中症による死亡数 人口動態統計 より

この点から考えると、昨今ユニット型が進んでいる特別養護老人ホームや有料老人ホームでも、入所者・利用者が室内で熱中症になっても不思議ではありません。

そこで今回は介護職員向けに入所者・利用者での熱中症の危険度や特徴、高齢者での熱中症予防対策、早期発見のための観察ポイント、いざという時の緊急対応を解説します。

高齢者が熱中症にかかりやすい「3つの要因」とは

まず、なぜこれほどまでに高齢者が室内で熱中症に陥りやすいのでしょうか。それには加齢に伴う身体的な変化が大きく関係しています。

体内の水分量の減少

人間の体は多くの水分で構成されていますが、成人や小児の体内水分量が約60%であるのに対し、高齢者になると約50%にまで減少してしまいます。つまり、高齢者は若い人に比べて、常に「体内の水分が不足しがちな状態」、もっといえばやや脱水気味という状態からスタートしていると言えます。

さらに、高齢者では腎臓の機能が低下しがちで、腎臓が尿を濃縮する能力(尿を濃くして排出する水分を節約する能力)が低下するため、若年者と同じ量の老廃物を排泄するにも、より多くの水(尿)が必要になることも、水分不足に拍車をかけます。

感覚機能の低下

若年者であれば、暑ければ「暑い」と感じて冷房をつけ、汗をかけばのどが渇いて水分を摂取します。しかし、高齢になると、この「暑さ」や「のどの渇き」に対する感覚そのものが鈍くなってしまうのです。

実際に、東京都多摩市などで行われた調査では、年齢が高くなるにつれて、室温が30度を超えるような高温な環境下にいても、「住まいの暑さを全く感じない」「あまり感じない」と回答する人の割合が増加するというデータがあります。暑熱な環境にあっても「暑い」と感じず、結果として自発的な暑さ対策を実施しないという危険な連鎖が生じているのです。

体温調節機能の低下

一般に人体は暑くなると、

「皮膚血流を増加させる」→「汗をかく」→「汗が蒸発して熱を逃がす」

というメカニズムで体温を調整します。ところが高齢者では、加齢により皮膚の血管拡張反応も弱くなり、「皮膚血流を増加させる」機能が低下しています。そのため熱を皮膚まで運べず、そもそも放熱効率が低下しています。

若年者では、一般的に深部体温が37.1℃程度になると汗が出始めますが、高齢者では37.3~37.5℃くらいまで上がらないと十分な発汗が始まらないといわれています。つまり「汗をかく」機能も衰えています。

さらに汗が出始めても、汗腺そのものの機能低下により単位時間当たりの発汗量が少なく、若年者よりも放熱効率が悪くなっています。

特に高齢女性は、閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、皮膚血流や発汗反応が高齢男性よりも低下し、深部体温が急激に上昇しやすい傾向にあることが分かっています。

糖尿病や高血圧の薬による脱水や抗不安薬による発汗や体温調整の阻害の影響も

これらの要因が重なることで、本人が気づかないうちに重度の脱水症状や体温上昇が進行し、命に関わる事態に発展してしまうのです。

また、高齢者では基礎疾患を抱えていることが多く、それが原因で脱水に陥りやすいこともあります。たとえば高齢者に多い糖尿病では、血糖値が高いゆえに尿に糖が漏れ出す過程で、本来は体内に再吸収されるはずの水分も尿に流れ出し、脱水状態を生じやすくなります。また、糖尿病や心不全で使われるSGLT-2阻害薬は、まさに過剰な糖を尿として排泄するのが主作用であるため、かなりの頻尿になり、脱水状態が起こりやすい素地を抱えています。さらに高血圧症や心臓疾患では、水分や塩分を尿中に出す作用のある薬を内服している場合があり、脱水状態を生じやすくなります。

これ以外でも腎不全では、塩分摂取を制限される場合に塩分不足になりやすいこと、精神・神経疾患では、自律神経に影響のある薬(パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等)を内服していると、発汗や体温調整が阻害されやすくなるなどの影響もあります。

介護現場で実践可能な3つの熱中症対策

このような身体的特徴を持つ高齢者を熱中症から守るためには、周囲のサポートと適切な環境調整が不可欠です。介護現場で実践可能な具体的な対策を以下で説明します。

温度・湿度の適切な管理とエアコンの活用

最も重要かつ基本となるのが、室温のコントロール、肝はエアコンの使用です。前述の東京都監察医務院のデータによると、外気温30℃超が常態化し始めると、熱中症による死亡者が増え始め、かつ屋内死亡者の85.6%が室内にエアコンがない、あるいはエアコンを使っていなかったこともわかっています。

ただ、前述のように高齢者は暑さに対する感度が低下していますので、高齢者自身の感覚に頼ったエアコン操作は熱中症予防には必ずしもつながらない可能性があります。また、内閣府の「消費動向調査」のデータから、一般家庭でのエアコン普及率が50%を超えたのは1980年代前半で、現在の高齢者はエアコンになじみが薄い世代で、そもそもエアコンを使いたがらない、最悪はエアコンそのものが嫌いな人も少なくありません。

その意味では、まず地球温暖化などの影響で現在の夏の暑さは過去と別物で、エアコン利用による適切な室温管理が不可欠であることを繰り返し啓蒙する必要があります。

そのうえでエアコン使用に当たっては客観的な数値に基づく管理が必要です。とくに現在のユニット型中心の特養や有料老人ホームでは、入所者自身が個室内のエアコン作動を管理するため、どんな時にエアコンを使うべきかを周知しましょう。

この際に前提として必要なことは、温湿度計を入所者の居室や共用部分の見やすい場所に設置することです。居室への温湿度計設置は入所者の任意に任せるのではなく、施設側が配布あるいは貸与することが望ましいでしょう。

さて温度、湿度などの客観的指標ですが、一般的に多くの人が快適だと感じるのは、室温28℃以下、湿度40~60%の環境と言われ、これは熱中症予防にも通じますが、現実には一律に決められるものとは言えません。個々人の基礎疾患や建物の性能などによっても適切な室温・湿度は異なるからです。

その意味で個別の室温や湿度以上に大いに参考になるのが、環境省が発表する暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT、湿球黒球温度)です。これは熱中症を予防することを目的としてアメリカで提案された指標で、単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、気温とは別物です。詳細な説明は省きますが、この数値が25を超えると熱中症への警戒が必要となります。31を超えたら高齢者は屋外で安静にしていても危険です。(表)

これに関連し、最近のニュースの天気予報では冒頭で触れた「熱中症警戒アラート」あるいは「熱中症特別警戒アラート」という言葉をよく耳にするようになりました。これは予測される暑さ指数が前者は33、後者は35を超える時です。この予報が出る時はほぼ確実にテレビ・新聞などの天気予報で情報が流れます。こうした日は最高レベルの警戒を払って下さい。

もっともアラートが出ない日の暑さ指数でも高齢者にとっては危険なことが少なくありません。ただし、テレビの天気予報などでは、常に暑さ指数が報じられるとは限りませんので、熱中症のリスクがある4~10月は環境省の「熱中症予防情報サイト」をまめに確認するようにしましょう。

また、夜間の対策も見落としてはなりません。鉄筋コンクリート造の建物などでは、日中に壁や天井に蓄えられた熱が夜になって室内に放射され、夜間でも室温が29度以上、最上階に至っては32度近くまで上昇するケースが報告されています。ご存じのように寝ている間はコップ1杯分の発汗があるため、ただでさえ水分が失われます。「夜は涼しいから」と油断せず、就寝中もエアコンを適切に使用して温度を調節することが極めて重要です。

なお、エアコンを避けたがる高齢者の場合は風量や風の方向などを調節し、直接冷気が体に当たらないようにするなどの工夫も必要です。

一方、運悪く故障や停電などでエアコンが作動しないという最悪のことが起きないとも限りません。この場合は濡れたタオルなどを肌に当て、うちわであおぐと熱が放散されます。

積極的かつ計画的な水分・塩分の補給

高齢者は感覚機能が低下しているため、熱中症を予防するための水分摂取は「のどが渇いてから飲む」では後手に回ってしまいます。基本は「のどが渇く前に定期的に飲む」ことを徹底することです。1日あたり1.2リットルを目安とし、起床時、食事の前後、入浴の前後など、タイミングを決めてこまめに水分を提供しましょう。1時間ごとにコップ1杯の水分を勧めるのも効果的です。また、大量に汗をかいた場合は、水分だけでなく塩分の補給も忘れてはなりません。

ところでこの水分・塩分の補給に関しては、実は言い古されている重要なポイントがあります。それは1日3食の食事をきちんと摂ることです。食事から相応の水分・塩分が摂取可能だからです。具体例を挙げると、野菜をたくさん入れた味噌汁などは、水分・塩分の補給に向いています。

施設に入所中の高齢者の場合、屋外で重労働をして大量の汗をかくことはほとんどありませんから、1日3食の食事に加えて補完的に水分などを摂取することで、それ相応の水分・塩分は摂取できと言われています。

もっとも食事やそれ以外での水分・塩分摂取に関しては、糖尿病、高血圧症、心臓疾患、腎臓疾患を有する場合、個別の注意が必要です。この点はそれぞれの入所者・利用者の主治医と予め綿密に話し合っておく必要があります。

衣服の工夫と日差しの遮断

衣服による体温調節のサポートも有効です。通気性が良く、吸湿性・速乾性のある素材、具体的には麻、ポリエステル(吸汗速乾タイプ)が夏には最も適しており、これに次ぐのが綿、混紡素材(綿+ポリエステルなど)です。綿は最も一般的な衣服素材ですが、一度汗を吸うと乾きにくく、汗で濡れたままだと蒸れたり体温調節がしにくくなるところがやや難点です。また、室内であっても、汗のべたつきを防ぐために、首元や袖口などの開口部にゆとりがあって風通しの良い服が体からの放熱の観点からは望ましいです。

特養や有料老人ホームでは、入所者がどのような衣服を持っているかを、普段からさりげなくチェックし、前述のような条件を満たしている衣服を有している場合、夏は暑さ対策としてそれらの着用を勧めてみましょう。

さらに、室内に入り込む熱の多くは窓からの日射によるものです。可能であれば、すだれ、よしず、遮光カーテンなどを設置すれば、直射日光を物理的に遮断することで室温の上昇を抑えることができます。

厚生労働省 高齢者のための熱中症対策 より

高齢者の熱中症 早期発見のポイント

熱中症は、発症から重症化までのスピードが非常に速いのが特徴です。高齢者は自ら不調を訴えにくいからこそ、一番近くにいる介護職員の「気づき」が命を救います。日々の業務の中で、以下のポイントに注意して観察を行って下さい。

初期症状を見逃さない

熱中症の初期には、めまい、立ちくらみ、手足のしびれ、筋肉のこむら返り、生あくびといった症状が現れます。また、「なんとなく気分が悪い」「いつもと様子が違う」「倦怠感がある」といった曖昧なサインにも注意が必要です。利用者がぼんやりしていたり、口数が少なかったりする場合は、すぐに体調を確認して下さい。

排泄と発汗のチェック

脱水のサインは、排泄物にも現れます。尿の回数が極端に減っていないか、尿の色が普段より濃くなっていないかを確認しましょう。また、発汗の様子も重要です。異常に大量の汗をかいている場合も危険ですが、逆に「暑い環境なのに全く汗をかいていない」「皮膚が乾燥して熱を持っている」場合は、すでに体温調節機能が破綻している可能性が高く、非常に危険な状態です。

積極的な声掛けとコミュニケーション

気温の変化に合わせた衣服の調整が苦手な方もいます。厚着をしていないかを確認し、必要に応じて着替えを促しましょう。自分から「水を飲みたい」と言い出せない方には、「お茶をいれましたよ」「一緒にお水を飲みませんか?」と、自然な形で水分摂取を促す積極的な声掛けが大切です。

「熱中症かも?」覚えておきたい緊急対応フロー

万が一、「熱中症かもしれない」という入所者・利用者を発見した場合、最初の数分間の対応が生死を分けます。現場でパニックにならないよう、以下の緊急対応のフローを覚えておいて下さい。

ステップ1:意識状態(呼びかけへの反応)の確認

まず、入所者・利用者の意識がしっかりしているかを確認します。名前を呼んで、はっきりとした返答があるかを確認して下さい。もし、「返事がおかしい」「意識がない(あるいはもうろうとしている)」「けいれんを起こしている」といった重症のサインが見られた場合は、一刻の猶予もありませんので、直ちに救急車を要請して下さい。また、救急車が到着するまでの間に放置せず、次の冷却措置を開始します。

ステップ2:涼しい場所への避難と徹底的な冷却

意識の有無にかかわらず、すぐにエアコンがしっかりと効いた室内や、風通しのよい涼しい場所に移動させます。移動したら、衣服のボタンやベルトなどをゆるめ、体からの熱の放散を促します。 そして、保冷剤や氷のう、濡らした冷たいタオルなどを用いて、体を急冷します。特に太い血管が通っている「首の周り」「脇の下」「太ももの付け根(そけい部)」を集中的に冷やすことが、深部体温を下げるために極めて効果的です。うちわや扇風機で風を当てるのも良いでしょう。

ステップ3:水分・塩分の補給(意識がある場合のみ)

意識がはっきりしており、吐き気などがなく、自力で水分を飲み込める状態であれば、水分と塩分を補給させます。経口補水液や、塩分を含んだスポーツドリンクなどが適しています。 ただし、ここで忘れてはならない注意点があります。「意識がはっきりしない」「呼びかけへの反応が悪い」という場合は、誤嚥の危険があるため、口から無理に水を飲ませてはいけないということです。また、心臓疾患や腎臓疾患などの持病があり、主治医から水分の摂取制限を指示されている入所者・利用者の場合は、独断で大量の経口補水液を飲ませず、必ず事前の指示に従うか、医療機関に確認をとりましょう。

なお、熱中症の人に対して市販の解熱薬を服用させることは医学的には推奨されていません。これは熱中症による高体温は、感染症などによる発熱とは機序が異なるうえに、解熱薬の種類によっては、肝臓や腎臓の障害を引き起こして血液の凝固障害を悪化させる可能性や逆に体温を一時的に上昇させることがあるからです。

ステップ4:症状の経過観察と医療機関への受診

応急処置を行い、水分を摂取して休憩させた後、症状が改善したかを確認します。もし、水分を自力で摂れない場合や、処置を行っても一向に症状がよくならない場合は、ためらわずに速やかに医療機関を受診させる、あるいは救急車を要請します。

熱中症は、正しい知識と予防策で防ぐことができる

熱中症は、正しい知識と予防策があれば、おおむね防ぐことができる疾患です。しかし、ひとたび発症し重症化すれば、高齢者にとっては命を奪う恐ろしい病となります。 介護施設の現場では、職員一人ひとりの目配り、気配りが最大の防壁となります。今回紹介した予防策や初期症状のサイン、緊急対応の手順を施設内で共有し、日頃からチーム全体でシミュレーションを行っておくことが大切です。

日頃から利用者に接している介護職員の皆さんの「少し様子がおかしいな」という直感は、大きく外れていることは少ないと思われます。決して「大したことはないだろう」「まだ大丈夫だろう」と過信せず、迷った時は「安全なほう」へ舵を切り、早め早めの行動を心掛けて下さい。

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