今回のテーマは、財務省が考える「介護の効率化」についてです。
財政審では、介護の効率化に向けた方策として、(1)ロボット・AI・ICT等の実用化の推進、(2)タスクシフティング・シニア人材の活用推進、(3)文書量削減など組織マネジメント改革を挙げています。さらにその上部に「経営の大規模化・協働化」を求めています。
「ロボット・AI・ICT等の実用化の推進」については前回の2021年度介護報酬改定で見守り機器やインカムなどのICTを導入する場合に夜間の人員配置基準を緩和するなど、すでに試験的な動きが見えています。財政審は「介護現場の効率性の向上を図ることなく介護人材を確保していく選択肢は考えにくい」という見解を示しています。これは裏を返すと、様々な試算で示されている今後の高齢化に向けた介護人員必要数などの達成は、今後もほぼ困難だという認識がベースにあり、ICT活用で少ない人数で質を落とさない介護を実現すべき、と解釈できます。
「タスクシフティング・シニア人材の活用推進」は「ロボット・AI・ICT等の実用化の推進」と連動するものです。介護人材確保の難易度が高い背景には、報酬が高くないことに加え、雇用側が「フルタイム従事者」を採用したがることもあります。この解決のために、財務省は、隙間時間労働や社会参画を求めがちなシニア人材などをうまく活用するよう求めています。
「文書量削減など組織マネジメント改革」に関しては、介護の質に影響しにくい間接部門のコストを抑えて利益が獲得できるよう法人・施設側の努力を求めています。
一方、「経営の大規模化・協働化」はそれと比べてかなり大きな命題と言えそうです。今回の財政審の資料では規模の大きな事業所・施設や事業所の数が多い法人ほど平均収支率が高いという数字を示し、その中でも一定の経営基盤を有する法人が経営する事業所・施設の平均収支差をわざわざ棒グラフで明示しています。この辺を基準に今後の介護報酬改定を考えていくということがうかがえます。
また、資料では今回のコロナ禍ではオミクロン株での感染者急増の際には高齢者施設での感染者発生に際し、医学的には入院が必要にもかかわらず、施設内療養といった現実が起こったことを引き合いに出し、医療・介護の複合的ニーズへの対応を求めています。思想的に言えば「医療から介護まで切れ目ない」と称される地域包括ケアの概念に合致するものです。
端的に言えば、ここで言う大規模化とは、地域医療連携推進法人や今年度から始まった社会福祉連携推進法人などを当面は活用して欲しいということを意味しているのでしょう。
以上が、財務省が高齢者施設やそれを運営する側に求めていることといえます。ですが、財政審は介護に関しては別の方向からも切り込んでいます。