
高齢化社会の進展とともに日本国内での認知症患者は増加することが確実視されています。内閣府に設置された認知症施策推進関係者会議が2024年5月に公表した認知症患者の将来推計によると、2025年の国内の認知症患者数は471万6000人で、2050年には586万6000人に達すると予想されています。

認知症患者のほとんどが高齢者であることを前提に、この推計患者数がすべて65歳以上の高齢者と仮定すると、現時点では高齢者の約8人に1人が認知症患者ことになります。今後の認知症患者の増加ペースを考慮すれば、医療・介護関係者にとどまらず、多くの人が日常的に認知症患者に接するようになると予想されます。その意味では周囲への認知症に対する理解促進の媒介役となることも含め、介護関係者の果たすべき役割は現在より一層重要になります。
この点からも介護業界関係者は、自身の業務の範疇にとどまらない認知症の包括的な知識が必要です。そもそも認知症とは医学的にも極めて奥の深い領域ですので、これを機会に改めて認知症に関する知識を整理しておきましょう。
認知症は単一の病気を指すものではない
まず、もっとも基本的なところに立ち返りたいと思います。私たちが普段使っている「認知症」という言葉は単一の病気を指すものではありません。このように言われるとやや混乱する方もいるでしょう。より具体的に説明すると、さまざまな脳の病気や障害などが原因で記憶、思考、判断、見当識(現在の日時や場所などの基本的状況把握)といった認知機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたした状態を「認知症」と呼びます。
前述の説明の中でのポイントは「さまざまな脳の病気や障害などが原因で…」という点です。つまり「認知症」とは、ある種の共通した症状を示す人を一括りにまとめた「症候群」と呼ばれる概念で、個々の認知症患者にはそれぞれ原因となった病気があります。このことも踏まえて、主な認知症の医学的に正式な病名では「○○型認知症」という形で表記されます。