
今回は、ドクターメイトの夜間オンコール代行™、およびオンライン精神科医療養指導を利用している福井県丹生郡越前町にある特別養護老人ホーム「やすらぎ荘」経営管理長の金津様にお話を伺いました。医師と直接対話し、仮説を立てながらケアの視点を深めていくプロセスは、職員の学びとしてどう活きているのか。「職員の個性を活かす施設づくりが、チーム全体を強くする」と語る金津様に、職員のキャリア形成論から、療養指導の効果についてインタビューしています。(取材協力:経営管理長 金津様)
- 課題
- 人材不足による多忙で、入居者の心理を分析する余裕が喪失
- 以前はあった「仮説に基づくケア」が失われ、直感的なケアが常態化
- 外部との交流機会が少なく、新しい情報に触れる機会がない
- 効果
- 療養指導で思考が柔軟になり、「答えは1つではない」を前提としてケアへ変化
- 医師との定期的な対話で自信がつき、会議で自発的に意見を言えるように
- 意欲ある職員への教育で個の専門性が育ち、組織全体が活性化

<導入前の課題>
導入への期待は「職員の学び」
ーオンライン療養指導の導入に至った背景を教えてください
金津様:もともとドクターメイトのオンコール代行™を導入しており、その後、ドクターメイトからの紹介でオンライン精神科医療養指導の提案を受けました。
ー導入の決め手になったポイントは何でしたか?
金津様:導入を決めた最大の理由は、費用対効果の高さでした。加算で得られる収入、サービスにかかるコスト、加算取得に伴う職員の負担時間を総合的に検討した結果、十分に見合うと判断し、導入に至りました。これが経営的判断の部分です。
同時に、経営管理長として重視したのが職員の成長機会の創出です。介護現場の職員、特に看護師以外のスタッフは、精神科医と直接面談して相談する機会がほとんどありません。精神科医とのコミュニケーションを通じて、認知症を持つ方への捉え方が変わり、医師への相談に対する心理的障壁が低くなれば、職員の視野が広がり、専門職としての視野を広げる貴重な機会になるのではないかと考えました。
過去の取り組みと現在のギャップ。「考えるケア」を再びー。
やすらぎ荘では、約10年前まで臨床心理士を年1回招き、2日間の合宿形式で認知症ケアの研修を実施していました。しかし、職員の負担が大きかったことと、施設全体の方針が自立支援へとシフトしたことから、認知症に特化した取り組みは弱くなっていきました。その結果、現在の現場職員と10年前の職員を比較すると、「相手の心理的側面を捉えて仮説を立てる」という思考プロセスが失われ、直感的に動く職員が増えていたことが課題として浮上していました。
例:「トイレに行きたい」という訴えへの対応の変化
| 以前の職員 | 1回目にトイレ介助した直後に再度「トイレ」と訴える場合、「言葉で表現できない別の訴えがあるのでは?(お腹が痛い、体がだるい等)」と仮説を立てて対応 |
| 現在の職員 | 「トイレに行きたい」と言われたからトイレへ連れて行く。 繰り返されると「さっき出たから大丈夫ですよ」で終わってしまう |
人材不足により、目の前の業務に追われ、入居者の心理的側面を分析する余裕が失われていたのです。こうした背景から、精神科医との対話を通じて職員が再び「考えるケア」を取り戻すことも、療養指導導入の重要な目的となりました。
<導入の工夫>
「トップダウン」形式で、現場の「前向きな職員」を中心に配置
ー導入を決めた当初、職員の方々の反応はいかがでしたか?
金津様:療養指導の導入を現場に伝えた際、最初は「面倒くさそうだな」という空気がありました。Zoomの準備をして、決まった時間に先生と話をするだけでも、現場のスケジュールを調整する負担があるからです。さらに、職員にとっては「ドクター = 別世界の人」という感覚があり、「自分たちが何を話せばいいのか分からない」という心理的ハードルも大きかったようです。
そこで施設では、以下の方法で導入をスタートしました。

基本的には「上からの指示だからやりなさい」というトップダウンの形式で開始し、関心の高いメンバーを中心に利用をはじめました。
5年前から施設として「認知症ケアに力を入れる」という方針を明文化しており、それに沿って委員会を立ち上げていた経緯があります。委員会のメンバーにはもともと認知症に関心を持っている職員が数名おり、そうした前向きな職員を中心に療養指導を回していく形でスタートしました。固定メンバーを意図的に選び、「このメンバーでまずやってみてほしい」という形で体制を整え、その後は認知症に関心の高い他の職員も参加するようになりました。ただ全員への拡大ではなく、特定の職員が専門性を高めるという方針を取っています。

<導入後の効果>
ー療養指導を受けてみて、現場の反応はいかがでしたか?
金津様:療養指導を受け始めた当初、職員からは「最初は意味が分からなかった」という声が聞かれました。スーパーバイズを受けること自体が初めてで、何を話せばいいのか分からず、アドバイスをもらってもそれが正しいのかどうかも判断できない状態でした。職員が求めていたのは、「1+1=2」のような明確で正しい回答だったのです。

しかし、精神科医とのやり取りを繰り返すうちに、職員の中で「抽象的で予測的な回答でいいんだ」という許容感が生まれ、考え方が柔軟になってきました。
おそらく、最初のうちは「正しい答えを出さなければいけない」と思い込んでいた職員が多かったようです。だからこそ、抽象的なアドバイスに戸惑うことも多かった。しかし回数を重ねていくうちに、「これは仮説を立てる場なんだ」「正解をもらうのではなく、考えを共有して話し合う場なんだ」と少しずつ理解が深まっていきました。
はじめは「この人がうつ伏せで寝てばかりいる理由は何か」といった問いに対して、断定的な答えを求めていた職員も、今では「もしかしたら、こういう背景があるのかもしれない」という仮説を立てながら考えられるようになってきています。精神科医の先生との会話を通じて、視点が広がったことは大きな収穫です。

1つひとつの変化は小さくても、確実に変化している職員の行動
ー医師に相談するようになったことで、職員のケアは具体的にどう変わりましたか?
金津様:私自身は「ケアの質を急激に変えること」よりも、こうした職員一人ひとりの気づきや考え方の変化を大切にしたいと思っています。大きな変革ではなく、小さな行動変化の積み重ね。声のかけ方や観察の仕方といった行動に変化が生まれているのは、職員の中で何かが変化している証拠です。
ー金津様の目で見える職員の変化を教えてください。
そうですね。色々あります。具体的な変化の例でいうと、
| 利用者の反応を待てるようになった | 「トイレに行きますよ」と声をかけて、すぐに車椅子を動かしていた職員が、本人の返答を待つ「ワンテンポ」を挟めるようになった |
| 自分の意見を言えるようになった | 認知症委員会で、以前は中心メンバーが発言しないと誰も話さなかったのが、「○○さんのこの行動について、私は関心があって課題を感じている」と自発的に発言できる職員が増えた |
| 思考の言語化 | 「なんとなく思っていること」をちゃんと言語化して、お互いに話し合えるようになった |
などがあります。本人の中で考え方が少しずつ変わっているから、日々の小さな行動も変わってきている。そこの部分を評価しています。
<今後の展望>
全員に同じ専門性を求めない。だからこそ育つ個の力
ー療養指導の取り組みを広げていくにあたって、全職員への展開についてはどうお考えですか?
金津様:実は、全員に同じような専門性を求める必要はないと考えています。職員それぞれに個性があって、得意な領域も違う。ある人は排泄介助が得意だったり、ある人はレクリエーションが上手だったりします。その中で、認知症ケアに関心がある職員が精神科医と関わって知識を深めていくという形でいいと思っているんです。

ー関心のある職員を中心に回しているということですね
金津様:はい。現時点でも、療養指導を受けているのは当初の委員会メンバーを中心とした限られた職員です。ただ、そこで得た学びや視点がチーム内に還元されていくことで、結果的に施設全体のケアの質にもつながっていくと思っています。
ー個人の専門性がチームの力になるのですね
金津様:そのとおりです。むしろ、特定の職員が深く学んで、その専門性をチーム内で活かしてくれることが、組織としては強みになると考えています。誰か一人が突出するのではなく、その知識や気づきを共有することで、現場全体の力になっていく。そういう循環が生まれることを期待しています。

キャリアの可能性を広げる「外と話せる」経験
ー療養指導を通じて、職員のキャリア形成にも影響があったと感じていますか?
金津様:間違いなくあると思っています。もともと介護職員やケアマネージャーは、医師や他職種と対等に意見交換する機会が少なく、自分の考えを発信する場も限られていました。でも、療養指導で精神科医の先生と直接やりとりする経験を通じて、視野が広がり、自分の役割を再認識する職員が出てくるのを期待しています。
ー視野が広がることで、将来の可能性にもつながるということでしょうか
金津様:そうですね。例えば、これまでは「介護職のキャリア」と言えば、ケアマネになるか、管理職を目指すか、という限られた選択肢しか見えていなかったと思います。でも、療養指導を通じて認知症ケアの知見を深めたことで、「自分は現場にいながら認知症ケアを専門にしたい」と考える職員もでてくればいいな、と考えています。

ー導入を迷っている施設へメッセージをお願いします
金津様:大事なのは、現場の職員から課題意識が上がってきているかどうかだと思います。認知症の利用者さんに関して、BPSDへの対応に悩んでいたり、「もっと良い方法があるのでは」と感じている現場がある施設には、ぜひ試してみてほしいですね。
上から「やりなさい」と押し付ける形ではなく、現場の課題感に応える手段として導入する方が、絶対にうまくいきます。職員が悩んでいるということは、それだけ利用者さんのことを真剣に考えている証拠ですから。そういう職員にとって、療養指導はとても有意義な学びの機会になると思います。
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