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コロナ禍の介護職の給与 その実態は? 令和4年度の厚生省老健局関連予算概算要求

コロナ禍の介護職の給与 その実態は?

 2021年9月の自民党総裁選に勝利した岸田文雄首相が掲げた「成長と分配の好循環による『新しい資本主義』」という政策を具体化したのが、政府が2021年11月に発表した「コロナ克服・新時代開拓のための経済政策」です。この政策の目玉とも言えるのが、業務負担の割に低報酬と言われる保育士・幼稚園教諭、看護職、介護・障害福祉職員の賃上げの実現です。2022年2月からこうした職種の収入を3%程度(月額9000円)引き上げるための措置を講じる予定ですが、詳細はまだ未定です。

 こうしたなかで医療・福祉分野での人材紹介・派遣サービスを行う株式会社トライトが昨年12月に行った「看護・介護・保育職の給与実態調査」が、このほど公表されました。今回はこの中から介護職に関係する内容を解説します。調査は2021年12月1~6日にインターネットで行われ、調査対象は20~60代以上の介護職・看護職・保育職の男女626人が回答したものです。回答者の32.7%が無資格者も含む介護関係者で、この介護関係者のうち67.8%が正社員の雇用形態となっています。なお、同調査は2020年分と2021年分の両方を調べていますが、以下では特に断りがない限り、2021年分をとりあげます。

 _ 正社員の40%強が平均月給20万円以下

 まず、全雇用形態の平均月給は、最多が「15~20万円」の21.5%、次いで「10~15万円」の20.5%、「20~25万円」の19.5%などです。正社員に限定すると、最多はやはり「15~20万円」の27.3%ですが、以下は順に「20~25万円」が25.2%、「25~30万円」が16.5%、「10~15万円」が12.2%で、当然ながら正社員の方が月給水準は高くなっています。

 ただ、平均月給が20万円以下の層は、全雇用形態で半数以上、正社員のみに限っても40%強です。調査では資格の有無による平均給与実態の一端も調査していますが、介護福祉士の資格を持つ人であっても平均月給のボリュームゾーンは「20~25万円」の33.3%と国税庁調査の平均給与を下回ります。さらに言えば介護福祉士の有資格者で、国税庁調査の給与所得者の平均月給36万円を超える層は全体のわずか5.9%に過ぎません。有資格者の中で月給が高い傾向にあるのは社会福祉士です。ボリュームゾーンはやはり介護福祉士と同じく「20~25万円」の38.5%ですが、「30~35万円」が23.1%となっていて、介護福祉士でのこの割合が2.0%であることと比べると違いが顕著です。

 年間賞与は全雇用形態で30万円未満が39.0%と約4割を占め、ボリュームゾーンは「10~30万円」の23.4%。正社員のみでもほぼ同様の傾向ですが、正社員では「30~50万円」が25.6%で、全体の19.0%よりも多くなっています。

 資格別でみると、介護福祉士では「10~30万円」と「30~50万円」がともに21.6%ですが、社会福祉士では「30~50万円」と「50~70万円」がともに23.1%とワンランク上昇します。また、「70~100万円」の層は介護福祉士が2.0%に対して社会福祉士では23.1%にも上ります。最終的な介護職の年収は全雇用形態で最多が「200~250万円」の15.6%で、この前後はおおむねほぼ同じような割合です。ただ、先ほどの国税庁調査の平均年収を明らかに下回る層は8割弱となっていて、これは正社員のみに限ってもほぼ同様です。

 2020年から2021年にかけての年収増減は、「増減はない」が43.9%で最多ですが、他方で「増加した」と回答した人が32.2%と約3分の1いました。また「減少した」との回答は11.2%となっています。もっとも年収の増減に関しては正規雇用と非正規雇用で明暗が分かれています。「増減はない」の回答は正規雇用者で40.3%、非正規雇用者で51.5%で、「増加した」はそれぞれ36.7%、22.7%、「減少した」はそれぞれ9.3%、15.1%でした。この点は、総額はあまり増やさず、政策誘導に応じた項目間の付け替えを行うことが常態化している診療報酬・介護報酬の改定になぞらえると、非正規雇用者の報酬減が正規雇用者の報酬増の財源になった可能性もないとはいえません。

 _ 半数以上が給与に対して「不満」

 給与に対する満足度については回答者の半数超の51.2%が「不満」と回答し、「満足」の22.0%を大幅に上回ります。不満の理由(2つまで回答可)の筆頭に上がったのが、やはり「業務量に見合っていないから」の45.7%で、第2位の「労働時間に見合っていないから」の24.8%を大きく上回っています。そのうえで今回の岸田政権の政策に対する期待度ですが、「期待している」が55.1%、「期待していない」が30.2%でした。「期待している」との回答者の理由(2つまで回答可)は、トップが「生活に安定や余裕が生まれる」が62.3%、次いで「仕事にやりがいが持てるようになる」が41.5%、「採用や離職防止など人手不足の解消に繋がる」が30.0%などです。理由のトップ2の割合に関しては、看護職、保育職で期待している回答した人に比べて頭一つ分抜け出した形で、介護職ではとりわけ生活に余裕もなくやりがいも持てなかったという二重苦にあることがうかがえます。

 報酬とやりがいはおおむね連動しがちですが、介護報酬と言う国の財源に依拠するという意味で「無い袖は振れない」事業者側にとっては、報酬とは必ずしも連動しない部分でいかにやりがいを提供できるかも今後の離職ストップに向けた対策として一考の余地はあるかもしれません。

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