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【ニュース解説】東京都 要介護度の維持・改善に取り組んだ事業者に最大40万円の報奨金

2023年初めに発表された東京都による要介護高齢者の要介護度の維持・改善に取り組んだ事業者向けの報奨金交付の手続方法が12月11日に公表されました。今回はこの件を解説します。自治体によるADLや要介護度の維持・改善に対する報奨金支払いの取り組みは、すでに2013年度から東京都品川区で始まっており、政令指定都市を中心に複数の自治体で導入されています。団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年度を前に要介護度の悪化による財政ひっ迫を懸念する自治体側とさらなる人手不足や物価高騰により経営環境が悪化している介護事業者の思惑が相まって、今後こうした自治体の動きはさらに加速することが予想されます。

「ADL維持等加算」を算定している事業所が対象

今回の報奨金制度は東京都の「要介護度等改善促進事業」の一環として行われるものです。対象となるのは基準日である2023年4月1日時点で、通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設、特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設の事業所として指定を受け、かつ介護報酬の「ADL維持等加算」を算定している事業所です。

東京都の報奨金制度は基礎分と加算分に分かれ、まず算定事業所に該当すれば交付申請書の提出により、基礎分20万円が支給されます。加算分は加算判定基準日である2025年1月1日の在籍している利用者のうち、期間内に要介護度の区分変更・更新を行った人(死亡や退所等は除く)を評価対象者として、都が設定した計算式で事業所ごとに利用者の要介護度の変化を計算します。

この計算式ではまず各事業所は全評価対象者の要介護の「経年変化値」を計算します。「経年変化値」とは、直近の介護認定からの経年で悪化すると見込まれる要介護度を意味し、具体的には「判定対象者の直近介護認定からの期間(年数)×0.1(要介護度が 1 年間で悪化すると見込まれる数値)」を計算します。年数の計算に当たって、6 ヵ月以下の場合は切り捨て、7 か月以上の場合は切り上げます。さらに同じ対象者で「要介護度変化値」を計算します。ここではまず各要介護度が、自立・要支援1=0、要支援2・要介護1=1、要介護2=2、要介護3=3、要介護4=4、要介護5=5とそれぞれ係数化されています。対象者ごとに前述の基準日である2023年4月1日時点の要介護度を係数に置き換え、ここから加算判定基準日の要介護度に基づく係数を引いたものが変化値です。

各事業所は「経年変化値」「要介護度変化値」ともに対象者個々人ごとに算出し、それを合計します。その結果、要介護度変化値が0を超えている場合は「改善」、0以上で経年変化値以下の場合は「維持」と判定します。ADL維持等加算を算定している場合には基礎分として20万円、要介護度の維持・改善が客観的に認められる場合には、加算分としてさらに10万円(維持)又は20万円(改善)を加えて支給、要介護度変化値が経年変化値を上回っている場合、加算は取得できません。

東京都福祉局資料より

申請書の提出は2025年1月4~31日で、東京都では同一法人内に複数の事業所がある場合は交付申請書を事業所単位で作成し、法人単位で提出するよう求めています。交付決定通知は2月下旬から3月上旬に発出され、通知を受けた事業者はさらに3月中に実績報告書の提出が求められます。ちなみに交付申請書と実績報告書はほぼ同様の書式で、東京都福祉局によると「手続き上、このような形式をとらせていただいている」とのことで、申請書提出時点と交付決定内容に変更がない場合は、事実上同様の書類を2度提出する形になります。そのうえで最終的な交付額確定通知と報奨金の交付が4月中に行われる予定です。

令和6年度 介護報酬改定でもADL維持等加算が改定項目に

さて現在、東京都より先行してこうした事業を行っている自治体は、川崎市、静岡市、浜松市、名古屋市、岡山市、福岡市などがあります。ただ、各自治体の取り組みは、対象となるサービスの範囲や評価方法、報奨金の金額などはまちまちです。介護報酬については先日1.59%のプラス改定と決定しましたが、今後の改定検討項目として浮上しているものの1つが利用者のADLを維持・改善した場合に算定できるADL維持等加算です。同加算については、算定要件の簡素化とともに、加算算定基準のカットオフ値の引き上げが検討されています。また、国は2021年度介護報酬改定でスタートした科学的介護情報システム(LIFE)へのデータ入力とそれに伴う加算算定について、入力負荷軽減などに取り組む一方で、その利活用や評価方法改定については、さらに推進していく方向性を打ち出しています。その意味では今後、国の評価方法と各自治体の評価の統一化など様々な議論が進んでいくことが予想されます。

東京都福祉局「要介護度等改善促進事業(報奨金の交付)」

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