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介護施設の退職・採用実態調査 人材紹介経由の採用 効果を実感も手数料がネックに

少子高齢化に伴い若年者の絶対数が不足しつつある日本では、全業界で労働者の確保が課題になっています。その中でも介護業界は、労働者となる若年者の減少に加え、サービス受給者である高齢者の増加が人材不足に拍車をかけています。こうした中で独立行政法人・福祉医療機構が「2021 年度(令和 3 年度)特別養護老人ホームの人材確保に関する調査について」をこのほど公表しました。今回はこの調査結果の中でいくつか注目すべき点について紹介します。

まず、調査概要ですが、福祉医療機構が貸付を行っている介護老人福祉施設および地域密着型介護老人福祉施設生活介護を運営する3679の社会福祉法人を対象に2021年11月18日から12月24日までWebで行ったものです。回答数は993法人(1035施設)で、回答率は27.0%でした。回答施設内訳は介護報酬で従来型個室および多床室の適用を受けている「従来型」が381施設(36.8%)、ユニット型個室の適用を受けている「ユニット型」が527施設(50.9%)、従来型個室と多床室の適用を受けている部分とユニット型個室の適用を受けている部分を併せ持つ「その他」が127施設(12.3%)でした。 なお、調査での「職員」の定義は、利用者のケアに直接あたる介護職員、看護職員、理学療法士、作業療法士などで、事務員・調理員などは含んでいません。

94%の施設「2020年度に介護職員の退職あり」 約3割が「勤続1年未満で退職」

介護人材不足は周知のことですが、今回の調査を見るとその原因は一部で指摘される介護業界の「3K」労働環境という構造的な問題とは必ずしも言えないようです。本調査では介護職員の退職状況も調査していますが、回答施設のうち94.0%が2020年度に介護職員の退職があったと回答しています。これ自体は定年退職も含む一般論の退職なので、必ずしも高い割合とは言えません。

しかし、退職者の勤続年数別を見ると、「勤続1年未満」が30.7%、「勤続1年以上3年未満」が28.1%と、勤続3年未満が全体の約6割を占めている点が注目されます。つまるところ職場への定着に大きな課題があるということです。採用も難しい中、定着にも問題があるとなると、これは「穴の開いたバケツに水を貯める」がごとしです。

ただ、同時に興味深い点は、退職後の就業先を追跡できているケースでは、「介護職で介護業界に転職」したケースが67.4%と圧倒的に最多であることです。つまり介護職そのものに問題があるというよりは、職場環境、人間関係、待遇などにミスマッチがあると推察されます。最終的に法人側も改めて勤務環境の改善に取り組む必要があることを示唆しています。

採用手法「ハローワーク」94.5% 「職員からの紹介」58.5%

2020年度の採用活動の実態については、回答全施設のうち「(採用活動を)実施し、採用した」と回答した割合が90.7%と大多数を占めた一方、6.4%の施設では採用活動を実施したものの採用に至らなかったと回答しています(残りの施設は採用活動そのものを実施していない)。

こうした採用活動での利用手段(複数回答)に関しては、最多は「ハローワーク」が94.5%、次いで「法人・施設のホームページ」が76.0%、「職員からの紹介」が58.5%、「人材紹介会社の利用」が46.1%などとなっています。端的に言えば、経費がかからない採用手段がトップ3を占めています。

人材紹介会社76.9%が「採用効果高い」と評価も、98.5%「手数料高い」

採用効果の高かったものについても調査しており、効果があったとの回答割合が最も高かったのは「人材紹介会社の利用」が76.9%で、次いで「ハローワーク」が65.4%、「職員からの紹介」が57.0%、「法人・施設のホームページ」が34.0%などでした。採用手段トップ4と採用効果が高かったものトップ4が同じなのですが、解釈にやや注意が必要でしょう。

まず、「法人・施設のホームページ」は採用手段としての利用率は高いものの、効果ではトップ4で最低とギャップが大きいことです。悪く言えば「採用をやっている感」を作るツールになっているとも言えます。その意味では法人・施設のホームページそのもののSEO対策も含めた総合的な取り組みが必要になると考えられます。

また、採用手段としての利用率と効果のギャップが最小だったのが、「職員からの紹介」です。裏を返せば、経費を抑えた人災確保は良質な職員の定着率を上げる勤務環境の改善が重要と改めて言えるわけです。

ちなみに人材確保の効果が最も高いと評価を受けた「人材紹介会社の利用」は高額な費用が発生することがよく知られています。調査によると、1施設当たりの人材紹介会社への年間支払手数料は393.9万円で、1施設当たりのサービス活動収益の0.93%に相当する金額で決して安くはありません。実際、利用した施設のうち、手数料の水準について「とても高い」、「やや高い」と回答した割合の合計98.5%にものぼりました。

また、同調査では人材紹介会社を利用した満足度とこのルートでの職員の定着率という2つの関連も尋ねています。それによると、人材紹介会社の利用によって採用した職員の定着率が「ほかの採用経路と比べた定着率よりも低い」と回答した施設の割合は、「やや満足」では7.0%、「やや不満足」では41.4%、「不満足」では67.4%で、採用職員の定着率が満足度と強い相関があることがわかりました。

いずれにせよ効率的な人材確保のためには何よりも職場環境を整備・改善するというごく当たり前の結論が導き出せると言えそうです。