最新の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の全国での新規陽性者、入院者は4月に入り増加傾向を示しています。最近ではオミクロン(BA.1)株の1種でより感染力が強いBA.2株への置き換わりが進み、さらにBA.1株とBA.2株の性質が混じったXE株という新規変異株が空港検疫で見つかったことも報告されています。沖縄県では感染者の増加状況を踏まえ、玉城デニー知事が「第7波に突入したものと認識せざるを得ない」とも発言しています。まだ気は抜けない状況です。
岸田文雄首相は、前月の新型インフルエンザ特措法に基づくまん延防止等重点措置(まん防)の全面解除に当たって当面は「平時への移行時期」と位置づけ、「最大限警戒しつつ、可能な限り日常生活を取り戻す期間とする」と述べました。同時に平時への移行期間の対策として「保健医療体制の維持・強化」を謳いました。今後の感染増加などで医療逼迫が起きないよう対策を行うということですが、こと新型コロナ対応病床については急に増やせるわけではありません。
高齢者の場合は基礎疾患の有無にかかわらず、高齢だけで重症化のリスクファクターであるため、感染時には通常入院となります。ところが第6波の流行では第5波とは比較にならない感染者が発生したこともあり、高齢者施設内で利用者が感染した場合でも、症状が軽い場合は入院せずに施設内でそのまま療養する「施設内療養」が行われました。
もっとも高齢者施設では、医療機関の新型コロナ病床ほどの厳重な感染拡大防止対策が施されているわけではありません。このため厚生労働省はまん防以上を発出されている地域での施設内療養に当たって、4月末までは療養環境整備のために地域医療介護総合確保基金から療養者1人当たり最大30万円を補助することを決定しました。
4月7日に行われた記者会見で、岸田首相はこの施設内療養の補助について、対象地域をまん防発出の有無にかかわらず全国に拡大し、補助期限も7月末まで延長することを発表しました。ちなみに岸田首相はこの時の会見で記者から「現在は第7波の入口か?」という質問に対して否定しつつも、「第6波の拡大が下げ止まっている」と微妙な表現をしています。この物言いと今回の新たな方針を併せて考えると、現在政府は第7波到来を相当懸念していることがうかがえます。
この件については翌4月8日に後藤茂之・厚生労働大臣も記者会見で触れています。この時は「オミクロン株の特性等を踏まえた対策の重点化・迅速化を進めていく」旨の発言をしています。これはオミクロン株では、若年感染者での軽症傾向が強くなっている一方、高齢者ではいまだ重症化リスクが高いという年齢階層による2極化を念頭に高齢者での対策を強化するという意味と捉えることができます。もっとも感染状況については岸田首相と同様に後藤大臣も懸念を示しています。 今回の措置については、後藤大臣の会見と同じ4月8日付で厚労省からの事務連絡通知「高齢者施設等における施設内療養に関する更なる追加的支援策の対象拡大及び期間延長について」に明記されています。第6波でまん防などが発出されなかった、あるいは発出期間が短かった地域の高齢者施設関係者は改めて確認しておくことが望ましいでしょう。