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【ニュース解説】介護従事者の9割弱が日常的にストレス 原因は人間関係や業務負荷

厚生労働省が行っている雇用動向調査では、2022年に介護分野で入職率から離職率を引いた「入職超過率」が-1.6%、つまり離職超過となりました。現在の調査方式になった2009年以降で介護分野が離職超過となったのは初のことです。

この背景には従来から指摘されている業務量の多さ・過酷さのわりに低賃金であることや利用者からのハラスメントが少なくないことなど介護業界が抱える構造が指摘されています。では現場で働く介護従事者は、こうした状況にどの程度ストレスを感じているのでしょうか?

このほどある調査から、介護従事者の9割弱が職場の人間関係や業務負荷などで日常的にストレスを感じているとの結果が明らかになりました。今回はこの件について解説します。この調査は介護求人サイトの比較サイト「かいごの森」を運営する株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区)が「(介護士限定)ストレスに関する簡単アンケート」と題して今年3月21~24日にかけてインターネットを通じて調査を行い、100人の回収サンプル数からわかった結果です。

「職場の同僚や上司との人間関係」「業務量の多さ」にストレス

「日常的にどれくらいストレスを感じていますか?」という問いに対しては、「常に感じる」との回答が最多の34%、次いで「週に何度か感じる」が32%、「月に何度か感じる」が21%、「あまり感じない」が8%、「全く感じない」が5%という結果になりました。回答した介護従事者の実に87%が日常的にストレスを感じているという結果です。

株式会社SOKKIN「介護士のストレス事情の実態調査」より

さらに「具体的にどのようなストレスを感じますか?」という問い(複数回答)では、「職場の同僚や上司との人間関係」、「業務量の多さ」がともに18%、「利用者さんと関わり」が14%、これらに次ぐのが「給料が低い」などでした。

株式会社SOKKIN「介護士のストレス事情の実態調査」より

感じているストレスの自由記述の一部を以下に紹介します。

・上司や同僚との価値観の違いから生じるストレスが大きい。業務量が多く、常に時間に追われているので、コミュニケーションを十分に取る余裕がない。(20代後半)

・若い職員の意見をきちんと聞き入れる姿勢が見られないことや話しやすい人にだけ情報共有をしているため、大事な情報がみんなに伝わっていないなどが多く仕事のやりにくさを感じている。(30代前半)

・ベテランのスタッフさんがパワハラ気味。(50代前半)

・介護の仕事を始めたばかりで、先輩との関係づくりに苦労している。わからないことを聞きづらい雰囲気があって、ストレスに感じることが多い。(20代前半)

・働いている社員が少なすぎて、3人の利用者に対して1人の介護者が付くので、業務量の多さで時間に追われて毎日ストレスを感じている。(30代後半)

・介護の仕事は利用者さんとの関わりにやりがいを感じる一方で、認知症の方の介護は精神的に非常にストレスが大きい。暴言や暴力を受けることもあり、どう対応していいか悩むことが多い。(50代後半)

・人の命を預かる責任の重さから、緊張感が絶えない。認知症の方の徘徊や、ターミナルケアの際の看取りなど、神経をすり減らす場面が多い。(50代前半)

・慢性的な人手不足から、定時で帰れないことが多く、毎月20時間以上の残業をしている。子育てもあるので、仕事と家庭の両立が難しく、ワークライフバランスが大きく崩れている。有給休暇も取得しづらい雰囲気があり、心身共に休まる暇がない。(40代後半)

・夜勤のシフトが多いのでワークライフバランスが崩れ、心身共に疲弊している。改善を求めても聞き入れてもらえず、八方塞がりな状況に陥っている。(30代後半)

・介護の仕事は不規則な勤務が多いので、プライベートの予定が立てづらい。友人との約束をドタキャンすることも度々あり、申し訳ない気持ちでいっぱい。恋人とゆっくり過ごす時間もなかなか取れない。仕事とプライベートのバランスを取るのが難しいと感じている。(20代前半)

ストレスとの関連が疑われる身体症状「身体のだるさ」「頭痛」など

「身体的なストレス症状はありますか?」という問いに対しては(回答者95人)、「身体のだるさ」との回答が最多の21%。次いで「腰痛」が18%、「頭痛」が11%などでした。このほかにも「睡眠不足」「目の疲れ」「胃の不調」などの回答もあり、回答者の80%以上がストレスとの関連が疑われる身体症状を有していました。

株式会社SOKKIN「介護士のストレス事情の実態調査」より

約半数が「ストレスが原因で転職」

「ストレスが原因で転職したことはありますか?」という問いに対しては「ない」が57%、「ある」が43%。4割以上が業務のストレスが原因で転職をしている実態が明らかになりました。ストレスが原因の転職経験がないとの回答者は6割弱でしたが、前述のストレスの有無に関する問いに対して9割弱が何らかのストレスを感じているとの回答だったことを併せて考えると、このストレスが原因の転職経験がない6割弱の人の中には、ストレスを感じながら転職をせずに同じ職場で働き続けている人がかなりいるとも解釈できます。

ストレスが原因で転職をしたことがあるとの回答者(44人)のみを対象に「転職してストレスは軽減しましたか?」と尋ねた結果は、「軽減した」が50%、「変わらない」が41%、「よりストレスを感じる」が9%でした。

株式会社SOKKIN「介護士のストレス事情の実態調査」より

「変わらない」「よりストレスを感じる」との回答者に具体的な状況を尋ねた自由記述の内容の一部を以下に紹介します。

・今の職場に移ってからは多少マシになったが、介護の仕事自体がストレスフルなのは変わらない。どこの施設も大なり小なり似たような状況なのかもしれない。(40代前半)

・今の職場は人間関係は良好だが、低賃金と不規則なシフトによるワークライフバランスの崩れにストレスを感じている。介護業界全体の待遇改善が進まない限り、どこで働いてもストレスは変わらないのかもしれない。(40代前半)

・今の職場は大規模な施設で、スタッフ間の連携が取れておらず、トラブルが絶えない。以前は感じなかったような、人間関係のストレスを感じるようになった。(50代前半)

・今の職場は人間関係の悪さと長時間労働・低賃金にストレスを感じている。介護の仕事はどこも大変だと思うが、今の環境では限界を感じている。再度転職も視野に入れている。(30代前半)

賃金の改善と業務負荷軽減でストレスの無い職場環境づくりを

ストレスが原因で転職した経験のある人に対する回答結果を自由記述も含めて俯瞰すると、やはり介護業界の構造的問題が改めて浮き彫りになります。

この解決法については月並みですが、賃金の改善と業務負荷軽減が大きなポイントになることは言うまでもありません。賃金改善では、目下は今回の介護報酬改定で既存の加算を統合して新設された介護職員等処遇改善加算でより上位の加算を獲得することや、LIFE関連加算などを積極的に算定して収益を改善し、職員の賃金改善の原資を獲得することです。

もちろんこれら加算は介護サービスの質向上も念頭に置かれたものですから、算定要件をクリアするのは簡単ではありません。しかし、できない理由や愚痴だけを重ねても何も変わりません。介護事業者の収益の中核が介護報酬である以上、打てる手は限られています。そしてこれまでの介護事業者の各種経営調査の結果からは、収益性の高い介護事業者はやはりこれら加算を積極的に算定しています。

同時にこうした加算を現場の負荷を最低限にして取得するためにはどうするかを考えることは、すなわち業務負荷軽減につながります。繰り返しになりますが、今の介護業界に求められていることは「やらない理由を口にするのではなく、どうしたらやれるかを考える」に尽きると言っても過言ではありません。

株式会社SOKKIN「介護士のストレス事情の実態調査」

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