財務省は今回、介護関連支出を抑制するためにもう一つの方向性を提示しています。それは利用者負担の拡大です。現在は年収に応じて1~3割の負担割合となっていますが、現実はほとんどの利用者が1割負担となっています。資料ではこのうちの2割負担範囲を原則とし、その対象範囲を拡大することを提言しています。さらに財政審は従来からケアマネジメント(居宅介護支援)の有料化、つまりケアプラン作成に自己負担を求めるというものを主張しています。
資料ではケアマネ事業所のほとんどが他の介護サービス事業所に併設され、そうした事業所のサービス利用を求めるケアプラン作成を法人・上司から求められたり、介護報酬算定のため必要のない福祉用具貸与などによりプランを作成したという事例などを挙げてケアプラン作成の不適正さが横行していると指摘しています。
財政審の主張に沿うと、ケアプラン作成に自己負担が伴えば、利用者自身がこうした不適正な点に目を光らせ、ケアプランの質向上とともに自己負担に伴う国の支出抑制につながり一石二鳥という主張です。もっともケアプランの質については有料化で向上するのかは関係各方面から疑問視されていることはご存じかと思います。また、ケアプランは利用者本人が作成しても良いため、その場合は過度なサービス利用も考えられます。
さらに、利用者負担増の策として2015年から始まった特別養護老人ホームでの多床室の室料負担の基本サービス費からの除外を介護老人保健施設、介護医療院、介護療養病床へも適用するとの考えが示されています。この点については利用者の公平性を考えた場合、今後実現する可能性が高いと言えるでしょう。
これ以外にも財政審では以下のようなことを求めています。
・介護認定区分ごとの支給限度額の対象外の介護報酬加算項目の適正化
・介護予防・日常生活支援総合事業での事業費上限を超えた場合に特例で支払われる交付金の見直し
・要支援者で始まったサービスの地域支援事業への移行を要介護1・2への拡大
・要介護2までのいわゆる軽度者の居宅療養管理指導サービスなどの給付の適正化
・介護給付費適正化事業(適正化計画)の見直し
・居宅サービスについての保険者機能の強化
これらはいずれも保険者である市区町村に端的に言えば「もっとしっかりやれ!」と尻を叩く政策です。もともと市区町村ごとに置かれている地域事情に差があり過ぎるうえに、市区町村ごとの行政の能力格差も否定できないのが現状です。その意味では最終的には厚生労働省が旗振り役となって、地域別のモデルをより具体的に示さない限り、これらを実現するのはかなり困難と言えるでしょう。
さて今回まで3回にわたって財政審のやや一方的とも言える主張を解説しましたが、いかがでしょうか?実はこの点は医療の診療報酬にも言えることですが、根本的には介護報酬の在り方に戻ってしまう話でもあります。創設からの時間経過とともに実態が変化することに対して、3年に1回の改定時に屋上屋を重ねるような「増改築」で対応することの限界とも言えます。その意味では財政審の論点の指摘は、介護報酬の抜本的な再構築の必要性を指摘していると言えるかもしれません。