厚生労働省介護給付費分科会は、令和4年度決算を調査した令和5年度介護事業経営実態調査の結果を公表しました。その中から老健(介護老人保健施設)について解説します。
収支差分 税引後マイナス0.6% 前年度の1.3%を大きく下回る
令和4年度決算における、1施設・事業所当たりの介護料収入は月額2982万6000円で前年度比69万円のプラス。保険外の利用料による収入、新型コロナウイルス感染症・物価関連の補助金収入を除いた収入合計は月額3541万5000円(前年度比11万1000円のプラス)となりました。
一方、1施設・事業所当たりの支出は月額2272万8000円で前年度比77万円のプラス。そのうち、給与費の占める割合は64.2%(前年度比2.0ポイントプラス)、車両費や燃料費。食費などのその他支出に占める割合は32.0%(前年度比0.5ポイントプラス)となりました。
上記の収入から支出を差し引いた差分は月額マイナス38万2000円で-1.1%(前年度比マイナス2.6ポイント)となりました。これに、新型コロナウイルス感染症関連、物価高騰対策関連の収入、法人税など税支出を組み入れた収支は月額マイナス21万6000円(-0.6%)となり、前年度のプラス1.3%を大きく下回る結果となりました。
平均給与 常勤・看護師月額469,573円 常勤・介護福祉士月額405,016円
常勤の介護・看護職員の平均給与については、常勤・看護師で月額469,573円、常勤・准看護師で月額409,282円、常勤・介護福祉士で月額405,016円、常勤・介護職員で月額375,081円となり、看護・介護職員(常勤換算)1人当たり給与費は月額378,766円(前年度比9,846円プラス)となりました。
地域区分別 2級地がプラス2.3%、4級地がマイナス1.7%と大きなバラつき
地域区分別では、税引後収支差率は1級地がプラス2.1%、2級地がプラス2.3%、3級地がマイナス0.5%、4級地がマイナス1.7%、5級地がプラス1.6%、6級地がプラス0.5%、7級地がプラス1.1%と地域区分によって大きなバラつきが見られました。
看護・介護職員(常勤換算)の1人当たり給与費は、 1級地が月額311,747円、2級地が月額348,308円、3級地が月額347,131円、4級地が月額370,994円、5級地が月額398,421円、6級地が月額392,205円、7級地が月額367,086円となりました。
新型コロナウイルス感染症 サービス一時休止・縮小の影響大きく
新型コロナウイルス感染症の施設・事業所運営への影響について、「施設・事業所の判断による運営の縮小」を行なった施設では税引後収支差率がマイナス2.4%となった一方、サービスの一時休止や運営の縮小、近隣事業所等からの利用者の受け入れなど、新型コロナウイルス感染症関連の影響がなかった施設の税引後収支差率はプラス0.6%で、新型コロナウイルス感染症が施設運営に大きな影響を与えていることが分かりました。
厚生労働省介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会「令和5年度介護事業経営実態調査結果(案)」
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