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【ニュース解説】介護経営者も知っておくべき「2024診療報酬改定」そのポイント(3)安心・安全で質の高い医療、医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

2024年の診療報酬改定のポイントとして挙げられた(1)現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進(2)ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進(3)安心・安全で質の高い医療の推進(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上の4点を解説していきます。

入院患者の食費自己負担の引き上げ

「安心・安全で質の高い医療の推進」では現在すでに決定した事項があります。それが入院患者の食費自己負担の引き上げです。具体的には1食当たり30円の自己負担引き上げが決定しています。これは昨今の物価高に伴う食材費や光熱費の高騰を念頭に置いたもので、介護保険施設入所者が負担する1食当たりの食費基準費用額に比べ、入院患者の1食当たりの自己負担額は約22円低い460円であることから決まったものです。

薬局の機能

また、関連して新たな評価が検討されているのが、薬局の機能です。医薬分業の進展により、現在では医療機関受診に伴う処方は院外処方となっています。また、国による在宅医療の推進とそれに伴う薬剤師の訪問薬剤指導への診療報酬が手厚くなったことで、介護保険施設入所者の薬剤の配送や服薬指導も市中の薬局が請け負うようになっていることは良くご存じだと思います。

現在の中医協でも、在宅患者での薬剤師によるより一層の薬学管理の推進に向けた議論が数多く行われています。具体的には▽在宅患者への訪問薬剤管理指導の実施に必要な無菌製剤処理、医療用麻薬、医療材料等提供に関する薬局の体制▽終末期患者での訪問薬剤管理指導の算定上限回数を超えた頻回な訪問が必要な場合▽看取り後の麻薬回収などに伴う患者宅を訪問業務▽訪問薬剤管理指導の時間外対応や緊急時の患者宅への訪問▽入院から在宅への移行時の多職種連携による退院時処方に基づく薬剤の調整、残薬整理、服薬管理方法の検討▽退院時の処方医と薬剤師の同行訪問▽介護老人保健施設入所者の処方箋を薬局が応需した際の調剤・訪問薬剤管理指導を▽特別養護老人ホームでの特に入所時対応も含めた薬学管理▽ショートステイ利用者への薬学管理等、を新たに評価するという多様な案が俎上にのぼっています。

また、薬局関連では現在いわゆる敷地内薬局の調剤報酬が問題となっています。敷地内薬局とは、医療機関の敷地内に開設された薬局のことです。

そもそも昨今の院外処方、いわゆる医薬分業の進展の趣旨は、医師の処方を薬剤師が第三者的な目でチェックし、重複処方や漫然と行われている多剤処方を解消することが目的です。この目的を達するために医療機関との一体的な構造の薬局、医療機関による薬局経営など禁止などが定められています。医療機関と薬局が経営的、物理的、心理的に近いと、薬剤師のチェック機能が働きにくいと考えられるためです。

このため従来は経営母体が異なっても医療機関敷地内に薬局を開設することは認められてきませんでした。両建物が隣接している場合でも建物間をフェンスや塀で仕切り、公道を通る形になるよう指導してきました。

しかし、身体の不自由な人に対する利便性などから総務省が規制緩和を求め、一部制限を維持しながら2015年10月から医療機関の敷地内薬局が解禁されました。敷地内薬局は薬局側にとって多くの処方箋が獲得でき、医療機関側は敷地の賃料収入が見込めることから、すでに全国に370軒超の敷地内薬局が誕生しています。

ただ、敷地内薬局は隣接する医療機関で主に使用される薬剤の在庫を取り揃えば良いなど、市中の薬局と比べて在庫負担が少なく、しかも数多くの処方箋を獲得できることなどから、薬局の診療報酬のベースとなる基本調剤料は、「特別基本調剤料」という名称で地中の薬局よりもかなり低額に設定されています。

今回の改定では、この特別基本調剤料の算定基準を変更が検討されています。具体的にはこれまでA社が敷地内薬局Bと市中薬局Cを経営している場合、Bでは特別基本調剤料、Cは受付処方箋枚数やその中での特定医療機関の発行率の高さなどに基づき複数の分類された基本調剤料を算定していました。しかし、現在検討されている改定案では、敷地内薬局を有する会社が運営する薬局では全て、新たに設定される特別基本調剤料を適用することが検討されています。つまり前述の例えで言うと、A社が経営する薬局はBもCも保険点数の低い特別基本調剤料が適用されるということです。つまりA社は経営的に打撃を受けるということです。ちなみに敷地内薬局を経営する会社は多くは大手保険調剤薬局チェーン企業です

なぜこうした案が検討され始めたかですが、厚労省は公式に「薬局と医療機関との独立性、かかりつけ薬局機能の推進といった面で敷地内薬局は問題がある」と説明していますが、関係者の間では昨年発覚したある事件が大きく影響したと囁かれています。保険調剤薬局チェーンを展開する大手のアインホールディングス(運営薬局名称はアイン薬局)が、北海道の公的病院での敷地内薬局を開設時、病院の事務部長から違法な便宜を図ってもらっていたとして、事務部長とアイン側の幹部が逮捕された事件です。

またアイン以外で敷地内薬局を開設している薬局グループでも、医療機関側に払う土地賃料が周辺の賃料の数倍高いなど、適正と言い難い状況があることが分かっています。要はアイン事件を機に敷地内薬局を有する企業全体に半ば懲罰を科したと関係者は受け止めており、一部の関係者は今回の改定案を「アイン減算」と揶揄しているほどです。もちろんアイン同様の大手調剤チェーンはこの改定案に反発しています。

医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

「医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」では、薬の処方時に特許が失効した新薬である「長期収載品」を選択する場合はジェネリック医薬品(以下、ジェネリック)との差額の一部を患者が自己負担する方針が決定しました。

すでに国内では、新薬の特許失効後に登場する新薬と同一成分でより安価なジェネリックは、ジェネリックがある成分内では約8割を占めるようになりました。もっとも諸外国に比べ、まだ浸透率はまだ高いとは言えず、特に外用薬、点眼薬、貼付薬などではいまでも長期収載品が少なからず処方されている現状があります。

このため今回厚労省はジェネリックがありながら長期収載品を使用するケースについては、原則ジェネリックとの差額の一部を患者の自己負担にすることで、ジェネリック使用をさらに推進する方針を中医協に提案し、大筋了承されています。

ただ、現在の議論ではすべての長期収載品でこのような措置をとるのではなく、ジェネリック登場から5年以上経過、あるいはジェネリックへの市場の置き換わり率が50%を超えているものを対象とする案が有力です。

また、医療上の必要性があり、どうしても長期収載品を選択せざるを得ない場合や現在のようなジェネリックの供給不安で、やむなく同一成分の長期収載品を選択せざるを得ない場合は、差額の自己負担対象外とする意見が中医協では優勢です。

ちなみにこの政策については、単にジェネリックへの切り替えを促進し、公的薬剤費負担を軽減するためのものと一部で解釈されていますが、これに加え、この政策で浮いた財源を画期的な新薬をより高い薬価で評価する財源にすることも念頭に置かれた政策です。

要は薬価の評価にメリハリをつけることで、公的薬剤費負担を軽減するとともに新薬開発にインセンティブを与える産業振興策にもしようという狙いです。

さらに昨今のジェネリックの供給不足では、薬価を引き下げ過ぎたことに伴い不採算品目が増えていることも要因と考えられていることから、不採算品目の薬価引き上げも行われる予定です。

【関連トピックス】

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介護経営者も知っておくべき「2024診療報酬改定」そのポイント(2)医療機能の分化・強化、連携の推進

【関連資料】

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