2024年度トリプル改定の改定率が15~16日にかけて決定しました。診療報酬本体0.88%、薬価がマイナス0.96%で診療報酬全体としては差し引きマイナス0.08%、介護報酬がプラス1.59%、障害者福祉サービス報酬がプラス1.12%となりました。財務省が保険料負担の引き上げなどの国民負担増への懸念から診療報酬本体を中心にマイナス改定を主張していましたが、大方の予想に反していずれも前回改定の2倍以上の改定幅になりました。今回はこの件について解説します。
過去の介護報酬改定率の中で2番目に高い改定率も0.98%分が賃上げ対応
介護報酬のプラス1.59%については、このうち0.98%分が賃上げ対応として含まれています。つまり正味の介護サービス分については0.61%のプラス改定となります。また、一部ではこれ以外に物価高対応をプラス0.45%分用意するとも囁かれています。いずれにせよ、過去の介護報酬改定率の中で2番目に高い改定率となり、完全に満足とは言えないかもしれませんが、関係者の中には胸をなでおろしている方も少なくないと思います。
今後は具体的な改定項目と算定要件、単位数の決定へと移行します。特に今回賃上げ分がプラス分の多くを占めますが、社会保障審議会介護給付費分科会で方針が決定している「介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」を一本化し、新たな「介護職員等処遇改善加算」を創設することが大きな目玉です。この新加算は4段階に分けられることが決定しており、今後は算定要件や加算率の詳細が詰められます。
サービスによって施行時期が4月と6月に分かれる
また、今回の改定では、具体的な改定施行を診療報酬に合わせて6月へと変更することが検討されてきましたが、12月18日の社会保障審議会介護給付費分科会では医療と関係性がより密接な訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4サービスでは改定を6月施行とし、それ以外は従来通りの4月施行とすることが決まりました。ただし、将来的には全介護保険サービスが6月施行となる見込みです。
異例の改定となった2024報酬改定
さて今回はかなり異例の結果となりました。これまでの同時改定では、いずれも介護報酬の改定率が診療報酬本体の改定率を上回らない結果となっていました。今回、公表されている数字を見れば、まさにその前例を首相の政治的判断が覆した状況と解釈できます。
診療報酬本体は0.88%プラスでしたが、このうち0.61%は賃上げ分で、介護報酬、診療報酬本体ともプラス改定分の6割超を賃上げ分が占めている計算です。では、これが何を意味するのでしょうか?ここで岸田首相の就任時の要となる政策を思い起こしてみると良いでしょう。岸田首相が自民党総裁選から就任直後まで掲げた政策のキーワードは「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」です。その筆頭に挙げた政策が賃上げの実現で、特に看護・介護・保育にかかわる人たちの賃上げを明言しました。つまり今回の改定では、首相本人が掲げた政策の「1丁目1番地」を堅持したと言えます。
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