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黒字化した地域密着型特別養護老人ホーム 経営の「共通点」とは?

ホワイトボードの前に立っている施設長

施設所在自治体の住民のみが入居可能な地域密着型介護老人福祉施設は、広域での入所者募集を行えないことから、経営の難易度はやや高くなる傾向があります。そうしたなか、収支を“黒字”でキープする施設はどんな運営を行っているのでしょうか。
独立行政法人福祉医療機構はこのほど経営良好先の取組み事例に関するレポートを公表しました。このレポートは、2021年度に同機構が貸付先の地域密着型介護老人福祉施設を運営する法人に対して実施した運営状況などに関するアンケートの回答法人のうち、3期連続黒字幅が拡大または赤字から黒字へ転換した5施設に対し、今年8月~9月にかけてヒアリング調査を実施した結果をまとめたものです。今回はその内容を解説します

黒字化施設の共通点(1) 施設理念に共感する人物を採用

5施設の開設後の黒字達成までの期間は4施設が3年以内ですが、残る1施設は7年を要しています。うち2施設は短期入所併設。各施設の介護報酬地域区分や自治体の人口規模はまちまちです。見られる傾向としては地域密着型介護老人福祉施設(912施設)平均よりも利用率が高く(96%以上)、また利用者単価もおおむね全国平均よりは高い傾向があります。そのほか経費率は全国平均よりやや高いか、数ポイント低いという結果です。

レポートでは「施設開設前の職員確保に向けた取組み」として、対象施設は自治体広報誌などの広告媒体や職員からの紹介など、一般的な取り組みを行いながら、総じて「施設理念に共感する人物を選りすぐって採用している」点が特徴だと指摘しています。非常にウェットな視座ではありますが、開設時から軌道に乗るまでの困難な時期を乗り切るにはある意味必須の取り組みと言えるでしょう。

黒字化施設の共通点(2) 給与以外の処遇における積極的な取り組み

もっとも理念だけで、職員の離職防止ができるわけではありません。しかも入所者を維持するためには、配置人員基準を満たす職員数を維持し、適切なサービスを継続的に提供する必要があります。この職員離職防止のための取組みとしてヒアリングからは、(1)夜勤を8時間3交代のシフト体制で組む、(2)資格支援費用は施設負担、(3)実務者研修は実働時間に実施、など給与以外の処遇に積極的な取り組みが多くみられます。

これは地域密着型に限らず、通常の介護福祉施設にも十分応用できるものと言えそうです。特に夜勤を含む負荷の高い勤務体制は、職員にとって不満の上位にあるため、シフトをいかに改善するかは離職防止のみならず、職員採用の観点からも重要ポイントと言えます。

黒字化施設の共通点(3) 加算の取得を経営上のKPIに

利用者の単価を上げるための取組みとして、介護報酬加算をより多く算定することが施設の実力を示す指標ととらえる傾向がありました。調査対象施設の多くが令和3年度介護報酬改定で新設された科学的介護推進体制加算(I)などを算定していたそうです。介護報酬改定で加算が新設された場合、算定のための事務作業が増えることもあり、現場では算定以前に不平・不満が先に出てくるケースは介護業界あるあるの代表格ですが、それでは収益は上がらないということです。

介護報酬の新設加算は、単位(点数)が高い場合、算定条件のハードルがより高くなるか、単位(点数)が低い場合、算定条件のハードルがより低くなるかのどちらかです。それを意味するのは最初に算定条件をクリアし、以後、事務やハード整備を効率的に行った方が得をするということです。もっといえば早い者勝ちです。今回の調査対象施設のような態度はすべての施設が見習いたいものです。

黒字化施設の共通点(4) 問題点の「見える化」と積極的なアウトソース

一方で経費削減についてですが、人件費については常勤換算職員数、人件費など毎月の運営状況を把握し、数値管理することで(例えば、職員の残業時間が増加にもかかわらず、増収していない場合など)問題点の見える化を図り、原因と解決策を施設長以下の全職員が一丸となって課題解決に取り組んだ施設があった、とレポートでは記述しています。

その他の経費の削減の具体例では、(1)給食など外部委託していたものを直営化、(2)介護ソフトの契約見直し、(3)紙おむつの代わりにパッドを使用、などが挙げられています。

手間暇を惜しまずこまめな取り組みが黒字化への第一歩

黒字化施設の共通点として、レポートでは以下の6点を挙げています。

・職員採用時にチームとして新しい施設を作り上げていくという共通認識を醸成
・入所者に対する入所理由をヒアリングし、ニーズ把握したうえで他施設との違いを地域住民へアピール
・柔軟なシフト体制など働きやすさに重点を置き、職員処遇を改善することで離職率を低下
・施設の運営状況を数値で把握し、問題点の見える化を図ることで課題解決に向けて動きやすい組織づくりを整備

・委託業務の契約切り替えや価格の見直しで給食費等の費用を削減
・自治体の担当部署と良好な関係を構築

このようにして見ると、結局は手間暇を惜しまずこまめな取り組みをすることが良好な経営を維持する最大の根源ということになるでしょう。

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