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【ニュース解説】「紅麹サプリメント」などの健康被害 介護従事者が知っておくべきこと、取るべき対応(1)

すでに多くの人が報道で耳にしているように、紅麹を原料とし、コレステロール低下機能があると謳っている、小林製薬の機能性表示食品(いわゆるサプリメント)「紅麹コレステヘルプ」「ナイシヘルプ+コレステロール」「ナットウキナーゼさらさら粒 GOLD」の3種類の摂取者で腎障害を中心とする多数の健康被害が報告されています。

4月10日17時現在で、これら製品が原因の健康被害の可能性があると報告されているのは死亡5人、入院221人、検査入院26人、通院1,074人の合計1,321人です。

サ高住や住宅型有料、居宅介護サービス利用者でも一定数の摂取者がいる可能性

一見するとこの問題は介護業界に無縁と思う人も少なくないでしょうが、3月29日に小林製薬が行った記者会見では、現時点で死亡と報告されている人は70~90歳代であることが明らかにされています。また、これら製品の販売実績は、小林製薬の本社所在地として管轄する自治体の大阪市による調査では約86万個にものぼります。

日本腎臓学会が4月1日に公表した会員医師への緊急アンケートの中間報告では、これら製品が原因の健康被害の疑いがある47人届け出があり、その年代は30~70歳代までで、40歳~69歳が約9割、女性が66%だったことがわかっています。

これらの情報を総合すると、介護サービスを受ける高齢者、とくに医薬品やサプリメントの摂取などをサービス提供者が把握して切れないサ高住や住宅型有料老人ホームの入居者、居宅介護サービス利用者でも一定数の摂取者がいる可能性があります。これら状況を考慮すると、介護業界関係者とってまったく無縁とは言えません。そこで現在わかっていること、現時点でできる対応について今回は解説したいと思います。

入居者、利用者で該当する製品を摂取していることがわかった場合は

まず、入居者、利用者で該当する製品を摂取していることがわかった場合はただちに摂取を中止することが基本中の基本です。そのうえで摂取者は、体調に異変がない場合でも不安を感じる際はかかりつけ医の受診や最寄りの保健所に相談して下さい。

また、小林製薬側では摂取中止により残った製品の回収を進めています。同社HPから回収申し込みフォームにアクセスできますので、そこから申し込みを行って下さい。現状では申し込み日から5~9日後までの日程で、摂取者の居宅への集荷日を指定でき、佐川急便が集荷を担当しています。返品に関する申し込みは同社指定のフリーダイヤルでも対応しています。

また、体調変化の有無にかかわらず、同社の健康相談受付のフリーダイヤルにも連絡を取ると良いでしょう。というのも、医療機関を受診した場合、当然ながら保険診療での医療費がかかりますが、この医療費について小林製薬側は補償する意向を明らかにしているからです。健康相談受付フリーダイヤルは4月末までは土日・祝日も含め9~21時まで対応しています。ただ、このフリーダイヤルについて3月28日時点での応答率が約3割にとどまり、対応時間の延長と電話回線の増設で4月4日以降は応答率が5~8割に改善するとの見通しを小林製薬は示していました。そのため現在でもつながりにくい可能性はあります。

約17%で腹部症状や体重減少の症状が発現

さて今回の「紅麹コレステヘルプ」などの摂取による健康被害ですが、小林製薬の発表では「腎障害」という形で、一括り的に表現されているため、一般人はどのような症状があるのかがわかりにくいとの指摘もあります。前述の日本腎臓学会の調査では、紅麹コレステヘルプなどの摂取者では、ファンコーニ症候群(Fanconi症候群)と呼ばれる、まれな腎臓病に似ていると報告されています。このファンコーニ症候群は、尿として体から排泄されそうになった重要な栄養素やミネラル、水分などを、体内にもう一度吸収する(再吸収)機能が損なわれる症状です。

ソラマメ形をした腎臓の中には、糸球体と呼ばれる糸状に詰まった毛細血管の塊がたくさんあり、動脈を通じて腎臓に流れ込んで来た血液は糸球体のところで老廃物がろ過されて尿の元(原尿)を作ります。尿の元はその後、尿細管という管を経由して、さらに太い尿管を通って膀胱(ぼうこう)まで運ばれて尿として排泄されます。この途中の尿細管が前述の重要な栄養素やミネラル、水分などを、体内に再吸収する機能を担っていますが、この機能が働かないのがファンコーニ症候群です。

ただ、症候群という名前からもわかるとおり、そうした症状がある人をざっくりまとめている名称で、実はこれ自体が病気というより、さまざまな病気が原因でこういう症状を起こしている人たちという概念です。

ファンコーニ症候群の原因となる病気は、一般的には遺伝性のものが多いのですが、それ以外でも前述の糸球体や尿細管を取り巻く間質と呼ばれる組織で炎症が起きている間質性腎炎、間質と同時に尿細管でも炎症が起こる尿細管間質性腎炎などがあります。また、がん治療で使われる一部の抗がん剤、一部の抗菌薬などを服用している人に起こることもあります。

具体的な症状ですが、対応した医療機関から各自治体への報告によると、体のだるさ(倦怠感)、食欲不振、動悸・息切れ、めまい・ふらつき、体のむくみ、吐き気・嘔吐、頭痛などです。また、尿細管で再吸収されるはずの水分がそのまま尿として排出されるため、トイレに行く回数が増えるなども症状もファンコーニ症候群では認められます。

もっとも前述の日本腎臓学会の中間報告では、約17%で腹部症状や体重減少を訴えており、嘔吐、トイレ回数の増加、むくみや体重増加などの症状を訴える人は比較的少ないとしています。ただし、日本腎臓学会では、これらの症状はあくまで中間報告で得られた結果で、これ以外の症状だからといって紅麹コレステヘルプなどによる健康被害を否定できるものではないとも述べています。

入居者、利用者あるいは介護従事者で実際にこれら製品を摂取していて、いま挙げたような症状、あるいは何らかの体調変化を感じている場合は、できるだけ早く医療機関を受診すべきでしょう。日本腎臓学会の中間報告では、症状のある人たちは、血液検査だけで血中のカリウム、リン、尿酸などが明らかに低く、腎機能を評価する推算糸球体濾過量(eGFR)も極端に低いことなどが明瞭にわかるそうです。

約4分の3は当該サプリメントの摂取中止のみで回復も重症化したケースも

具体的な治療ですが、日本腎臓学会の中間報告では約4分の3は紅麹コレステヘルプなどの摂取中止のみで回復し、残る約4分の1では炎症を抑えるためのステロイドが使用されたとのこと。また、先ほど書いたように重要な栄養素が再吸収されなくなるため、カリウムなどのミネラルの血中濃度が低下し、これらを補充する治療も行われているようです。

また、当初の報道でもありましたが、一部では人工透析に至っている人もいます。日本腎臓学会の中間報告でわかっている47人では、2人で人工透析が行われたそうです。このうち1人はすでに透析は終了しています。残る1人は現在も透析を続けているそうですが、この人はすでに2023年3月には紅麹コレステヘルプの摂取を止めているため、透析開始と今回の健康被害との関連性は薄いと主治医は判断しているとも記述されています。

消費者庁「紅麹を含む健康食品関係について」

国民生活センター「紅麹関連製品による健康被害について」

厚生労働省「小林製薬社製の紅麹を含む食品に係る確認結果について」

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