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【ニュース解説】訪問介護職員の求人倍率15.53倍に ますます厳しくなる介護職員の採用環境

従来から介護業界で言われている「人手不足」というキーワード。業界全体として、この言葉を聞かなくて済むようになる日は果たしてくるのでしょうか? むしろ直近ではこの言葉を聞く頻度は今よりも増えそうです。次期介護報酬改定に向けて訪問介護・看護、居宅介護支援などの現状について委員が共通認識を持つために最新の調査データが報告された、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)の議論で提示された最新の各種データから、その理由を解説します。

訪問介護職員の求人倍率 この10年で3.29倍→15.53倍に

厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、2022年度は訪問介護職員の有効求人倍率は15.53倍と過去最高を記録しました。10年前の2013年度が3.29倍だったことを考えれば、状況は一変しています。訪問介護職員の不足が深刻な原因については、最初に約130時間におよぶ「介護初任者研修」の受講が必要というハードルの高さや女性1人の場合などは居宅訪問に伴うリスクが想定されることが原因と見られます。

ちなみに、施設介護職員では3.79倍でした。施設介護職員の有効求人倍率は2018~2019年度に4倍超となり、現在はそれよりやや低下しましたが、2020~2020年度も小幅ながらこの数字は上下を繰り返しているため、低下トレンドに入ったとは言い難いのが実態です。しかも、同統計による全業種を通じた2022年度の有効求人倍率は1.28倍であることを考えれば、種別を問わず介護職員の人手不足は大きな問題であることは間違いありません。

訪問介護職員の不足は、採用合戦という観点で施設側にも少なからず波及する可能性もあり、施設の介護職員採用の面からもこの事態は“対岸の火事”ではありません。

居宅介護支援 8割の事業所で主任ケアマネが管理者に

また、同分科会では居宅介護支援の現状についても報告されました。居宅介護支援では2018年度の介護報酬改定で、2021年4月以降は居宅介護支援事業所の管理者は主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)を原則とする厳格なルールが設定されました。ただし、2026年度までは経過措置期間中で、一部に例外が認められています。

この主任ケアマネジャーの配置状況について、令和4年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)で三菱総合研究所が行った「居宅介護支援および介護予防支援における令和3年度介護報酬改定の影響に関する調査研究事業報告書」の内容が説明されました。

それによると、2022年11月~2023年2月に全国の2万3,536事業所から得た回答では、既に主任ケアマネジャーが管理者となった事業所は80.8%、回答時点での管理者は主任ケアマネジャーではないものの、管理者としての主任ケアマネジャーを今後確保できる見込みがある事業所は13.9%。つまり合計94.7%の居宅介護支援事業所は、管理者としての主任ケアマネジャーの確保のめどが立ったことが報告されました。

このことが介護業界全体に与える状況について、改めて説明します。一般にサービス別を問わず、介護職のキャリアパスは、無資格→介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士となり、介護福祉士から先は施設長などのマネジメント職や介護支援専門員(ケアマネジャー)などとなります。ケアマネジャーの中の上位職である主任ケアマネジャーは、一般に介護業界では施設長などの次に給与が高いと言われ、無資格者よりも月給で10万円以上高いとも言われています。

国立社会保障・人口問題研究所の推計では2040年くらいまでは高齢者が右肩上がりで増加する見込みのため、居宅介護支援事業所は今後も増加することは確実です。その結果、訪問介護・施設介護を問わず、一定の介護職経験を有する人の一部は、最終的に主任ケアマネジャーを目指していくことになるでしょう。つまり利用者の介護を直接担う最前線の空洞化が起こり得ます。

これまでのことを総合すると、施設介護では訪問介護との競合とキャリアパスの影響で発生する“競合”で、より一層人材確保の難易度が増すと言えます。

利用者だけじゃない 進行する「介護職員の高齢化」

しかも、この人手不足の結果として介護職員も高齢化が進んでいます。分科会では介護労働安定センターによる令和3年度介護労働実態調査「事業所における介護労働実態調査」の数字が報告され、介護関係職種全体の平均年齢は50.0歳、65歳以上の高齢者割合は14.6%でした。このうち訪問介護員の平均年齢は54.4歳、高齢者割合は24.4%、ケアマネジャーでは平均年齢は51.9歳、高齢者割合は12.3%でした。いずれも5年前の同調査では平均年齢で50歳未満でしたから、高齢化が進行しています。ちなみに同調査による入所型施設職員の平均年齢は46.7歳で、5年前と比べ5.7歳も上昇しています。

人材不足がより一層深刻化し、高齢化も進展

まとめると介護業界では、これから人材不足がより一層深刻化し、さらに既存人材の高齢化も進展するという、関係者からすれば耳をふさぎたくなる状況がほぼ確実に到来する見込みなのです。少なくとも従来のような経験者をメインにした人材採用は、業界内で同じパイを食い合うだけで根本的な解決にはならないことは明らかです。また、国による処遇改善策も一定程度見込めるでしょうが、人材難の解消に大きなインパクトを発揮するとは言い難いのが実状でしょう。

その意味では介護業界にとっては、未成熟な労働市場ではあっても、今後は未経験者や外国人の採用も念頭に置くべき時期に来ているのではないでしょうか?もっともこうした人材を採用した場合、浮上してくる課題はどのように教育・研修を行うかです。「現状の人手不足の中でそのような余裕はない」との声もあるでしょうが、今から施設内外の様々なリソースの活用を検討し始めることが今後の人材獲得難を乗り切るカギを握ると言っても過言ではありません。

厚生労働省「第220回社会保障審議会介護給付費分科会」

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