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【ニュース解説】「労働力の高齢化」「新技術の導入」は就業意識にどう影響する?

最近、介護業界では慢性的な人手不足を背景にロボットやIT、AIの導入を推進する声が高まっています。こうした技術革新の導入に関しては、若年労働人口の減少の視点から語られることがほとんどですが、この現実の裏を返せば、今後は介護業界に限らず、各業界とも労働力が高齢化していくことも意味します。

介護業界では人材不足を背景に国が「介護現場における多様な働き方」を掲げ、高齢者の雇用なども掲げています。そうした中で気になることは、今後の技術革新により新たな高齢介護職員確保や高齢化した介護職員の就業継続が実現可能かという点です。この点について、内閣府経済社会総合研究所が2020年にまとめた「加齢の影響と新技術の導入・活用による就業継続可能性」という研究について解説します。

この研究自体は就業者総数に占める高齢者の比率が高い職種である「介護サービス」「小売(接客、販売)」「自動車運転(旅客、貨物運送)」を対象として、タスクごとに加齢の影響と新技術の導入・活用の関連について調査・分析を行ったものです。調査はこれら3業種に就業中、あるいは過去5年以内に就業していて現在は離職した50~69歳の男女を対象にインターネットアンケートで行われ、介護サービスの回答者はこの時点で就業中だった1,133人と、すでに離職していた196人。性別割合は男性が42.1%、女性が57.9%。介護サービスでは19のタスクが標準的タスクとして抽出され、調査対象になりました。

加齢の影響を感じる業務「移動・移乗、体位変換」「入浴介助」

加齢の影響を感じるタスクについて最多は「被介護者の身体状況に応じた移動・移乗、体位変換」が50.3%、以下は「バランスを崩さないよう身体を支えての入浴を介助」が45.5%、「移動・移乗、体位変換に必要な福祉用具(車いす、杖、リフト等)の点検・準備」が41.1%、「おむつ・パッドの交換、適切な装着」が34.6%、「被介護者に対するサービス提供前(訪問前)の氏名、身体状況等の確認」が34.2%などでした。

内閣府経済社会総合研究所「加齢の影響と新技術の導入・活用による就業継続可能性」より

加齢に伴って感じる能力の低下については、「ものごとを正しく認識し、適切に実行する能力(記憶力、会話能力、判断力、計算力など)」「身体全般に関する能力(体力、持久力、柔軟性、バランス感覚など)」「手先や足先を思い通りにコントロールする能力(手先の器用さ、反応の早さなど)」「周囲の状況を知覚する能力(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)」の4側面から調査。その結果、介護サービスでは「身体全般に関する能力」が79.2%と最も高くなっていました。

研究では「各タスクに加齢の影響を感じた場合には就業継続しないか」をロジスティック回帰分析と呼ばれる統計手法で分析を行っています。その分析によると、「被介護者の身体状況に応じた移動・移乗、体位変換」と「バランスを崩さないよう身体を支えての入浴を介助」の2 つのタスクでは加齢の影響を感じた場合、就業を継続しないという結果になりました。

新技術導入で高齢者は就業継続する傾向

企業による新技術の導入・活用で高齢者の就業継続が促進されるかの分析では、新技術を導入・活用している介護サービス企業で勤務する場合、導入・活用していない場合と比較して、高齢者は就業継続する傾向にあったことがわかりました。一方で、高齢者の場合は一般的に新技術そのもの利活用方法の習得に難がありがちな点を懸念する声もあります。この点については、新技術の導入において、「既に部分的または全体的に導入されている」と回答した人のうち、「業務負荷が軽減されている」という回答割合は48.0%となり、約半数がメリットを感じていることが分かっています。また、何らかのタスクで新技術の導入を経験している人は、新技術の導入を経験していない人に比べ、「今後取り入れてほしい機器がある」と回答した割合が大きいという結果になりました。

内閣府経済社会総合研究所「加齢の影響と新技術の導入・活用による就業継続可能性」より

よりかみ砕くと、新技術を全く導入していない企業よりも、いずれかのタスクで新技術を導入している企業で就業した経験のある人の方が、新技術未導入のタスクでも具体的な導入イメージを持ちやすく、現状で新技術導入を希望するようになっている可能性があるとも解釈できます。つまり高齢者にとって比較的利活用方法の習得ハードルが低いタスクで新技術導入に踏み切れば、他のタスクでの新技術導入でも抵抗感が少なくなる可能性があると考えられます。これは新技術に躊躇する高齢者以外の職員にも通じるところがあります。

率直な言い方をすれば、人手不足解消を念頭に新技術の導入を検討する場合は、職員の心理的抵抗を過度に考慮し過ぎないことも必要と言えるかもしれません。

内閣府経済社会総合研究所「加齢の影響と新技術の導入・活用による就業継続可能性」

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