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給付は高齢者中心、負担は現役世代中心を見直しへ~全世代型社会保障構築会議が示す未来像は

最近、よく「全世代型社会保障」という言葉を耳にします。これは若年層から高齢層までの全ての世代で安心できる持続可能な社会保障という意味で、国はその構築を目指し、内閣府に「全世代型社会保障構築会議」(座長:清家篤・日本私立学校振興・共済事業団理事長)を設置して議論を進めています。5月17日に同会議は議論の中間整理を公表しました。

「全世代型社会保障」と聞くと、「何それ?」と思う医療・介護関係者も少なからずいるでしょう。より突っ込んでしまえば「今までの社会保障制度は全世代に対応してなかったのか?」という疑問です。答えはその通りです。正確に表現すると、今までの社会保障制度は世代間で負担と給付のアンバランスが明白でした。 例えば、日本の少子高齢化問題を議論する時に、「高齢者1人を現役世代〇人で支える」という言葉を耳にしたことがない人はいないはずです。つまり今までは極端なことを言えば、社会保障制度は高齢者のサービス受益が中核で、そのための原資を若年層がほぼ一手に負担していたのが現実でした。

この受益と負担を全世代でバランスを取るための論点をまとめるのが全世代型社会保障構築会議の役割です。ちなみに、同会議の構成員は法学・経済学の研究者、シンクタンク関係者などが中心で、医療・介護の専門家はむしろ少数派です。こうした構成になっているのは、医療・介護関係者が多いと必然的に高齢者対策に偏重しがちになるからだと思われます。 

今回公表された議論の中間整理の冒頭「全世代型社会保障の構築に向けて」では、「男女が希望どおり働ける社会をつくる『未来への投資』が重要となる」と真っ先に言及し、その上で「特に『子育て・若者世代』への支援を行うことが喫緊の課題で」と述べています。つまるところ現役世代の受益の底上げを図ることが強調されています。この後に高齢化対策として「高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる2040年頃を視野に入れつつ、新型コロナ禍で顕在化した課題を含め、2023年、2024年を見据えた短期的課題とともに、中期的、長期的な課題に取り組む必要がある」と指摘しています。そして高齢化対策ではこの課題ごとの「時間軸」と地域ごとに異なる社会保障ニーズや活用資源を踏まえた「地域軸」を念頭に対策を講じていく必要性を強調しています。 

今回の中間整理の中では、今説明した冒頭の大枠に加え、個別の課題についての論点を全6項目にまとめていますが、医療・介護に関わる項目は一番最後に登場します。ここでまず強調されているのは前述の「地域軸」に基づく「『地域完結型』の医療・介護提供体制の構築」です。具体的には地域医療構想の推進、地域医療連携推進法人の活用、地域包括ケアシステムの整備などの推進です。この地域軸を真っ先に持ってきたのは、医療介護を時間軸で見るよりも高齢化対策色が薄まるからではないかと推測できます。 また、地域軸に関連して今回の新型コロナウイルス感染症パンデミックの教訓にも触れています。具体的には「今回のコロナ禍により、かかりつけ医機能などの地域医療の機能が十分作動せず総合病院に大きな負荷がかかるなどの課題に直面した」という記述です。この課題解決に向けては、「かかりつけ医機能の強化」、「機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制の構築」の推進を挙げています。もっとも認識した課題はその通りですが、その2つの解決策が的を射ているかは微妙なところです。かかりつけ医機能を強化しても、十分に治療法が確立されているとは言い難い感染症をかかりつけ医が診察できるか否かは別問題だからです。いわば医療の専門家なら必ず指摘するであろう課題が抜け落ちているのは、構成員に医療・介護の専門家が少ないことが影響している可能性があります。 

さらに、2025年の医療需要を予測し、それに応じた医療提供体制を地域ごとに構築する目的で各都道府県が策定した「地域医療構想」については、「病院のみならずかかりつけ医機能や在宅医療等を対象に取り込み、しっかり議論を進めた上で、さらに生産年齢人口の減少が加速していく2040年に向けたバージョンアップを行う必要がある」との見解を示しています。

一方、医療・介護関連でこれに次いで挙げられているのが電子データ活用です。具体的には患者の電子カルテデータの共有と活用により、(1)効果的な機能分化と連携、(2)重複検査・投薬の回避、(3)医療従事者の業務の効率化、を実現し、引いてはこうしたデータの活用で新規医療技術や新薬の開発に生かしていくべきと提言しています。 また、電子データの利活用に関しては、電子カルテデータなどの事業者データに加え、現在国が推し進めているマイナンバー保険証などで今後得られる公的健康データなども利活用対象とするための環境整備の必要性についても言及しています。

この他には
・医療・介護・福祉サービス(障害、児童福祉など)におけるICTの活用や資格の養成課程の見直しなど
・看護、介護、保育などの現場で働く人の処遇改善を進めるに際して事業報告書等を活用した費用の見える化などの促進策のパッケージ
・処遇改善も勘案したタスクシェア・タスクシフティングや経営の大規模化・協働化
といったことが提起されています。