世界的に進む人口の高齢化で懸念されるのが認知症とフレイル(虚弱)の増加による社会負担の増加です。これまで厚生労働省などが発表してきた将来推計では2040年には認知症患者数が1000万人近くまで増えると予想されていました。しかし、これらの予想では、戦後世代の高齢者において健康状態や学歴が向上していることや、高齢者の間で年齢・性・学歴による疾病罹患状況の個人差が拡大していることについて考慮されていませんでした。
東京大学大学院医学系研究科の笠島めぐみ特任研究員と橋本英樹教授が、同大学生産技術研究所、高齢社会総合研究機構、未来ビジョン研究センター及びスタンフォード大学との共同研究の結果、60歳以上の認知症とフレイル(虚弱)の有病率と医療介護費について2043年までの将来推計 を明らかにしました。
その結果、認知症患者数は2016年では510万人のところ、2043年では465万人に減ると推計。しかし、大卒以下の層や75歳以上女性では増加し認知症の社会格差が広がること、格差の影響を受ける層ではフレイルを合併する割合が高く濃密な介護ケアが必要になるため、介護費総額は増加することが示唆されました。
研究グループはこれまで治療・予防など医学的な技術開発に重点を置いていた国の認知症対策に、社会格差対策も必要である、と説明しています。