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【BCP策定義務化】能登半島地震から学ぶ 介護施設のBCP ここがポイント(2)断水に対する対策

能登半島地震から学ぶ介護施設のBCPの注意すべきもう1つポイントは「断水に対する対策」です。能登半島地震で今なお医療機関も介護施設も共通して断水に悩まされています。現地では全国各地の自治体や自衛隊、日本水道協会などから給水車が駆けつけていますが、被災者の中には降り積もった雪を溶かして利用しているケースも報告されているほど事態は深刻です。

地方の過疎地では断水がより悪化しやすい要因あり

断水の原因としては、水道管が地下に設置されているため地震の揺れの影響を受けて破損しやすく、丘陵地帯が多い能登半島の複雑な地形では、これがさらにマイナスに作用するためと言われています。

また、地方の過疎地では断水がより悪化しやすい要因があると言われています。具体的には空き家の多さです。例えば地方では住居は形だけ維持しながら、実質的には都市部居住の家族の元に身を寄せている、あるいは親などが亡くなって居住者がいなくなった家を都市部に住む家族がそのまま保有しているケースが少なくありません。こうした家が倒壊して水道管が破損すると、そこから漏水が起きて断水に拍車をかけてしまうことがあるのです。各施設の断水リスクに関しては、前述の被害想定での予想に加え、こうした事情も勘案する必要があります。

「飲料水」と「生活用水」で異なる断水対策

具体的な断水対策ですが、まず水の場合は用途によって「飲料水」と「生活用水」に分けられ、それぞれの場合で若干対策が異なります。

「飲用水」については通常成人で1日に1.5~3リットル必要です。これについては平時から確保し、できれば利用者の居室に予め最低3日分ほどを備蓄しておくというのが一番シンプルな対策です。「居室に」とわざわざ書いているのは、一括して倉庫などに保管しておくと、実際はかなり重量がある水を各居室へ運搬する作業が必要となるからです。被災時は職員が多忙を極めることが確実なため、その際の作業量をできるだけ減らす工夫が求められます。

これに対して「生活用水」は確保策と同時に削減策も必要です。生活用水の用途は主にトイレ、食事、入浴などですが、この中で最も優先順位が低くなるのは入浴です。入浴を一時的に行わないことで生活用水の大幅な節約につながるだけでなく、施設内の浴槽を給水車などから手に入れた生活用水のタンク代わりに使うことも可能です。また、トイレは予め備蓄しておいた水なしで使える簡易トイレやオムツの使用、食事は紙皿・紙コップの使用などの節水対策が考えられます。

ちなみにトイレと食事については、どちらを優先するかと問われたら、食事と考える人がほとんどでしょうが一概にそうとも言えません。実はどちらもリンクしています。特に常設のトイレを利用する場合はこまめな清掃を心がける必要があります。これについては単なる感染対策だけではなく、東日本大震災などでの経験値があります。

トイレが汚いと多くの人はトイレに行くことそのものを控えてしまう傾向があります。そのために食事や引水を自己制限し、結果として体調が悪化するという悪循環に陥るからです。

さて一方で確保策としては地味ではありますが、給水時を想定して飲用水、生活用水に分けた貯水用ポリタンクなどを用意しておくことも軽視してはいけません。さらに給水車、水道水に頼らない水の確保策としては、井戸水など地下水の確保設備を有しておくことも有効です。ちなみに単純な井戸の掘削は対象になりませんが、非常用電源設置のところで説明した交付金は、小規模施設も含めた介護施設で水道からの水をためる受水槽や地下水を汲み上げ飲用水にするろ過装置が付いた地下水利用給水設備を設置する場合にも申請に基づき利用が可能です。申請の上、交付が認められた場合の補助率は、非常用電源設備と同じく半分を国、4分の1が都道府県となります。

災害対策は平時の業務とはかけ離れているうえにコストがかかるので後回しにされがちですが、今回の震災を他山の石として各施設には取り組んでもらいたいものです。

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