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【ニュース解説】医療機関で予約キャンセル料を請求されるケースは? どんな医療機関?

ここ最近、医療費をめぐるある話題がSNS上で注目を集めています。それは「6月以降、医療機関の受診をキャンセルしたり、当日に変更を申し出た場合は、医療機関からキャンセル料」を取られるというもの。一部ではテレビなどでも取り上げられていますが、実はこの話、かなり誤解されたまま情報が拡散され、厚生労働大臣の上野賢一郎氏が謝罪する事態にまで発展しています。今回はこの話題について解説します。

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キャンセル料発生する「予約診察」を行なっている医療機関は約900施設

まず、このニュースに触れた人の多くは、「以前から医療機関でキャンセル料なんかあったっけ?」と思ったことでしょう。結論から言うと、ありません。また、多くの医療機関では6月以降もキャンセル料は発生しません。では、今回のキャンセル料の話は「ガセなのか?」となりますが、正解は「一部の医療機関では6月1日以降、キャンセル料が請求できる」です。

今回の件を知るためには改めて患者が支払う医療費の構造を理解しておく必要があります。まず、日本の医療では保険診療が原則で、保険診療と保険外診療を併用する混合診療は原則認められていません。ただし、ごく一部の例外として保険外併用療養費制度という保険診療と保険診療外の自己負担を同時に求めることができる制度があり、同制度で認められた保険外の自己負担は「評価療養」、「患者申出療養」、「選定療養」の3つに分類されます。

「評価療養」の代表例は今後保険適応を目指す先進医療など、「患者申出療養」は国内で未承認の医薬品などを迅速に使用したいという患者の希望に沿い、将来の保険適応を目指すデータを集める目的でこうした医薬品を治療に使う制度です。ともに将来の保険適用を念頭に置いた仕組みです。

一方で「選定療養」は、将来的な保険導入を前提とせず、患者の選択で特別料金の支払いを保険診療の自己負担と併用するもので、予め国が定めた類型があります。一番多くの人にとってなじみがあると思われるのは、入院時の個室利用時の差額ベッド料や歯科治療での保険適用外の合金の使用などです。また、昨今では、ジェネリック医薬品がある成分で、先発新薬の処方を希望する場合、新薬価格とジェネリック医薬品の最低価格の差額の2分の1を別料金として徴収するようになりましたが、これも選定療養に入ります。

実はこの選定療養の中に「予約診察」というものがあります。これは医療機関側が設定した予約料を患者が支払うことで、より円滑な診療を受けられるように取り計らうもので、予約診察を行う医療機関は、各地の厚生局に予め届け出ておく必要があります。この届出を行ったうえで行われる予約診察には以下のような縛りが設けられています。

・対面診察のみ
・患者が予約した時刻に診療を適切に受けられるような体制を確保
・予約時間から30分程度以上患者を待たせた場合の予約料徴収は不可
・各診療科で外来診療時間の最低2割程度の時間は非予約診察時間として確保
・当該医療機関では予約でない患者も概ね2時間以上待たせないよう適宜診察
・予約料金徴収にふさわしい診療時間(10分程度以上)の確保に努める
・医師または歯科医師1人につき1日に診察する予約患者数は概ね40人が限度
・予約診察にかかわる事項を患者にとって分かりやすく院内やHPに掲示
・あくまで患者の希望で選択するもので医療機関側の都合で強制してはならない

このように保険診療に付随して患者が予約料を支払うことで予約診察を受けられる届け出を出している医療機関は、一説に全国で約900施設あると言われています。

ちなみに予約料の上限は特に設けられていません。たとえば東邦大学医療センター大森病院の脳神経内科は教授による予約診察があり、予約診察1回の予約料は3万3,000円(税込)となっています。ここまで高い例は少なく、予約診察枠を設定している大学病院クラスだと1万1,000円が一般的なようです。

東邦大学医療センター大森病院 HPより

実は今回のキャンセル料はこうした予約診察料の徴収を届け出ている医療機関だけが徴収できる仕組みなのです。

厚労大臣「現場に混乱を生じさせた」と謝罪

今回、こうした騒動に発展した最大の原因は、厚生労働省保険局が3月27日に発出した通知「『療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて』の一部改正について」の表記にあります。

同通知は2005年に発出された、治療とは直接関係のないサービスでの費用徴収の在り方やその範囲について定めた通知「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」の改正内容を周知するために発出されました。

同通知では費用徴収が認められるサービスの具体例として「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料(診察日の直前にキャンセルした場合に限る。なお、診察の予約に当たり、患者都合によるキャンセルの場合には費用徴収がある旨を事前に説明し、同意を得ること。)」と表記されていました。これが「すべての診察予約でキャンセル料がとられる」と誤解されてSNS上などで拡散したというのが今回の騒動の真相と言えます。

前述のように上野厚労相がこの件について「現場に混乱を生じさせた」と謝罪。5月29日付で通知の文言は「予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」から「選定療養における予約に基づく診察の患者都合によるキャンセル料」と訂正されました。

ということで、SNSの拡散力と曖昧な文言の恐ろしさを見せつけられた典型事例と言えます。介護業界が直接影響を受けたわけではありませんが、情報発信には細心の注意を払うべしという教訓として極めて重要な事件です。

厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」

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