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2022年上半期の老人福祉・介護事業者の倒産 前年同期から急増

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7月中旬から突入したオミクロン株BA.5による第7波では、第6波ピーク時の倍以上、1日20万人を超える感染者(PCR陽性者)が報告される日も稀ではなくなっています。8月10日には1日の感染者報告数としては過去最高の25万377人にまで達しました。

お盆休み明けの感染動向が気がかりです。同時に介護業界関係者にとって、この状況は、感染した際に重症化リスクが高い高齢者の外出自粛に伴うサービス利用控え、感染者増加による職員内での感染者や濃厚接触者の増加による人手不足、さらには施設内の感染対策強化によるコスト増など、負の要因ばかりです。

そうした中で信用調査会社の東京商工リサーチが、2022年上半期(1-6月)の「老人福祉・介護事業」の倒産が前年同期から急増しているというレポートをこのほど発表しました。今回はこの件について解説します。

介護保険法が施行された2000年以降で3番目のペース

レポートによると、2022年上半期の老人福祉・介護事業関係の倒産は53件。前年同期の38件から39.4%増となっています。これは介護保険法が施行された2000年以降で倒産件数最多の2020年同期の58件、2019年同期の55件に次ぐ、3番目に多い数字です。

2020年は従来の人手不足や競争激化といったベース要因に加え、コロナ禍の初年ということもあり、高齢者の顕著な介護サービス利用控えが重なり、過去最多の倒産に繋がりました。一方、2021年は介護報酬改定があり、新型コロナ対応としてサービス利用の減少の影響が大きかった通所介護サービスなどでの「規模区分の迅速見直し」「3%加算」という特例評価分の0.05%も含め0.70%のプラス改定になったこと、感染対策での自治体レベルの支援策などにより経営的な打撃は緩和され、倒産件数は減少に転じたと言われています。

しかし、自治体レベルの感染対策支援の一部は終了し、今年に入りウクライナ危機の勃発により起きた燃料や農作物などを軸とした世界的な物価上昇が介護業界の経営を直撃しています。特に公的介護報酬を収益の軸としている以上、経費増を価格転嫁できない業界特有の問題も無視できない要因でしょう。

有料老人ホームの倒産 2021年0件→2022年8件に

「技能実習」は、日本国内で積み重ねられた技能、技術、知識を開発途上地域などへ移転して、それら

上半期の倒産53件の業態別内訳については、最も多いのが「訪問介護事業」の22件ですが、これは前年同期と同数でした。一方で「通所・短期入所介護事業」が17件で前年同期比54.5%増、前年同期は倒産が0件だった有料老人ホームは今年上半期は8件、その他が6件です。やはり新型コロナの感染状況によりサービス利用者が減少しやすい、通所・短期入所介護事業が大きな影響を受けていることが分かります。

一方、有料老人ホームの倒産急増について、東京商工リサーチは「投資負担が重く、競争激化による利用者減で事業者の息切れが目立った」と分析しています。

倒産原因別では、「販売不振(売上不振)」が38件(前年同期比40.7%増)、「設備投資過大」「事業上の失敗」が各4件(同300.0%増、同50.0%増)、「他社倒産の余波」「既往のシワ寄せ(もともと経営状態が悪く、具体策を行わないまま倒産すること)」が各3件(同200.0%増、同25.0%減)などです。

原因別の前年同期比だけを見れば、後半に挙げられている一括りで言えば放漫経営とも言える原因の方が目立ちますが、実際には元々の件数が少ないので、2022年上半期のトレンドとは言えません。むしろトップに挙げられた「販売不振(売上不振)」、介護業界で言うところのサービス利用者減が倒産原因全体の7割超であることに注目すべきでしょう。もっとも東京商工リサーチでは直接的なコロナ禍が原因のコロナ関連倒産という分類も別途設定しており、それによると2022年上半期は16件(前年同期11件)が該当するとのことです。

コロナ禍による利用者減が小規模事業者を直撃

この53件の倒産について、さらに負債額や倒産事業者の規模別でみると、より詳しい輪郭が浮かび上がってきます。

まず、53件の負債総額は149億8,500万円(同775.8%増)と前年同期から急増していますが、負債1億円未満が42件と全体の約8割を占めています。

しかもこのうち負債額1000万円以上5000万円未満が36件です。上半期全体の負債総額は3年ぶりに100億円超となりましたが、これは負債10億円以上の大型倒産が3件あったためです。また、従業員別でみると、「5人未満」の28件が最多で、「5人以上10人未満」と「10人以上20人未満」が各9件と小規模の事業者が約8割です。

これらを総合すると現状は「コロナ禍のサービス利用者減の影響は、もともと財務体力が弱い小規模事業者を直撃している」と読み解くことができます。

ただ、大手事業者が安泰かと言えば、必ずしもそうは言えません。とりわけ、前述の世界的な物価高は、ここ最近、好景気で湧いていたアメリカで景気減速を起こすほど悪影響を及ぼしています。

もうすでに約30年間にわたり冴えない景気が続く、「足腰の弱い日本」での影響はより厳しいものになるはずです。

年間ベースでは過去最多だった2020年を上回る可能性も

新型コロナの感染状況はまだ予断を許しません。10~11月までにはオミクロン株対応の新規ワクチンが登場する見通しですが、それで感染状況がどれほど沈静化するかはまだ誰も分かりません。そうしたことからか東京商工リサーチでは今後について「年間では過去最多(倒産件数)だった2020年の118件を上回る可能性も出てきた」と業界関係者としては当たってほしくない見通しを示しています。

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