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特別養護老人ホーム(特養)看取り介護加算ガイド〜難解な制度もこれで安心!

この記事では、特別養護老人ホーム(特養)の経営者や施設長の方々を対象に、「看取り介護加算」について、その概要から算定要件、点数、よくある疑問までを分かりやすく解説します。

看取り介護加算の制度を深く理解し、適切な取得と運用に役立てていただくことで、特養における看取りケアの質の向上と安定した施設運営の一助となれば幸いです。

目次

看取り介護加算とは

看取り介護加算は、医師により回復の見込みがないと診断された利用者に対し、医師や看護師を含む多職種が連携し、介護施設で本人らしい穏やかな最期を支援するケアを提供した場合に算定される加算です。

看取り介護加算は2006年の介護報酬改定で創設されました。

医療機関が治療の場としての機能を強化する一方で、終末期ケアについては介護施設や自宅で対応する国の意向が反映されています。

この加算は、利用者の尊厳を尊重し、心身の苦痛を緩和しながら生活を支援する終末期ケアの充実を目的としています。

看取り対応には、特に夜間の医療体制を含めた看護体制の強化や環境整備が必要となるため、看取り介護を行う施設を評価し、より質の高いケアを提供できるようにすることが重要視されています。

看取り介護加算の基礎知識

看取り介護加算が適用される介護サービスで、看取り介護加算は以下の介護サービス事業者が対象となります。

看取り介護加算の対象となる介護サービス
1
特別養護老人ホーム
介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
2
特定施設入居者生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護
3
認知症グループホーム
認知症対応型共同生活介護

これらの施設は、利用者が生活の場として終末期を過ごすことを前提としており、継続的な医療・介護連携のもとで看取り対応を行うことが求められています。

看取り介護加算の種類と算定要件

看取り介護加算には「看取り介護加算(Ⅰ)」と「看取り介護加算(Ⅱ)」の2種類があり、それぞれ要件が異なります。

看取り介護加算(Ⅰ)

看取り介護加算(Ⅰ)の主な算定要件
1

常勤の看護師を1名以上配置し、24時間連絡できる体制を確保していること。

2

看取りに関する研修を実施していること。

3

看取りを行う際に、個室や静養室を利用できる環境が整っていること。

4

利用者本人または家族が、医師から情報提供と説明を受け、医療・介護職と十分に話し合った上で、看取りについて意思決定していること。

5

医療・ケアチームにより、疼痛緩和や本人・家族への精神的・社会的援助を含む総合的なケアを行っていること。

6

心身の変化に対応するため、医療・ケアチーム、本人、家族との話し合いを繰り返し行い、その内容を文書にまとめていること。

7

看取りに関する協議の参加者として、生活相談員を明記すること。

8

施設サービス計画を作成する際に、本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定を支援するよう努めていること。

看取り介護加算(Ⅱ)

前提: 看取り介護加算(Ⅰ)の要件をすべて満たしたうえで、以下の追加要件を満たす必要があります。
1

配置医師と施設の間で、利用者への注意事項や病状等の情報共有、医師との連絡方法、診察依頼を行う具体的な状況について取り決めがあること。

2

複数名の配置医師を配置する、または配置医師と協力医療機関の医師が連携することで、施設の求めに応じて24時間対応できる体制を確保していること。

3

特定施設入居者生活介護(介護付きホーム)の場合は、看取り期に夜勤または宿直の看護職員を配置すること。

看取り介護加算(Ⅱ)は、より手厚い医療連携体制を評価する加算であり、死亡場所が施設内であった場合に算定可能です。

上記に加えて、看取り介護加算を算定するためには、以下の基本条件も満たす必要があります。

看取りに関する指針(マニュアル)の整備

1
看取りに関する指針の整備

事業所として看取り対応の方針を明確にした指針を整備し、看取りケアの基本方針、医療連携の方法、家族への説明方法、看取り期のケア内容などを整理しておく必要があります。

2
看取り介護計画(看取りケア計画)の作成

看取り期に対応した個別計画を作成し、ケア方針、医療連携、家族支援などを多職種で共有することが重要です。

看取り期のケア内容の記録

看取り期と判断した経緯、医師との連携記録、家族への説明記録、状態変化の記録など、ケアの実施内容を記録として残すことが求められます。

看取り介護加算の特別養護老人ホーム(特養)における単位数

特別養護老人ホームにおける看取り介護加算の単位数は以下の通りです。

死亡日から逆算して最大45日間の加算が可能です。

これらの単位数は、利用者が看取り期と判断された日から亡くなるまでの期間に適用されます。

ただし、急変により看取り期と判断されずに亡くなった場合は算定対象外となります。

特別養護老人ホームにおける看取り介護加算の単位数
算定期間 看取り介護加算(Ⅰ) 看取り介護加算(Ⅱ)
死亡日45日前~31日前 72単位/日 72単位/日
死亡日30日前~4日前 144単位/日 144単位/日
死亡日前々日・前日 680単位/日 780単位/日
死亡日 1,280単位/日 1,580単位/日
看取り介護加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は、死亡日30日前以前の単位数は同じですが、死亡日前々日・前日および死亡日は(Ⅱ)の方が高く設定されています。

例えば、看取り介護加算(Ⅰ)を45日間算定した場合の合計は7,608単位となります。

看取り介護加算算定に必要な手続きと留意点

看取り介護加算の届出は、原則として厚生労働省が定める標準様式を用いて、電子申請・届出システムを通じて行うこととされています。

これは、地域ごとのローカルルールによる事務負担の軽減を目的としています。届出の際には、上記算定要件を満たしていることを示す書類を準備し、正確に提出することが重要です。

また、以下の点に留意が必要です。

看取り介護加算を算定する際の主な留意点
1
施設外で亡くなった場合の算定

利用者が死亡前に自宅や医療機関へ戻り、施設外で亡くなった場合でも、看取り介護加算の算定は可能です。ただし、退所日の翌日から死亡日までの期間は算定対象外となります。

2
退所後に自己負担分の請求が発生する場合がある

死亡月に加算をまとめて算定するため、利用者がすでに退所している月でも自己負担分の請求が発生する場合があります。退所時に家族へ文書で説明し、同意を得ておくことが望ましいです。

3
看取り指針は整備するだけでは不十分

看取り指針が整備されていても、職員が内容を理解していなかったり、実際の看取り対応と整合していなかったりすると、運営指導で指摘される可能性があります。定期的な見直しと職員研修が重要です。

4
「看取り期」の判断基準を明確にする

「いつから看取り期と判断するか」が曖昧だと、算定開始日や記録内容にばらつきが生じます。医師の判断を受けるタイミングや、看取り期とみなす条件を明文化し、職員間で共有することが不可欠です。

5
記録の整合性を保つ

看取り介護加算では、判断根拠・日付・経過・職種間の記録内容に一貫性があることが重要です。問題となるのは「ケアをしていないこと」だけではなく、実施したケアを第三者に説明できる形で記録できていないことです。

ターミナルケア加算との違い

看取り介護加算と混同しやすい加算に「ターミナルケア加算」があります。両者は終末期ケアに対する加算ですが、対象となるサービスや評価されるケアの内容に明確な違いがあります。

最も分かりやすい考え方は、「施設内で亡くなるケース」に対しては看取り介護加算が、「自宅等での最期を支えるケース」に対してはターミナルケア加算が適用されるという点です。

看取り介護加算

特別養護老人ホーム、特定施設入居者生活介護、認知症グループホームといった施設系・居住系サービスが主な対象です。

日常生活の介護ケアを中心に、利用者が住み慣れた場所で穏やかな最期を迎えられるよう支援することを評価します。

延命治療は行わず、身体的・精神的苦痛の緩和を目的とします。

ターミナルケア加算

介護老人保健施設、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護などが主な対象です。

医療スタッフが主体となり、点滴や経管栄養、酸素吸入などの医療行為を含む疼痛管理や呼吸管理といった医療的ケアが中心となります。

看取り介護加算は主に介護施設での終末期ケアが対象であるのに対し、ターミナルケア加算は介護老人保健施設や訪問看護など、より医療的な場所や在宅でのケアが対象です。

また、看取り介護加算は介護職員が中心となり、利用者の生活支援や心理的サポートを行います。

一方、ターミナルケア加算は医療スタッフが主体となり、医療的処置による苦痛緩和が強調されます。

算定期間の考え方についても、看取り介護加算は死亡日を起点に遡った日数区分で単位数が設定されますが、ターミナルケア加算はサービスによって算定要件や算定日数の考え方が異なります。

特養における看取り介護加算Q&A

看取り介護加算を算定する際の主な留意点
1
施設外で亡くなった場合の算定

利用者が死亡前に自宅や医療機関へ戻り、施設外で亡くなった場合でも、看取り介護加算の算定は可能です。ただし、退所日の翌日から死亡日までの期間は算定対象外となります。

2
退所後に自己負担分の請求が発生する場合がある

死亡月に加算をまとめて算定するため、利用者がすでに退所している月でも自己負担分の請求が発生する場合があります。退所時に家族へ文書で説明し、同意を得ておくことが望ましいです。

3
看取り指針は整備するだけでは不十分

看取り指針が整備されていても、職員が内容を理解していなかったり、実際の看取り対応と整合していなかったりすると、運営指導で指摘される可能性があります。定期的な見直しと職員研修が重要です。

4
「看取り期」の判断基準を明確にする

「いつから看取り期と判断するか」が曖昧だと、算定開始日や記録内容にばらつきが生じます。医師の判断を受けるタイミングや、看取り期とみなす条件を明文化し、職員間で共有することが不可欠です。

5
記録の整合性を保つ

看取り介護加算では、判断根拠・日付・経過・職種間の記録内容に一貫性があることが重要です。問題となるのは「ケアをしていないこと」だけではなく、実施したケアを第三者に説明できる形で記録できていないことです。

看取り介護加算算定の経営・ケアの質への影響

看取り介護加算の取得は、施設経営と看取りケアの質の両面に大きな影響を与えます。

報酬の確保と安定運営

看取り介護加算は、終末期ケアに対する評価として介護報酬が加算されるため、事業所の収益向上に貢献し、安定した運営基盤を築くことができます。

特に、死亡日直前や当日の単位数は高く設定されており、手厚いケアへの評価が明確です。

利用者のニーズへの対応

高齢化社会において、住み慣れた施設で最期を迎えたいという利用者のニーズは高まっています。看取り体制を整えることで、これらのニーズに応え、施設の利用率向上にも繋がります。

医療連携の強化

加算の算定要件には医師や看護師との連携が不可欠であり、これにより地域の医療機関との協力体制が強化されます。これは、利用者の急変時対応能力の向上にも繋がり、施設全体の信頼性を高めます。

看取りケアの質向上への効果

多職種連携の促進

看取り介護加算の算定には、医師、看護師、介護職員、ケアマネジャーなど多職種によるチームケアが求められます。

これにより、職種間の情報共有や連携が促進され、利用者一人ひとりへのきめ細やかなケアが可能となります。

職員の専門性向上

看取りに関する研修の実施が義務付けられているため、職員の終末期ケアに関する知識や技術が向上します。

また、看取りケアの実践を通じて、職員は人の死に向き合う経験を積むことで、介護職としての専門性と人間性を高めることができます。

利用者・家族への安心感の提供

計画的な看取り介護体制が整っていることは、利用者本人とその家族にとって大きな安心感を与えます。

最期の時間を尊厳を持って過ごせる環境を提供することは、本人らしい最期を支援する上で非常に重要です。

看取り介護は、職員にとって精神的・身体的な負担が大きい業務であり、適切な対応策が求められます。

看取り体制導入に伴い必要な心構えや準備

看取り介護は、職員にとって精神的・身体的な負担が大きい業務であり、適切な対応策が求められます。

スタッフの精神的なケア

人の死を間近で感じながらケアを行うことは、介護スタッフにとって大きな精神的負担となります。

この負担を軽減するためには、看取り介護に関する研修の実施や、経験者との相談機会の確保、医療・ケアチーム全体での支え合いが重要です。

看取りに関する研修の充実

看取りへの不安は知識や経験の不足から生じることが多いため、看取りの基礎知識、緩和ケア、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)などを学ぶ定期的な研修が必要です。

研修は、介護職員だけでなく、多職種が共同で行うことで、共通の理解を深めることができます。

チーム連携の強化

看取り介護は多職種連携が不可欠です。医師、看護師、介護職員、生活相談員などが定期的なカンファレンスを通じて情報を共有し、利用者の状態変化に迅速に対応できる体制を構築することが重要です。

特に、介護記録の統一書式を作成し、介護職と看護師が気付きや留意点を共有することで、より密な連携が図れます。

「看取り介護は、看取り期だけにあらず」の意識付け

入所者の最期は、日々の生活の延長線上にあるものです。普段のケアから利用者の好みや意思をくみ取り、その人らしい生活を支えることが、看取り期のケアの質を高めることに繋がります。

食事・水分摂取の知識の深化

終末期には食事や水分摂取量が減少するのが自然な体の変化です。無理に食べさせることは利用者に負担をかけることになります。

職員がこの知識を深め、本人の希望するものを少量でも提供するといった柔軟な対応ができるよう支援します。

ICT機器の活用

見守り支援システムなどを導入することで、特に夜間の見守り体制を強化し、職員の精神的負担を軽減できます。

呼吸数や心拍などのバイタル情報をリアルタイムで把握できるため、経験の浅い職員でも緊急性を判断しやすくなります。

情報共有の工夫: 介護記録のICT化が進む中でも、日々の業務で忘れがちな項目や気付いたことをホワイトボードに手書きで共有するなど、職員の目につきやすい形で情報を共有する工夫は、新人職員のスキル向上にも役立ちます。

施設全体で看取りケアの質を向上させる看取り介護加算

「看取り介護加算」は、特別養護老人ホームなどの施設が終末期の利用者に対し、質の高い看取りケアを提供するための重要な介護報酬制度です。

この加算の取得には、常勤看護師の配置、24時間連絡体制の確保、看取りに関する研修実施、看取り指針の策定と本人・家族の同意、多職種連携によるケア計画の作成と記録など、多岐にわたる算定要件を満たす必要があります。

特に、看取り介護加算(Ⅰ)と(Ⅱ)では医療連携体制の充実度が異なり、施設種別によっても単位数が細かく設定されています。

また、看取り介護は、医療的ケアが中心の「ターミナルケア加算」とは異なり、利用者の尊厳を尊重した日常生活支援が中心となります。

2024年度の制度改定では、死亡日45日前からの算定期間が設けられるなど、より実態に即した評価が進んでいます。

加算の適切な取得と運用は、施設の収益向上だけでなく、利用者とその家族に安心できる最期を提供し、職員の専門性向上とチーム連携を促進するなど、看取りケア全体の質を高める上で不可欠です。

しかし、職員の精神的・身体的負担や属人化しやすいケアの実態など、現場には多くの課題も存在します。

これらの課題に対しては、研修の充実、ICT機器の活用、きめ細やかな情報共有といった対応策を講じ、施設全体で看取りケアの質を向上させることが求められます。

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