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【ニュース解説】初診料なども合わせると最大1万円超に 10月からのコロナ治療費はどうなる?

厚生労働省は2023年9月15日に10月以降の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の医療提供体制と公費支援の具体策を公表しました。5月に新型コロナが感染症法上の5類となったことを受け、それまで国が丸抱えしていた治療や、医療機関などへの各種特例的な措置が段階的に見直されてきましたが、今回はその第2弾。発表内容は10月から来年2024年4月までの措置となります。この発表内容について解説します。

治療薬が「全額公費負担」から「自己負担」へ

まず、全国民に関わるのが治療費の取り扱いです。5類移行前は基本的に新型コロナを医師が疑って検査した場合は感染確定後の医療費も含め全額公費で負担し、患者の自己負担はありませんでした。5類移行後は初診料・再診料やPCR検査・抗原検査、対症療法の解熱鎮痛薬や鎮咳薬の処方は通常の自己負担対象となりましたが、新型コロナ用の中和抗体薬や抗ウイルス薬に関しては、かなり高額な薬価であるため、暫定的に公費負担が継続されてきました。

各種抗ウイルス薬の標準的な用法・用量に伴う治療1回(標準的な投与期間)の総薬剤費は、点滴の抗ウイルス薬のベクルリー(一般名・レムデシビル)が24万7,988円、経口の抗ウイルス薬であるラゲブリオ(一般名・モルヌピラビル)が9万4,312円、パキロビッド(一般名・ニルマトレルビル/リトナビル)が9万9,027.5円、ゾコーバが5万1,851.8円です。これを通常の患者自己負担3割で考えると、最も安いゾコーバでも1万5555円となり、最も高いベクルリーで7万4396円となります。これだけの負担が生じると、必要性があるにもかかわらず、処方後に「要らない」という患者が出てくる可能性があります。

そこで今回は患者の負担割合ごとに、どの治療薬を処方されても薬剤費の自己負担額を一律としています。具体的には1割負担の患者は3000円、2割負担では6000円、3割負担では9000円としています。治療ではこれに加え、初診料・再診料やPCR検査・抗原検査、対症療法の解熱鎮痛薬や鎮咳薬の薬剤費がかかります。

厚生労働省リーフレットより

2024年4月までの措置 その後はどうなる?

来年4月からは計算上は、前述のように最低でも1万5000円以上となるはずですが、たぶんそれよりは安くなることが現状では予想されます。というのも来春はトリプル改定で、この時は薬価引き下げも行われます。しかも日本の薬価制度では「市場拡大再算定」という、当初の想定を超えた売上高を記録した薬に関しては、通常の引き下げに加えて最大50%の薬価引き下げを行う制度があります。今後の流行状況によっては、これら新型コロナ治療薬の売上高が大幅に伸長する可能性があるので、その場合はこの市場拡大再算定が適用される可能性があります。

また、医療費負担では、新型コロナでは高齢者を中心に入院対応が行われることが少なくありません。この場合、かなりの医療費がかかることになります。幸い日本の医療費制度では、日本では医療費が高額過ぎて治療を受けられないことがないように、収入に応じて月当たりの支払い医療費上限を定めた「高額療養費制度」があります。

例えば70歳以上で年収約370~770万円の場合、月当たりの医療費支払い上限額はかかった医療費の総額によって異なるものの最低で8万円強となります。これについては、5類移行から9月末までは、この支払い上限額からさらに2万円を減額する特例措置が行われていました。これについて、新型コロナでの平均入院日数が徐々にインフルエンザのそれに近づいているとのデータを基に高額療養費制度に基づく上限額からの減額分を1万円に縮小することになりました。

高齢者施設における介護報酬などの特例措置は一部見直しのうえ継続

また、今回高齢者施設での取り扱いについても一部変更になります。新型コロナでは、流行時の病床ひっ迫を受け、現在でも感染者の施設内療養が一部で行われ、それに伴い介護報酬などの特例措置が行われています。この点については、今後の感染拡大時の病床ひっ迫の可能性なども考慮し、一部要件や金額などを見直した上で継続することになりました。

具体的には

(1)感染者が発生した場合の患者への対応に係る業務手当の1人あたりの補助上限を1日4,000円

(2)施設内療養での通常補助および追加補助の1日単価を1万円から5,000円に縮小

(3)追加補助の要件のクラスターの発生人数を大規模施設は5人以上、小規模施設は2人以上をそれぞれ10人以上、4人以上に見直し

(4)医療機関からコロナ回復患者の受入れの場合の退所前連携加算の算定可能日数を最大30日から14日に短縮

の変更が行われます。

また、新型コロナ患者の服薬指導や歯科治療などの特例の診療報酬も継続するものの10月1日以降は減額されます。

一方。5類移行後、国は新型コロナの入院医療、外来医療ともに政策的に対応医療機関の拡大を進めるとともに、それまで行ってきた入院調整については、原則として医療機関等情報支援システム(G-MIS)などを活用しながら医療機関同士で行う仕組みに移行しました。現在も病床確保のための病床確保料は支出していますが、これまでは重点医療機関を対象にしていたものを全医療機関に拡大しつつ、確保料も引き下げ、さらにこの病床確保対象を原則として新型コロナの重症度分類で中等症Ⅱと重症の患者に限定しました。

高齢者の場合は基礎疾患保有者が多いため、従来から軽症でも万が一に備えて入院対応することは少なくありませんでしたが、新しい措置を考慮すると、こうした入院での病床確保難易度が上昇すると考えられます。とりわけ今後感染拡大期が到来した場合はこの点は高齢者施設にとってかなり苦労することが予想されます。その意味で、高齢者施設関係者は地域の連携医療機関などと予め感染拡大期の入院受け入れ体制について十分話し合っておく必要があります。

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の令和5年 10 月以降の 医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」

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