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【ニュース解説】インフルエンザ なぜ2023年は流行が早い?

ここ最近、呼吸器感染症の症状を和らげる咳止め薬や痰切り薬が不足し、武見敬三厚労相自ら製薬企業を集めて増産を要請する事態になっています。この原因の1つが、今年の異様なインフルエンザの流行です。そこで今回は現在の流行状況とその原因、さらに対策について解説します。

例年よりも2か月近く早いインフルエンザ流行

まず、現在の流行状況ですが、インフルエンザは感染症法上では5類に分類され、感染者の発生状況は、定点と呼ばれる全国に設定された一部医療機関からの報告を基に「定点当たり〇人」という形で算出しています。今年5月に5類に移行した新型コロナも同様ですが、5類の感染症では全数報告のものもあります。

さてこの感染症の発生動向は週単位で集計されていますが、最新の10月 30 日~11 月 5 日の全国の定点当たりの報告数は21.13人です。ただ、この数字だけではピンとこない人もいるかと思います。近年、国はインフルエンザの流行状況について、「流行発生注意報」「流行発生警報」とう形で自治体などに注意喚起をしています。この基準は注意報が定点当たり10人、警報が30人です。ということはすでに注意報レベルを超えて、警報レベルに近づきつつあります。

国立感染症研究所 インフルエンザ流行レベルマップ(11/13時点)より

例年のインフルエンザは概ね12月前後から本格流行シーズンですが、今年は10 月 9 ~15 日時点で定点当たりの報告数が9.99人と注意報レベルに達していました。

インフルエンザ 流行前倒しの原因は 

原因の1つは2020年以降のコロナ禍です。新型コロナの大流行とそれに伴う国全体の感染症対策の強化で、インフルエンザはほとんど流行しませんでした。結果として、この間に日本全体としてはインフルエンザ・ワクチン接種をしていた人を除き、インフルエンザに対する免疫が低下してしまいました。

これに加え、今年は春以降もまるで炭火の燃え残りのように一定の患者発生が続き、これがコロナ禍前よりも明らかに高いレベルでした。例えばコロナ禍前の2019年5月13~19日の定点当たりの報告数は0.92人でしたが、今年のほぼ同時期である5月15~21日は1.98人と2倍以上でした。

なぜこのようになったのかについては、一つの仮説があります。これは一部で「インフルエンザ輸入感染症説」とも囁かれています。まず、コロナ禍中のインフルエンザ激減の理由の1つは、前述のような国上げての感染対策が考えられますが、実はそれだけでは説明できません。というのも、そうした感染対策がありながらも新型コロナは流行していたからです。この点は新型コロナの方がインフルエンザの感染力で上回っていることで、ある程度説明はできると思います。ただ、それでもコロナ禍中にインフルエンザ患者は激減してもゼロにはなっていません。

そして冒頭で示したインフルエンザの定点報告数と同じ最新時期の新型コロナの定点報告数は21.13人です。つまり新型コロナとインフルエンザのどちらが現実に流行するかについては、感染力の強さだけでは説明しきれないことになります。

実はコロナ禍中の世界合の感染症流行状況を確認すると、インフルエンザが定期的に流行していた地域があります。それはインドを含む南アジア地域です。つまりコロナ禍中に国内でインフルエンザが流行しなかったのは、国外との往来が著しく減少した結果、海外からインフルエンザが持ち込まれにくくなったことが国内の感染対策強化よりも大きな要因だったのではないかと考えられるわけです。

感染症専門家の間では、これまで「インフルエンザは土着の感染症」が定説だったので、「インフルエンザ輸入感染症説」は既存概念を覆す大きなインパクトがある仮説です。

これらの事実を総合すると、現在のインフルエンザ流行は(1)コロナ禍中の患者激減による免疫低下(2)今年5月の新型コロナの5類移行以降の感染症対策の緩和(3)外国人の入国制限解除に伴う国外からのインフルエンザ流入、により起きていると考えることができます。ちなみに現在感染力がより強い新型コロナよりもインフルエンザが流行している現象は、この間に新型コロナが繰り返し流行してきたことで、ある種日本国内で集団免疫が獲得されていると考えれば不自然ではありません。

”3密回避”とこまめな手洗いでインフルエンザ予防を

今後年末にかけての流行状況については、あまり明るい見通しはありません。そもそも空気が乾燥しやすい、換気の悪い室内にこもりがちになる冬期は、インフルエンザが流行しやすい環境だからです。今よりも状況が悪化することを前提に対策を取ることが無難です。

対策の第一に挙げられるのがインフルエンザ・ワクチンの接種です。同ワクチンは感染・発症予防効果はあまり高くありませんが、入院・死亡などの重症化予防効果は科学的に証明されています。特に高齢者ではインフルエンザは重症化しやすく、感染が死亡につながることも少なくないのが実状です。介護施設を利用する高齢者はもちろんそこで働く職員も接種するにことが望ましいのは論を待ちません。

また、これ以外にはこれまでコロナ禍で培った3密回避、手洗いをまめに行うことも感染予防対策には有効です。すでにコロナ対策として、各施設では今もこれらの対策は継続していると思われますが、より確実な励行を心がけましょう。

国立感染症研究所 インフルエンザ流行レベルマップ

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