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【ニュース解説】2027年度の介護報酬改定 4つのテーマに込められた国の「狙い」とは

次回2027年度の介護報酬改定に関しては、すでに今年度の4月下旬から社会保障審議会介護給付費分科会で改定に向けた議論が始まっています。まだスタート段階で、具体的には何も決まっていませんが、分科会ではすでに様々な意見が出ています。そこで今回はこれまで分科会で始まった改定議論の方向性の概要を紹介したいと思います。

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4つの分野横断的なテーマと改定スケジュール

まず、2027年度介護報酬改定の議論についてはGW前の4月27日に事務局(厚生労働省)から、分野横断的なテーマとして

▽地域包括ケアシステムの深化
▽人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
▽介護人材確保に向けた処遇改善等と職場環境改善やケアの質の向上に向けた生産性向上等
▽制度の安定性・持続可能性を確保する報酬の在り方

が提示されました。

ちなみに前回改定時のテーマが

▽地域包括ケアシステムの深化・推進
▽自立支援・重度化防止に向けた対応
▽良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
▽制度の安定性・持続可能性の確保

でした。1番目と4番目は前回とほぼ同様です。

改定に向けたスケジュールは、

4月~夏頃:主な論点について議論・事業者団体等からのヒアリング
10~12月頃:具体的な方向性について議論
12月中:報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ(地方自治体での条例制定・改正に要する期間を踏まえ、基準に関しては先行してとりまとめを実施)
2027年1月頃:介護報酬改定案諮問・答申

が示されています。

これらは分科会でおおむね委員の了承が得られています。そこで各テーマの意味とスケジュールについて、より具体的に解説します。

地域包括ケアシステムの深化

前回改定時から「推進」の言葉が抜けたのは、実態が伴っているかどうかは別にして、そもそも各地域での地域包括ケアシステムの完成が2025年を目途と設定されていたためです。つまり現状はもう各地ではシステムが完成していることが前提で、今後はその深化のステージという位置づけです。この辺は「?」と思う方もいるかもしれませんが、国の考え方としてはそうなっています。

ちなみに国がこの目標年度を掲げ始めたのは、厚生労働省の委託研究として設置された地域包括ケア研究会が、2009年11月に公表した「地域包括ケア研究会報告書~今後の検討のための論点整理~」が最初です。その後、2012年施行の改正介護保険法で、地域包括ケアシステムの理念が法制度上も位置付けられ、内閣が設置した社会保障制度改革国民会議が2013年に発表した報告書では、政府の政策目標として2025年が明記されました。

これは国が推し進める地域医療構想と関係しています。地域医療構想は前述の社会保障制度改革国民会議の提言で「医療機能の分化・連携を進め、地域ごとに将来必要となる病床機能を明確化する必要がある」と謳われたことを受け、翌2014年の医療介護総合確保推進法の成立に伴う改正医療法で都道府県に策定が義務付けられました。

この時の地域医療構想は「2025年に向けた地域医療構想」と銘打たれました。前述の地域包括ケアシステムの完成と同時期ですが、これは繰り返しになりますが、団塊の世代全員が後期高齢者となり、医療・介護ニーズが増大し始めるのが2025年だったからです。

人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築

そしてこの2025年を過ぎた今、厚生労働省は「2040年に向けた新たな地域医療構想」を打ち出しました。これは医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増加と生産年齢人口の急減に伴う医療・介護人材不足への危機感を表したものですが、ここで一番問題になるのが、地域ごとの人口減少や医療・介護ニーズの相違が2040年に向けて今以上に顕著になる点です。

このことを受け、2025年末の社会保障審議会介護保険部会の意見書を経て、2026年の介護保険法改正で中山間・人口減少地域では「人員配置基準などを緩和した特例的な介護サービス」(特定地域サービス)の提供を可能にすることが制度化されました。ただ、実際のサービス提供は2027年4月からです。その細部を決めるのがまさに「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」です。

介護人材確保に向けた処遇改善等と職場環境改善やケアの質の向上に向けた生産性向上等

制度の安定性・持続可能性を確保する報酬の在り方

前回改定の「良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」とは似ている感じもしますが、決定的なのは賃上げにこだわっている点です。

これは毎春の労働組合と企業の賃上げ交渉、いわゆる「春闘」の平均賃上げ率(日本労働組合総連合会、通称・連合)が発表する平均賃上げ率が、2024年には33年ぶりに5%超の5.10%となり、翌2025年には5.25%、2026年は5.01%と高水準をつけていることが影響しています。

この久々に高い平均賃上げ率は、物価高騰対応、深刻な人手不足による人材確保競争、政府・経済界による賃上げ促進策、大企業を中心とした企業収益の改善が理由として挙げられます。介護業界でも処遇改善に向けた取り組みが進化し、これまでの賃上げ関連加算を一本化した介護職員等処遇改善加算が2024年改定で行われたことなどから、2024年度の賞与などを含めた平均給与額は前年と比較し4.3%増となりました。しかし、まだ民間企業の水準には追い付いていません。また介護報酬改定は3年に1回で、改定翌年以降は原則報酬の引き上げが原則ないため、事業者は賃上げに慎重になり、結果賃上げ率は減速しがちです。

今春は幸いにも介護職員等処遇改善加算の臨時改定が行われましたが、他業種との人材獲得競争の一層の激化が予想される中、エッセンシャルワークにもかかわらず、従来から慢性的な人手不足に悩む介護業界にとっては、世間が思う以上に危機的な状況と言えます。この危機感を国も共有していることの表れが、この改定テーマ設定につながっていることは明らかでしょう。

前回改定を比較して前倒しのスケジュールは激しい議論の布石か

さて、改定に向けたスケジュールは前述しましたが、これは前回改定時よりも前倒しが進んでいます。前回は、主な論点についての議論は6月~夏頃、事業者団体等からのヒアリングは9月でした。つまり1~2か月前倒しのスケジュールが組まれています。

 この点は個々のテーマについて、より深い議論を行う用意があるとの厚生労働省のメッセージとも読み解くことができます。もっとも前倒しが進む分、議論がより広範におよぶ可能性もあります。その意味ではやや目まぐるしい展開の議論にになる可能性も予想されます。

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