今年1月から始まったオミクロン株による新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に感染者急増により全国各地で新型インフルエンザ特措法に基づく「まん延防止等重点措置」が発出されましたが、ようやく3月21日で残る18都府道府県でも解除され、全国で行動制限はなくなりました。
新規陽性者、重症者、死者の報告数もピークアウトしていますが、死者はピークアウト後にもかかわらず、全国で毎日100人以上報告されています。第5波と言われた昨年夏は最も多い日でも90人未満だったことから比べ、かなり高い数字と言えます。この多くは基礎疾患を持つ高齢者と言われ、一部の臨床医からは第5波と異なって感染症として重症化よりも、感染を契機とした基礎疾患の悪化で亡くなるケースが目立つと指摘されています。
オミクロン株に対しては、従来の新型コロナワクチンの2回接種のみでは感染・発症予防が大幅に低下することが知られていて、高齢者を中心に全国で3回目接種が進められています。3月18日時点の全人口に占める3回接種完了率は33.3%とまだ国民の3人に1人という状況ですが、65歳以上の高齢者に限定すると3回接種完了率は74.5%とようやく3分の2まで達しようとしています。
高齢者への3回目接種に当たって特に優先的に進められたのが、クラスターが発生しやすい環境を有する高齢者施設です。厚生労働省では2月18日と3月1日に全国の自治体に対して高齢者施設での3回目接種の実施状況について調査を依頼してきました。このほど全国1741市区町村から3月15日までに接種完了見込みも含めた最新の接種完了率のデータが公表されました。
まず、全国の高齢者施設全体での接種完了率は95%と極めて高いものになっています。高齢者施設での医師の配置有無別の接種完了率は「医師の配置あり」で96%、「医師の配置無し」で95%でほとんど差はありません。施設別でみると最高は「(医師の配置あり)地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」が97%、最低は「(医師の配置無し)有料老人ホーム」が93%です。この差に関しては、「(医師の配置無し)有料老人ホーム」は施設数も施設当たりの定員数も多いので、どうしても接種完了スピードがやや落ちてしまうと解釈でき、特に懸念すべき状況とは言えないでしょう。
一方、都道府県別の接種完了率では地域差が見受けられます。都道府県別で最も高いのは徳島県の100%で、ほとんどの自治体で90%を超えていますが、最低は青森県の84%で、この他に90%未満の自治体は北海道、奈良県、沖縄県です。
これらの自治体がなぜ接種完了率が低いかの正確な理由については不明ですが、北海道、青森県については、面積が広いうえにこの時期は雪などにより移動が困難になる日が増えることが要因の一つとして推察されます。また、沖縄県に関しては従来から若年者を中心に全国で最も新型コロナワクチン接種率が低い自治体として知られています。その意味では地域としてワクチンに慎重な風土があるのかもしれません。奈良県については現時点で接種完了率が低い要因はこれと言って見当たりません。