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報酬締め付けと後期高齢者伸びの鈍化で介護市場の拡大ペースは緩やかに

高齢者_棒グラフ

みずほ銀行はこのほど「みずほ産業調査 日本産業の中期見通し—向こう5年(2023–2027年)の需給動向と求められる事業戦略—」を発表しました。同調査は国内25業種の現状と今後の見通しを紹介していますが、この中には介護業界も含まれています。そこで今回は同調査で示された介護業界の見通しについて紹介します。

年率5%前後の高い成長率を続けた介護市場だが、その伸びは鈍化傾向

調査では直近の2022年度市場動向について、前年度比4.7%増の11兆8000億円、2023年度は同じく前年度比5.0%増の12兆4000億円と比較的高い成長率を予測しています。この背景について「コロナ禍での利用控えがあるも、2022~2023年にかけて団塊世代が後期高齢者となるため、サービス利用者数の急増と単価の上昇に伴い、介護保険市場は高い伸びとなる見込み」との分析を示しています。一方、その先については2024年の介護報酬改定でそれほど高いプラス改定が期待できないとの前提に立ち、さらに後期高齢者の伸びも鈍化することから、2027年度の市場は13兆5000億円と、2022年度から年率2.7%増にとどまるとの見通しを示しています。

介護報酬のプラスを経費増で相殺される懸念

将来の介護報酬改定については厳しい見方を示している同調査では、収益環境について「介護職員の処遇改善や、中重度者や医療ニーズへの対応など質の向上を求める厳しい内容で収益環境は厳しい」と指摘しています。これは現在の介護報酬の小幅プラス改定基調が続くとしても、それらが再投資あるいは経費増に吸収される可能性が高いという見方です。また、調査では要介護1~2について国が将来的には介護保険対象外とする可能性を匂わせていることも不安材料として指摘しています。2027年度の市場規模予測にはこれらの見方が反映されていると解釈できます。

コロナ禍、物価高に加え、BCP体制整備がさらなる負担増に

同調査ではまた、2022年の介護事業者の倒産件数は、訪問・通所系事業者を中心に過去最多と予想しています。その理由については(1)コロナ禍の利用控えによる売上の減少(2)感染対策の支援の縮小(3)物価の高騰を挙げています。ご存じのように(1)については医療福祉機構の調査で介護老人福祉施設の約3割が、2022年度上半期売上高を前年同期比5%以上の減収を見込んでいることや、2021年4月に特例措置として実施された介護報酬の0.1%プラスが同年9月で打ち切られていることなどが背景にあります。そこに加え、ウクライナ紛争などに伴う光熱費を中心とする物価高が追い打ちをかけています。さらに同調査では2021年から介護事業者に感染症や災害時のBCP体制整備が義務付けられたことも、経費などを含めた新たな負担増になるとの見解を示しています。

市場の高成長期になぜ倒産件数が増加するのか?

同調査では大手事業者を主軸とした業界再編と報酬評価が厚い中重度者への取り組みの強化が進展し、他方で稼働率が低迷する中~高価格の有料老人ホームの苦戦を指摘しています。要は事業者の2極分化が進み、勝ち組が業界全体の成長率を引き上げる陰で、倒産が増加すると分析しているわけです。

慢性的な人手不足の解決の糸口は脱「お世話型」介護

その意味で業界として気になるのは、最大の懸念材料である慢性的な人手不足です。同調査では介護分野の有効求人倍率が3倍超と全産業平均の1倍強を大幅に上回る水準で推移していること、にもかかわらず団塊世代の後期高齢者入りで介護人材の需要は当面増加するのに対し、2025年度以降の現役世代の人口減に伴う就業者数急減が見込まれていることが懸念材料と指摘するにとどまっています。この辺は抜本的な解決策が見当たらない中で、国の政策も掛け声中心に終わっているため、こうした分析に止まらざるを得ないと解釈できます。

そして同調査でもやはり注目しているのが、人材不足解消への一助や介護の質向上のため国が取り組みを始めているDXの推進です。その一つがLIFE(科学的介護情報システム)の利用とそれに伴う介護アウトカムの改善実現です。これについては現場からは「手間が増えるだけ」との批判がある一方、介護の科学化による必要人材の明確化やそれに伴う介護人材需要の適正化(最小化)にも一定の期待があります。同調査ではこの流れは不可避と見ているようで「事業者は、『お世話型』の介護を脱し、アウトカム改善と生産性向上に向けて、現場のDXなどに取り組む必要がある」と強めのメッセージをあえて掲載しています。

【参考】
「みずほ産業調査 日本産業の中期見通し—向こう5年(2023–2027年)の需給動向と求められる事業戦略—」

【関連トピックス】
・2024年の報酬改定にも影響を与える介護保険制度見直しの方向性は
・2021年度特養決算 赤字施設は従来型で42.0%、ユニット型で30.5% いずれも前年より増加
・特養の「支出における人件費割合」「人件費の職種間の配分状況」が明らかに

【関連資料】
・給与アップだけでは限界!? 看護師争奪戦の実態とは
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