介護業界での人手不足の解消法の1つが、介護業界未経験の人材採用です。採用後の研修など労力や金銭的コストは必要になりますが、今後大幅な人材不足が見込まれている中では、介護就労者のすそ野を広げることも人材確保の一助になることは間違いありません。今回はそうした悩みにやや希望を与えてくれそうな調査結果を紹介したいと思います。
株式会社リクルートが運営する「HELPMAN JAPAN(ヘルプマンジャパン)」が全国の介護事業者857社ならびに「未経験で介護業界への就業・転職意向がある人」110人、「未経験で介護業界への就業・転職意向がない人」134人の合計244人に対し、介護業界についてのイメージ調査を2022年3月上旬に実施しました。
調査から、介護職未経験かつ介護業界への就業・転職意向なしと回答した人に介護業界の事実・就労実態を伝えたところ、約11%で就業意向が変化、つまり介護業界への就業・転職の意向ありとなったことが分かりました。
介護事業者の約4割「業界未経験者も積極的に採用したい」
介護事業者に対して、無資格の介護未経験者を正規職員に今後採用する可能性について尋ねた結果では、「積極的に行いたい」が38.2%、「場合によっては行いたい」が46.9%、「資格を持っていない未経験者の採用は行いたくない」が14.9%でした。概ね未経験者採用には前向きと言えます。
業界未経験者が「介護で働く」にもつイメージ「体力・精神的にキツい」
介護業界未経験の人の「介護業界への就業をためらう理由」について、上位から
「体力的にきつい仕事の多い業界だと思うから」54.5%、
「精神的にきつい仕事の多い業界だと思うから」44.7%、
「給与水準が低めの業界だと思うから」32.0%、
「個人の向き・不向きのはっきりする業界だと思うから」24.6%、
「離職率が高い業界だと思うから」22.5%
でした。業界未経験者にとって、介護業界はいわゆる「3K職場」と思われている向きがあるといえます。
「業界・仕事の実態を知る」ことで約1割が介護業界への就業に前向きに
特筆すべきは、こうした実態を伝えた後、「未経験で介護業界への就業・転職意向がない人」134人のうち約11%(15人)が「介護業界への就業・転職意向あり」に変化したということです。この点についてはサンプルサイズが少ないとの意見もあるかもしれません。しかし、約10人に1人の就業意向が変化した事実は捨てがたいものがあります。
「意向あり」に変容した人が魅力に感じた介護業界の実態については、
「介護業界で働く人の5割強は残業がないこと」40.0%、
「資格の有無にかかわらず、未経験からでもスタートできる職種であること」33.3%、
「介護技術の進化によって腰などを痛めず、身体負荷をかけずに生涯働ける環境になっていること」26,7%、
「主に身体介護を行わない、介護助手というサポート職種があること」26.7%
となりました。
「介護で働く」労働環境の魅力をもっと前面に押し出した求人メッセージを
意向が変化した人では、逆に労働環境に魅力を感じる人が多いという結果となりました。裏を返せば、介護業界に対する一般人のイメージと実態とのギャップがかなり大きいことを示しています。
やや古いデータにはなってしまいますが、日本看護協会が2015年に行った「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」で示された看護師の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設への入職動機でも、トップ5に入った選択肢の中には「超過勤務が少ないと思ったから」「夜間勤務が少ないと思ったから」の2つがランクインしているくらいです。
つまり快適な労働環境の整備を行うこと、そしてそれを求人などで適切に伝えることは未経験者、経験者ともに入職意向の喚起につながるといえそうです。施設の求人ページで訴求できているか、今一度見直してみましょう。
【関連記事】 ・介護職員等特定処遇改善加算取得施設の平均給与額 前年比7,780円増に ・コロナ禍の介護職の給与 その実態は?