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2023年4月スタートの「事業所間ケアプラン共有システム」導入のメリットは?

脱FAX

介護業界の慢性的な人手不足の解消策として、近年とりわけITやAIの導入が叫ばれています。特に介護に関しては、ケアプラン、リハビリテーション計画書など紙文書の作成ややり取りが多いことが業務負荷の要因の1つとして指摘されています。

そうした中で厚生労働省は9月6日に居宅介護支援事業所と介護サービス事業所によるケアプランなどのオンラインでのやり取りを可能にする「ケアプランデータ連携システム」を来年4月から本格的に稼働すると発表しました。今回はこの件について解説します。

厚生労働省「介護保険最新情報vol.1096」より

脱FAXの切り札となるか

このシステムは居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で毎月やり取りされる居宅サービス計画書、サービス利用票(予定・実績)などをオンラインでやり取りするもので、公益社団法人国民健康保険中央会が構築事業を進めてきました。

同システムは「ケアプランデータ連携クライアント(システム利用に申請が必要)」と「ケアプランデータ連携基盤」から構成されています。居宅介護支援事業所ではケアマネジャーが介護ソフトでケアプランを作成。これをCSVファイルで出力します。このCSVファイルと電子証明書を付けて、予め国保中央会のWebからダウンロードした「ケアプランデータ連携クライアント」のソフトを使ってファイルと証明書をアップロードし、「ケアプランデータ連携基盤」へと送信します。この際には各介護事業所に割り振られた事業所番号を使って送信先を指定します。

一方、受け手の介護サービス事業所ではケアプランデータ連携クライアントを操作して最新情報を確認することで、ケアプランデータ連携基盤を通じて各居宅介護支援事業所から送信されたケアプランデータを受信します。そこから暗号化されたケアプラン予定データファイルをダウンロード。さらにこのファイルを前述の介護ソフトに取り込むことで内容が確認できるという仕組みです。暗号化を導入することでデータセキュリティに配慮した形です。

介護サービス事業所からケアプランに基づく実績データを居宅介護支援事業所へ送信する場合は、前述の居宅介護支援事業所から介護サービス事業所へのケアプラン予定データ送信の流れで、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の役割が入れ替わるだけです。

今回のケアプランデータ連携システムは現在もシステムの改良開発が進行中で、来年2~3月にかけて一部自治体で試験運用を行い、問題がなければ4月から本格稼働の予定です。試験運用自治体の選定は今月末までに終える見込みです。

年間81万6000円のコスト削減効果を見込むが、月額の利用費用はまだ未定

気になるのは利用料金ですが、現時点では未定で「事業所の過度な負担にならないように検討を進めている」とのこと。この料金算定の参考になるのが、令和2年度老人保健健康促進事業「介護分野の生産向上に向けたICTの更なる活用に関する調査研究」で明らかにされたケアプランデータ連携システムを活用した場合の費用対効果試算です。

ちなみに同研究ではこうしたシステムの活用で、人件費・印刷費・郵送費・交通費・通信費(FAX)を総合して年間約81万6000円のコスト削減効果が見込めると試算しています。ここまで具体的に試算ができている以上、現時点でほぼ料金は決まっているものと思われます。厚生労働省ではコスト削減による相乗効果として▽介護人材の新規確保▽介護人材の定着率向上▽事業所環境の維持費・改善費の割当額の増加、などが見込めるとも指摘しています。

もっとも試算による直接的なコスト効果は限定的と見えるかもしれません。また、居宅介護支援事業所、介護サービス事業所とも厚生労働省のケアプラン標準仕様に準拠した介護ソフトをインストールしたWindows10以降のOS搭載PCが必要なほか、介護給付費請求に使用する電子証明書も準備が必要です。

業務負荷が減らせることで、サービスの質が向上させられるかどうか、今後の注目ポイントと言えそうです。

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