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なぜ給与が低いクリニックに看護師の応募が集まるのか~第23回医療経済実態調査から~

導入後の効果

10月5日に開催された厚生労働省の中央社会医療保険協議会(中医協)総会で報告された、「第23回医療経済実態調査」で明らかになった、医療機関における看護職員の給与実態について今回は解説します

半数以上のクリニックにおいて、看護職員の給与は全産業平均を下回る

看護職員の不足は介護業界が慢性的に頭を悩ます人材不足問題の1つ。その大きな要因に医療機関との競合があります。令和3年に実施された「第23回医療経済実態調査」によると、医療機関における常勤看護職員の一月当たりの平均給与について、一般病院で40.4万円、経営主体ごとの平均給与では、国立が43.9万円、公立が47.3万円、医療法人が36.9万円でした。そして、介護施設において最も採用競合となりうる、一般診療所(クリニック)で32.2万円となりました。厚生労働省は令和2年年度賃金構造基礎統計調査の全産業平均月給40.6万円と比較し、「一般診療所では半数以上の施設で全産業平均を下回っている」と中医協で報告しています。

同調査の一般診療所での回答施設771施設のうち、常勤看護職員の一月の平均給与を25万円以下を最低値として5万円刻みで分類すると、ボリュームゾーンは最低値の25万円以下の195施設で、平均給与が上がるごとに右肩下がりでこの数は減少しています。これは、一般診療所の常勤看護職員の給与は全体としては32.2万円よりも低い施設が多く、一部の好待遇の施設の平均給与で全体平均を辛うじて引き上げているといえます。

クリニックを大きく上回る介護老人福祉施設の平均給与 それでも採用に苦戦する背景は

介護業界関係者の中には、この医療経済実態調査の看護職員の平均給与水準を見て、「あれ?」と思った人がいるのではないでしょうか?

というのも2020年の介護事業経営実態調査によると、介護業界の常勤看護職員の月給は訪問看護が44万368円、介護老人福祉施設が42万2652円、介護老人保健施設が44万8962円です。給与面だけを見れば看護職にとって医療機関で働くよりも介護施設で働く方が魅力的です。しかしながら、看護職員の採用に苦戦している関係者は多いはずです。なぜでしょう?

看護職の人材業界関係者などに話を聞くと、「医療機関で勤務する看護職員は全体としては減少傾向にあるものの、無床診療所、いわゆるクリニック勤務希望者の数は常にある程度安定している」との話はよく聞きます。そのヒントは「看護職の約9割が女性」というところにあります。女性の場合は妊娠・出産、結婚、育児というライフステージの変化で働き方に影響が出やすいのが特徴です。実際、この3つは女性看護職の離職理由のトップ3とも重なります。そしてこの3つの理由で離職した女性看護職が再就職時に重視する条件として、給与のほかに、通勤の利便性や勤務時間、特に夜勤が無いことが大きな要因となっているようです。

仕事、家事、育児の両立を考えると、自宅、子供の保育園や学校、勤務地が近接していることが望ましく、「自転車通勤が可能」という条件を提示することもよくあるそうです。無床クリニックは全国で10万軒(2020年時点で10万2612軒)を超えていますから、自宅の近隣で勤務先を見つけることは比較的容易です。さらに女性看護職の中でも特に配偶者にも一定の収入がある場合、給与より通勤利便性の重視傾向は一層強くなります。

クリニックに応募が集まるもう1つの理由は勤務時間、特に夜勤がないということ。介護老人福祉施設などでは夜勤、あるいは夜間のオンコールは付き物です。しかも嘱託医が非常勤である場合がほとんどですから、重大な責任を伴う医学的判断のゲートキーパーは当然ながら看護職になり、夜間帯の医療判断の必要は常に存在します。

労働環境、特に夜勤などの勤務体系を変えることで、転職の懸念を払しょく

介護施設関係者が看護職員の確保を考える際には、給与という分かりやすい指標だけでなく、看護職員がライフステージに応じて公私でどのような置かれやすい環境を想定し、それに向けて労働環境を整備するといった努力が必要とも言えます。通勤の利便性は変えることができない代わりに、「夜勤を無くす」「オンコールを外部化する」など勤務時間の条件は環境の整備で変えることが可能です。今後、看護職は医療業界でも介護業界でも不足することが確実視されています。今から一歩先んじて手を打つことが肝要です。

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