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新型コロナ 高齢者施設のクラスターが10月後半から増加傾向に

看護師と車椅子に乗っている男性

7月上旬から始まり、ピーク時には1日の新規陽性者報告数が25万人を超えた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の第7波は、すでに峠を越しましたが、10月に入ってからは1日の新規陽性者報告数が3~4万人レベルで下げ止まっています。下げ止まりは、言うまでもなく次の波への前兆とも考えられます。
そうした中で厚生労働省は10月26日、高齢者施設でのクラスター発生状況を公表しました。これまでの高齢者施設でのクラスター発生累計件数は1万4007件。10月24日午前0時までの直近1週間の報告件数は220件で、前週の162件から3週間ぶりに増加しました。今回はこの件について解説したいと思います。

まず、今回の高齢者施設でのクラスター増加は、全国的に新規陽性者報告数が微増傾向にあることが要因と言えるでしょう。とりわけ、新型コロナは若年者では無症候・軽症のことが多いため、高齢者施設でのクラスターの増加は市中感染の増加兆候を反映していると言えなくもありません。

ひとたび感染者が発生すれば一気に感染する可能性が高い高齢者施設

高齢者施設の場合、他の施設や業界に比べてクラスターが発生しやすい環境にあるもの事実です。何よりも食事や入浴の介助という介護業務の性格上、介護職員と高齢者の間でいわゆる3密回避はほぼ不可能です。また、入所系施設の場合は、医療機関と違い、感染者や濃厚接触者の部屋を移動させるゾーニングが困難な場合も多く、食堂と居室の行き来が自由で食堂に集合して食事することもあります。この状況ではひとたび感染者が発生すれば、施設内で一気に感染が拡大する可能性が高いのが現実です。

高齢者施設でクラスターが発生しやすい要因はもう一つあります。これは従来から言われている介護業界の人手不足です。ほとんどの施設では勤務シフトをギリギリで組んでいる状況にあり、介護職員は新型コロナが疑われるような症状があっても、軽度ならば業務についてしまう場合が少なくありません。この結果、施設内でクラスターが起きてしまうという不幸な事例が実際にも報告されています。

“職員発”の感染を減らすカギは変わらず「手洗い」「マスク」「ワクチン接種」

入所系施設の場合は高齢者自身が施設内に感染を持ち込む可能性よりも、職員が外部から持ち込んでいると考えるほうが自然でしょう。時には複数の施設でダブルワークをしている職員が双方の施設に感染を持ち込み、複数施設間でクラスターが発生することさえあります。

このような状況を考えれば、クラスターの発生防止のためにはまず職員の感染防止対策の徹底が何よりも優先されます。ただし、現在のオミクロン株は、感染力は強いものの、高齢者も含め全体として重症化率が低いことを考えると、職員に対して施設外での会食などを控えるように一律に制限するのは、やや私権制限をし過ぎの感はあります。職員の手洗い励行、マスク着用、ワクチン接種という「3種の神器」の徹底が現時点でも最善の策です。

前述の会食に関しては、少なくとも施設内の休憩場所で複数人がマスクを外して食事や会話することは控えるのが現在でも賢明です。また、オミクロン株のように感染力が強い変異株は、過去のウイルス株と比べ、飛沫感染とりわけマイクロ飛沫感染のリスクはより高いと言えるので、施設の換気も今まで以上に気を付ける必要があります。

もう一つの施設への感染持ち込みルートとして指摘されるのが、面会のため来訪する入所者の家族や知人ですが、やはり重症化率・致死率が低下しているオミクロン株が主流の現在、一律に制限することは入所者の精神衛生の観点からも得策とは言えません。面会時の手指所毒、マスク着用の徹底をお願いすることにとどめておくのが望ましいでしょう。

通院先の医療機関内での感染リスク 対策としてオンライン診療なども

限定的とはいえ入所系施設の入所者が感染を持ち込む機会があるとするならば、施設外の医療機関への通院時の医療機関内での感染が考えられます。この場合は通院介助を行う職員も同様のリスクがあります。もちろん医療機関側も厳重な対策をしていますが、もともと感染が疑われる人が訪れる可能性が最も高い場所であるため、ゼロリスクにはできません。
ただし、現在浸透し始めているオンライン診療の利用が可能な場合は、施設内外の行き来、すなわち感染リスクのある機会を減らすことはできます。

いずれにせよ高齢者施設では、利用者、面会者、職員の3者の権利の過度な制限は控えたうえで、考えられうる感染リスクを可能な限り封じていくことが大規模なクラスターを避けるコツとも言えます。

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