消極的な理由「もっと何かできたのではないかと後悔するから」など
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センターが、介護職員が看取りをすることに関する調査研究の内容の一部を公開しました。同センターの自立促進と精神保健研究チームが、神奈川県内の特別養護老人ホーム8施設の常勤介護職員245名を対象に郵送調査を行ったところ、介護職員の76.4%が看取りケアに積極的な態度をもち、23.6%が消極的な態度をもっていたことが分かりました。
看取りケアに積極的に関わりたいと思う理由は、多い順に「自分を成長させてくれるから(63.6%)」、「生死に関わることは尊い営みであるから(60.1%)」、「入所者の人生と深く関わることができるから(44.1%)」、積極的に関わりたいと思わない理由は、「もっと何かできたのではないかと後悔するから(54.8%)」、「うまく看取り介護ができるか自信がないから(47.6%)」、「人が亡くなるところを見たくないから(38.1%)」、「看取り介護にむなしさを感じるから(26.2%)」でした。また、過去1年間に入所者から「死にたい」と言われたことがある人は81.2%、入所者から「死にたくない、死ぬのが怖い」と言われたことがある人は21.5%でした。
夜勤の回数や相談できる人の有無が看取りケアの積極的態度に関与
研究チームはこの結果は、看取りケアのスキルに対する自信のなさや後悔するかもしれないという予知、虚無感を表しており、このような看取りケアに関わる障害を克服するためには、介護職員への教育が重要、としています。さらに、看取りケアに対する積極的態度の関連要因を検討したところ、月当たりの夜勤の回数が少ないこと、「死にたくない」という入所者に接する機会が多いこと、職場に仕事の悩みを相談できる人がいることが関連していた、としています。
2025年には介護職員が約38万人不足すると推定されています。介護職員の身体的・精神的負担を軽減し離職を減らすことは、このような需給格差を解消することにつながるだけでなく、介護の質の向上にも寄与します。同センターの別の研究では、介護職員の64.6%が精神的健康が良くない状態にあり、良好な精神的健康には看取りケアに対する積極的な態度や良好な職場環境、人への信頼感が関連していることも示されています。
研究グループでは、入所者が「死にたくない(=生きたい)」と言うのを聞いて、介護職員が介護する側とされる側の共通点(=どちらも死を免れない存在である)を理解し、より思いやりを持ち、ケアの意味を考え、看取りケアに前向きになったのではないか、との仮説に基づき、今後の詳細な研究で明らかにしたい、としています。
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 研究トピックス「介護職員が看取りをすることに関する調査研究」
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