グループ17社が破産したケースも
東京商工リサーチが10月に公表した2022年1-9月の「老人福祉・介護事業」倒産(負債1,000万円以上)は100件で、前年同期(51件)の2倍に急増したことが分かりました。倒産急増の背景には、大規模な連鎖倒産の発生があり、機能訓練型デイサービスを運営していたグループ17社が破産したケースでは、M&Aや福祉貸付資金の利用に加え、投資家からの資金調達などで業容拡大を進めていたものの、コロナ禍で施設利用者数が減少し、介護報酬の落ち込みから事業継続が困難となっていました。また、利用者の減少や介護費用とは別の「かかり増し経費」も増加し、新型コロナ倒産も43件発生。介護事業者倒産の4割超(構成比43.0%)を占め、コロナ禍の影響が深刻さを増してきています。
業種別では、連鎖倒産が発生したデイサービスを含む「通所・短期入所介護事業」が45件(前年同期13件)と急増。連鎖倒産を除いても大幅に増えており、大手事業者との競争や物価高などの運営コスト増大が影響しています。次いで、「訪問介護」が36件(同30件)と増加。ヘルパー不足や感染拡大期の利用控えなどが響いた、としています。また、「有料老人ホーム」も10件(同2件)と急増。投資と収益のバランスが崩れ、コロナ禍の業績回復の遅れが響いています。都道府県別では、神奈川の14件(前年同期2件)が最も多く東京都の11件(同9件)、大阪府の8件(同6件)、千葉県(同2件)と福岡県(同2件)が各6件と続きました。
同社では「現在の状況が続くと、2022年の倒産は2020年の118件を抜き、年間最多の更新が現実味を帯びている」と分析。介護のデジタル化など、コスト削減への取り組みも必要だが、資金繰りが悪化している事業者には新たな投資は難しく、また、原油高、円安といった想定外の事態も重なり、介護用品、光熱費などの運営コストが大幅に上昇するなど、新たな負担も生じていることから、コスト削減に向けた支援が急務である、としています。
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