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シリーズ 社会福祉法人の経営適正化に向けて(1)経営が悪化している法人では何がおこっているのか<daily news pickup 11月28日>

約4分の1の社会福祉法人が赤字経営を強いられている

福祉医療機構(WAM)が公表した「2020年度(令和2年度)社会福祉法人の経営状況について」によると、2020年度における社会福祉法人の赤字法人割合は25.9%と、一定数の法人が経営が厳しい状況になっていることが分かりました。社会福祉法人の経営適正化に向けて課題を整理した東京都の検討会の報告書をもとに、シリーズで紹介していきます。その初回は、社会福祉法人の経営が不安定になる要因について解説していきます。

福祉医療機構(WAM)「2020年度(令和2年度)社会福祉法人の経営状況について」をもとにドクターメイトで作成

報告書では経営適正化ができていない社会福祉法人が抱える課題として、「組織管理」「事業経営」「財務管理」「会計・経理」「利用者サービス」「職員管理」の6点を挙げ、モデルケースを記載しています。

組織管理
・理事長が独裁的であり、法人役員も理事長と関係が深い者が多く、理事会が形骸化し、監事機能も低下している。また、理事会が、適正な意思決定能力や長期的経営視点を欠いている。
・崇高な理念により社会福祉法人を設立した創設者である理事長が死亡し、後継者が育っていなかったため、法人や事業の運営が混乱している。
・法人設立時に理事・監事を選任後、2年を経過したのに再任手続が行われなかったため、一時的に役員全員が失職となってしまっている。
・社会福祉法人設立時に、創設者が自己の資産(土地、建物、資金等)を寄附により提供したため、創設者やその家族が理事長や理事、施設長等に就任した結果、「法人の資産」と「個人の資産・債権」を混同する等、法人を私物化している。

事業経営
・施設の放漫経営又は計画性のない改築工事により、経営が悪化している。
・社会福祉法人設立時に、利用者見込みを措置制度時と同様な想定で過大に見積り、設備投資した。しかし、利用者数が計画数まで届かなかったため、事業収支が均衡せず、事業存続自体が困難になっている。
・理事長及び理事が、事業運営を施設長に一任したが、施設長が、採算を度外視した人員配置、備品購入を行う等の放漫経営を行ったため、運転資金がひっ迫し、経営が悪化した。

財務管理
・予定されていた寄附が不履行になったため、施設整備に伴う借入金等が計画どおりに償還できず、また運営資金がひっ迫し、建物管理委託費等が支払遅延となっている。
・理事長が、企業等の別の団体の責任者と兼務しており、その企業が経営悪化したため、社会福祉法人の資金が流用されている。
・理事長が、資金運用のため、法人資金を外部流出させている。
・基本財産を元本保証のない外国債で運用している。

会計・経理
・会計処理が正確にできておらず、決算数値が合わない、使途不明金があるなどの状態が、数年間続いている。
・社会福祉法人設立母体のNPO法人との会計処理が不明確になっている。
・役員の関連会社と、特命等により不透明な業務委託契約を結んでいる。

利用者サービス
・施設で、職員による利用者虐待、身体拘束等の不適切な行為が行われている。
・利用者・家族からの苦情が多く、利用者事敀やヒヤリハットが頻繁に発生している。

職員管理
・職員の利用者支援技術が未熟で、また研修体制も不十分なため、ヒヤリハット事例が度々発生している。
・施設長がワンマンであり、職員へのパワーハラスメント等により、職員の離職率も高い。
・職員の採用、育成、任用に客観的なルールがなく、理事長の一存で決定している。

決算書を読み解き、経営課題の「早期発見/早期解決」へ

こうした経営課題を見つけるやり方として、欠かせないのが財務分析です。決算書を読み解けば、法人や施設が抱える課題を「早期発見」でき、適切な打ち手を探ることができます。次回では、決算書から計算できる経営分析の参考指標を解説していきます。

<参考資料>

東京都社会福祉法人経営適正化検討会「社会福祉法人の経営適正化に向けて」

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