全国老施協は、令和4年度老人保健健康増進等事業「小規模特養の経営状況に関する調査研究事業」を実施。その結果について報告書をとりまとめ公表しました。
小規模特養は、介護保険法施行前後に人口の少ない離島や中山間地域等においても、介護保険サービスが行き届くよう、特例的に設置が認められた定員30名の小規模な施設で、平成30年3月31日までに指定を受けた小規模特養には、歴史的経緯と特殊事情に配慮した介護報酬(経過的小規模介護福祉施設サービス費)が設定されていますが、会保障審議会介護給付費分科会の審議報告では「通常の基本報酬との統合に向けて検討していくべき」と示されています。
2021年度決算におけるサービス活動増減差額では、「法人全体」「拠点」「施設」のいずれにおいても小規模特養は地域密着型特養よりもサービス活動増減差額の平均金額が少なくなっていました。具体的には、法人全体では、小規模特養の平均が約3810万円に対し、地域密着型特養では約6928万円、施設では小規模特養の平均が約482万円に対し、地域密着型特養では約906万円でした。
小規模特養の地域性・特殊事情
同事業ではヒアリング調査も行っており、小規模特養が抱える様々な課題が浮き彫りになっています。
人材面では、多くの施設では採用活動を実施しても人が集まらないという立地面の課題や、専門職種の確保が困難で、特に、離島や過疎地域では新卒者について何年も採用できていないとの意見がありました。そのため職員の高齢化が進み、高齢化に伴う人件費率の上昇や、退職者が出た際の夜勤体制等への影響が課題として上がりました。
そのほかに、多くの施設では開設してから20~30年が経過していることから、建物の老朽化が進んでおり、それに伴う修繕費が増加。経営に影響があるほか、 一部の施設では行政から土地や建物も無償譲渡されており、増・減床について は行うことが難しいとの意見が挙がりました。
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会「小規模特養の経営状況に関する調査研究事業 報告書」より
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