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物価・水道光熱費の高騰 介護施設・事業所の約3割「このままでは事業廃止や倒産に至る可能性」

水道光熱費

ウクライナに対するロシアの侵略に端を発した国際情勢の急変により、全世界的な燃料費高騰とそれに伴う物価高が市民生活を直撃しています。日本も例外ではなく、物価・光熱水費等の高騰に見舞われ、各業界で値上げが発生しています。医療・介護業界の場合、収益の源泉が診療報酬や介護報酬といった公定価格であるため、コスト増を価格転嫁することができません。こうした中で全国介護事業者協議会、介護人材政策研究会、日本在宅介護協会の3団体は共同で「物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査」を実施し、その結果をこのほど公表しました。今回はこの調査結果の内容を紹介します。

調査は今年3月1~24日、3団体の会員を中心とする介護施設・事業所にWebで行い、1277施設・事業所が回答を寄せています。回答施設・事業所のサービス種別の属性は、訪問介護が31.56%、通所介護が20.36%、有料老人ホーム・サ高住が10.88%、グループホーム10.65%、特別養護老人ホームと小規模多機能型居宅介護がともに5.01%、訪問看護3.45%などとなっています。

コスト増への対応 昇給・賞与見送りや人員削減・新規採用停止など人材面への悪影響も

「2021年10月~2022年1月」と「2022年10月~2023年1月」を比較した、物価・光熱水費などの高騰の影響については、「大いにあった」が50.74%、「あった」が35.16%、「ややあった」が5.32%と、9割以上の施設・事業所に影響が及んでいます。このうち最も顕著に影響を及ぼす可能性が指摘されている、電気料金の増加率については、「11~20%」が21.80%で最多。以下は順に「21~30%」が18.11%、「51%以上」が16.91%、「6~10%」が13.13%、「31~40%」が12.62%と続きます。

サービス種別で見ると、通所介護、訪問介護では増加率が30%台までが多いのに対し、特別養護老人ホームや有料老人ホーム・サ高住では増加率が51%以上と回答した施設・事業所の割合が4割以上に達し、より深刻な影響を受けています。その他に大きな影響が出ている項目を聞いた結果、ガス代が5~95%、ガソリン・車両費が3~140%、消耗品(介護用品・衛生用品)費が5~98%、それぞれ増加したとの回答が得られています。

このコスト増加へ対応について(複数回答)、「節電や物品の節約等」が92.62%と最も多かったものの、一方で「預貯金等の取り崩し」が47.38%、「昇給や賞与等の減額/見送り」が27.30%、「人員削減や新規採用の停止等」が16.22%などで、人材面への悪影響が大きくなっていることうかがえます。

物価・光熱水費等の高騰を受けながら、今後の事業継続についてどう感じているかを聞いた結果は、「影響はあるが、何とかやりくりして事業の継続が可能である」との回答が64.29%と最多だった一方で、「このままでは、数年で事業の廃止や倒産に至る可能性がある」が27.38%、「事業の廃止や倒産の危機に直面している」が0.43%と、約3割の施設・事業所で事業廃止や倒産の危機に直面していることが明らかになりました。

現在の物価高の最大の原因となっているウクライナでの戦争については、北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長が「数年間続くことを我々は覚悟しなければならない」と述べていることから、今後経営危機に直面する施設・事業所は増加するでしょう。

物価・光熱水費等の高騰や関連する交付金についての自由記述意見を以下に紹介します。
• 介護事業者は価格転嫁が出来ないので、介護報酬改定では本体単位に反映して頂きたい。できれば現在3段階になっている介護職員処遇改善加算も廃止して本体単位に組み込んで頂きたい。介護業界もスタッフの賃上げを大々的に発表できるよう、国が責任を持って法改定する義務がある。
• ガソリン代だけでなく他の高騰分の補助も検討をしていただき、訪問系の在宅サービスにも均一に届くようにしていただきたい。
• 自治体によって、交付金の対象事業所、申請方法、金額等が異なるため、今後、広く行き渡るよう対象サービスを拡大し、統一していただきたい。
• 支出のすべてをまかなえたわけではないが、補助金の交付は大変ありがたかった。物価や光熱水費の高騰により、取引業者のほとんどから値上げの依頼や交渉があり、応じざるを得ない。
• 様々な値上げで介護職員の給与をアップさせることができない。
• 市からの食費補助のみで、問い合わせるが県は一切ない。光熱費の補助がない。
• 電気ガス料金合わせて100万円以上の持ち出しとなってしまった。交付金の申請要件として2023年4月以降に食費・居住費の変更をしないことが、申請の要件としてあったため、食費額を変更することが出来なかった。
• 金額としては、実際の負担増の半額程度に留まっており、交付金を受け取ってもなお多額の収支悪化の状態が続いています。

いずれにせよ今後の政府のより本格的な対応が待たれるところですが、地方自治体では小出しに対応を変更していることがあるので、この辺は各施設・事業所ともまめな情報チェックが必要でしょう。

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