
厚生労働省が公表した、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく令和6年度の対応状況等に関する調査結果から、特養を中心とした入所系施設を中心にシリーズで調査結果を解説します。
虐待者 39歳以下ならびに男性が相対的に多く
養介護施設従事者等による虐待において特定された虐待者1,409人のうち、年齢については「30~39歳」が17.9%、「50~59歳」が17.5%、「40~49歳」が15.8%、「60歳以上」11.8%と、全年代で虐待者が発生していることが分かりました。また、虐待者の男女別年齢を介護従事者全体と比較すると、男性・女性とも「30歳未満」及び「30~39歳」の虐待者の割合が、相対的に多い結果となりました。


虐待者の性別は、「男性」が53.5%、「女性」が43.6%で、介護従事者全体(介護労働実態調査)に占める男性の割合が23.6%であるのに比して、虐待者に占める男性の割合が53.5%であることを踏まえると、虐待者は相対的に男性の割合が高いといえます。


職種については、「介護職」が81.3%、「看護職」が7.9%、「施設長」が2.6%、「管理職」が2.4%でした。


介護度が高くなるほど「身体的虐待」「介護等放棄」が増加
被虐待高齢者の介護度について、「要介護 4」が 29.0%と最も多く、次いで「要介護 5」が 23.4%、「要介護 3」が 21.9%となり、合わせて「要介護 3 以上」が 74.3%を占めています。
入所系施設における被虐待高齢者の「要介護度」と「虐待種別」の関係をみると、「要介護4」や「要介護5」では「身体的虐待」「介護等放棄」を受けている割合が高く、「要介護2」や「要介護3」では「心理的虐待」を受けている割合が高い傾向がみられました。また、「自立/要支援/要介護1」や「要介護2」では「経済的虐待」を受けている割合が高い傾向がみられました。

発生要因「職員個人の課題」上位を占める
虐待発生要因について、「虐待を行った職員の課題」区分に含まれる項目が上位を占め、同区分の「職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足」が75.9%で最も多く、次いで「職員の倫理観・理念の欠如」が64.3%、「職員のストレス・感情コントロール」が62.5%、「職員の性格や資質の問題」が62.0%、続いて「組織運営上の課題」区分内の「職員の指導管理体制が不十分」が61.9%となりました。

厚生労働省「令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」
<シリーズ 全記事はこちらから>
高齢者施設における虐待実態 最新データ解説(1)相談・通報件数、虐待件数
高齢者施設における虐待実態 最新データ解説(3)被虐待高齢者の状況、認知症・寝たきり度との関連
高齢者施設における虐待実態 最新データ解説(4)虐待を行った養介護施設従事者等(虐待者)の状況
