
厚生労働省が公表した、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく令和6年度の対応状況等に関する調査結果から、特養を中心とした入所系施設を中心にシリーズで調査結果を解説します。
被虐待高齢者 7割が女性、80歳以上が8割を占める
被虐待高齢者の性別については、「男性」が27.4%、「女性」が72.4%と、全体の約7割が女性、年齢については、「85~89歳」が23.2%と最も多く、次いで「90~94歳」が22.7%、「80~84歳」が16.0%、「95~99歳」が12.9%で、80歳以上が8割を占めていました。


介護度が高くなるほど「身体的虐待」「介護等放棄」が増加
被虐待高齢者の介護度について、「要介護 4」が 29.0%と最も多く、次いで「要介護 5」が 23.4%、「要介護 3」が 21.9%となり、合わせて「要介護 3 以上」が 74.3%を占めています。
入所系施設における被虐待高齢者の「要介護度」と「虐待種別」の関係をみると、「要介護4」や「要介護5」では「身体的虐待」「介護等放棄」を受けている割合が高く、「要介護2」や「要介護3」では「心理的虐待」を受けている割合が高い傾向がみられました。また、「自立/要支援/要介護1」や「要介護2」では「経済的虐待」を受けている割合が高い傾向がみられました。


認知症日常生活自立度 高くなるほど「身体的虐待」「介護等放棄」が増加
被虐待高齢者の認知症の程度について、日常生活自立度Ⅱ以上の者は 75.3%で。「認知症の有無が不明」を除いた場合、被虐待高齢者の約9割が該当することがわかりました。
入所系施設における被虐待高齢者の「認知症の程度」と「虐待種別」の関係では、被虐待高齢者の認知症日常生活自立度「Ⅲ」や「Ⅳ/M」では、「身体的虐待」「介護等放棄」を受けている割合が高く、「なし/自立/Ⅰ」や「Ⅱ」では「心理的虐待」「経済的虐待」を受けている割合が高い傾向がみられました。
「認知症の程度」と「虐待の程度(深刻度)」の関係では、「なし/自立/Ⅰ」では全体に比して「2(中度)」の割合が高くなっていました。



半数以上が日常生活自立度(寝たきり度)A以上
入所系施設における被虐待高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)A以上は 56.5%で、「虐待種別」と の関係をみると、日常生活自立度(寝たきり度)が「C」では「介護等放棄」を受けている割合が全体に比して高く、「自立/J」では「経済的虐待」を受けている割合が全体的に高い傾向が見られました。


厚生労働省「令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」
<シリーズ 全記事はこちらから>
高齢者施設における虐待実態 最新データ解説(1)相談・通報件数、虐待件数
高齢者施設における虐待実態 最新データ解説(3)被虐待高齢者の状況、認知症・寝たきり度との関連
高齢者施設における虐待実態 最新データ解説(4)虐待を行った養介護施設従事者等(虐待者)の状況
