
公益社団法人全国老人福祉施設協議会は、2025年9~10月にかけて同会会員の特別養護老人ホームを対象に「特別養護老人ホームにおける食事サービス調査」を実施。その調査結果を公開しました。
9割以上の特養で食材料費高騰に対し、多岐にわたる取り組みを実施
食材料費高騰に対し、何らかの取り組みを行っている特養は92.5%となりました。取り組み内容については、「コスト対応」「委託先」「食材・調理法」「利用者負担増」など多岐にわたっています。その一例をご紹介します。

コスト対応
・食費の値上げ分を施設負担にした。
・お米代として10㎏あた2276円増額した。
・行事食が食費内で収まらず、施設で不足金額を負担する回数が増えた。
・様々工夫しても食材だけでなく、消耗品や食器類、機器修繕費などもすべてが高騰しているので、抑える事に限界を感じる。
委託先
・同等食品の物をすべての業者と見比べ一番安価の業者へ依頼を移行した。
・野菜等発注後に通常より高価になる場合は業者に連絡もらうようにし、食材の変更を行うようにした。
・令和7年1月に完全委託の給食会社から撤退の申出を受け、クックチルを使った委託、直営でニュークックチル 導入への変更を余儀なくされた。
食材、調理法
・生野菜から冷凍野菜への変更、米は国産米→国産ブレンド米→外国産米へ安価なものへ変更、魚や肉の使用頻度を減らし、その分卵や大豆製品の使用頻度を増やした。
・朝の惣菜の高いものは内容を変える、量の見直し。
・以前よりも一品あたりの量が少なくなり、食材の種類も減ったように感じる。マヨネーズ等少量でエネルギーの 高いものの使用頻度が増えた。
・朝食メニューでは禁食をあまり作らなくてよいメニューを採用。
・主菜で付け合わせがあるものに偏らない。偏りがでても、茹でる、蒸すが多くならないようにしている。
・生野菜の場合大きさによって発注量より多い場合は、残った物をみそ汁の具として使用したり、選択メニューで残ってしまった食材は、ミキサー食や代替え使用してフードロスを防いでいる
・安価な白身魚に偏り、カロリーUPに調理法を工夫すると脂肪エネルギー比が高くなり困っている。
利用者負担ほか
・常備菜など嗜好に伴う物は個人負担にした。
・アレルギー、医者の指示以外の好き嫌いによる代替品の提供は有料とした。
・朝食の牛乳を献立に組み込むことをやめ、希望者は個人負担で飲用とした。
・余ったパンやおやつを職員に半額程度で販売し始めた。
使用頻度「果物」「生野菜」は減少、「冷凍野菜」「冷凍食品」増加
食材の使用頻度について、減少したのは「果物」「生野菜」「魚類」「菓子類」などで、増加したのは「冷凍野菜」「冷凍書品」「大豆食品」「麺類」などとなりました。また、食材の銘柄または代替品への変更については「魚類」が最も多く、次いで「冷凍野菜」「生野菜」「冷凍食品」と続きました。


利用者家族「説明した」は26.8%にとどまり、クレームの温床となる可能性も
こうした食材料費高騰に対しの取り組みについて、利用者家族に「説明した」特養は26.8%にとどまっており、調査では利用者や利用者家族から寄せられたネガティブな意見を記載しています。

・もう少しお金を払ってもいいから日々の食事を良くしてほしい。
・肉や魚が小さい、もう少し食べたい。缶詰でもいいからもっと果物を食べたい。
・冷凍切身魚を使用して調理したものが、魚の種類によって生臭い。
・嗜好調査でいただく意見で厳しい言葉が多い。完調品が多く、味についても不評なものが多い。
・おやつのどら焼きのサイズが小さいと言われた。
・みそ汁のだしの効きが薄く感じる。お茶は味も香りも以前より下がった。手作りの料理がほとんど出ない…等の意見ある。
・食費とは別に常備菜などの個人負担が増えた。
・以前よりも物足りない感じであると言われた利用者も増えてきている。
77.1%の特養「これ以上質を維持する工夫の余地がない」
食材料費が更に高騰した際の質を維持する余地の有無について、77.1%の特養「これ以上質を維持する工夫の余地がない」と回答、厳しい状況にあることが分かりました。
公益社団法人全国老人福祉施設協議会 「特別養護老人ホームにおける食事サービス調査」



