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【緊急報告】令和8年熊本地震 熊本県内の高齢者施設の状況は? 高齢者施設が”備えるべきこと”とは? 

2026年7月28日、熊本県内陸を震源とする推定マグニチュード7.1、最大震度7の「令和8年熊本地震」が発生しました。被害が特に大きいのは、熊本県南部の宇城市、八代市、氷川町周辺と言われています。現在の高齢者施設の被害状況について解説するとともに、今回の被災の特徴とその対応策についても簡単に触れておきます。

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8月1日時点で高齢者施設785施設が被災

まず、厚生労働省に8月1日17時時点で集約された高齢者施設の被害状況は、熊本県が785施設、福岡県、長崎県、鹿児島県が各1施設です。発災当日の28日24時時点での高齢者施設の被害は熊本県でわずか13施設でしたが、各地から徐々に被害情報が集約され、現時点でここまで膨れ上がっています。もっとも発災から5日が経過し、通信状態も改善していることから、おそらくこれ以上、被害報告が増する可能性は低いと思われます。

被害の地域分布は、熊本市が256施設、八代市が175施設、宇城市 が66施設、宇土市が40施設、甲佐町が29施設、益城町が21施設、御船町が19施設、上天草市が15施設、美里町、氷川町が各13施設、玉名市、合志市、菊陽町が各12施設、天草市、山都町が各11施設などです。今回の地震の震源は宇城市南部で、被害が多い地域は熊本市の東側と南側が中心で特に被害が大きいのは前述のように八代市周辺です。

被災状況別の内訳(同一施設で重複あり)は、建物被害が645施設、停電が53施設、断水が282施設、ガス停止が134施設です。建物被害は簡単には回復しようがないため、目下の課題は電気、水道、ガスといったライフライン関連の復旧です。

このうちもっとも復旧が早いと言われているのは電気で、内訳の中でも最も少なくなっていますが、現在も停電中の53施設の地域分布は、八代市が26施設、宇城市が12施設、益城町、美里町が各5施設、氷川町が2施設で、この熊本県南部の2市3町で9割以上を占めています。

また、建物被害に次いで多い断水は、八代市が127施設、宇城市が49施設、宇土市が23施設、氷川町が10施設などとなっており、この3市1町で全体の約4分の3を占めています。

このようにしてみると、やはり互いに境界線を接している八代市、宇城市、氷川町に被害が集中しています。これは今回の震源が宇城市南部の地下10kmという極めて浅い地点で起きているため、その周辺で大きな揺れによる被害が生じているためと考えられます。そして当然ながらこの2市1町で被害を受けた高齢者施設の中には、停電・断水のダブルパンチに見舞われている施設が少なからずあることが想定されます。

停電・断水という状況で熱中症のリスクが増大

にもかかわらず、今は真夏です。日本国内の夏の暑さは、温暖化の影響で以前よりも過酷なものになっており、宇城市、八代市、氷川町周辺の気温は連日35℃以上です。

この状況を考えた場合、真っ先に考えなければならないのが熱中症対策です。実際、先頃、氷川町で車中泊をしていた70代の女性が熱中症の疑いで死亡したことを熊本県が発表しました。この事例は今回の地震で初めての災害関連死となる可能性があります。そして停電・断水という状況に置かれた高齢者施設では、エアコンが使えない&飲用水ですら十分に確保できない状況だと考えられ、同様に熱中症による入所者の死亡リスクがあると言えます。

約半数の高齢者施設「常用・非常用自家発電設備がない」

「自家発電機や断水に備えた給水設備があれば何とかしのげるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、厚生労働省の委託(令和元年度老人保健健康増進等事業)として日本総合研究所が実施した、高齢者施設・事業所を対象にした非常用自家発電設備の整備状況調査では、回答施設の46.5%に常用・非常用自家発電設備がないことが明らかになっています。

また、非常用自家発電設備を備えている施設で最も採用されている発電設備は、軽油などを燃料とするディーゼルエンジン型(64.5%)で、24時間以上の稼働を想定している施設・事業所はわずか25.1%に過ぎませんでした。

ディーゼルエンジン型の非常用自家発電設備を有している施設では、そのための燃料を数時間稼働分しか備蓄していないことも少なくありません。また、追加で燃料を調達しようとしても、被災地域では困難を伴います。たとえば現在の熊本県では、すでにガソリンスタンドで給油を求める車が長蛇の列をなしていることが報じられていますし、ホームセンターなどでは被災により営業休止に追い込まれていることも少なくありません。

さらに非常用自家発電設備を有している施設の想定用途(複数回答)は、照明が66.5%、非常用コンセントが55.6%、通信手段(携帯電話、固定電話)が34.0%、医療機器(ナースコールを除く)が28.7%、冷暖房機が22.5%などの順です。冷暖房機の稼働は、想定順位としては低く、非常用自家発電設備の出力が低ければ低いほど、冷暖房機までは回らないことが考えられます。

一方、この調査からは断水を想定した「自施設・事業所で給水設備(受水槽、高架水槽など)を整備している」施設の割合も42.4%に過ぎないことがわかっています。「ペットボトルを自施設・事業所で準備」という回答も66.3%ありますが、ライフラインの復旧に時間を要する今回のような大規模災害を乗り切れるほど十分な備蓄があるとは思えません。

災害時における熱中症の予防・対応とは

さて話を熱中症対策に戻します。すでに過去10年ほどは官公庁や報道が繰り返し熱中症対策を呼び掛けていることもあり、厳格に実行しているかどうかは別にして、多くの人がその基本中の基本は心得ているはずです。

まず、熱中症の予防に関しては、▽喉の渇きの有無にかかわらずこまめに水分を補給する▽外出は控えてエアコンなどを使って適切に室温を管理する、の主に2つです。そして熱中症が疑われる人の応急対処法は、▽エアコンが効いている室内や風通しのよい日陰など涼しい場所への避難▽衣服をゆるめて体を冷やす▽経口補水液を補給、の主に3つで、自力で飲水できない、応答がおかしいなどの場合はすぐ救急車を呼ぶことになります。

しかし、停電・断水ではこれらの予防、応急対処はかなり難しいことになります。以下では、停電・断水の状態で非常用自家発電や断水を想定した給水設備がないという状態での熱中症対策を示します。

まず、ここで電気、水のいずれの確保を優先するかという究極の選択では、平時でも生命維持に欠かせない水、それも飲用水の確保を優先しなければなりません。

農林水産省のホームページには、一般論として、成人に必要な水分量は1日2.5L、うち0.9Lを食品自体の水分と調理水、0.3Lは体内の酸化燃焼から得ており、残り1.3Lをあらゆる飲み物から摂取すると記載しています。もっともこれは一般的に必要な水分量で、夏の熱中症対策としては、この1日2.5Lに加え、発汗量に応じた追加の水分摂取の必要があります。

さらにここで考慮が必要なことがあります。停電時は当然施設内で調理は不可能で、食事は災害時の備蓄や自治体などの支援物資に頼ることになります。ただ、こうした支援物資は、保存性を考慮した水分量が少ないものがほとんどです。つまり平時と違い、食事からの水分摂取量は必然的に低下します。ざっくりとした計算にはなりますが、このことや発汗なども踏まえると、前述の「あらゆる飲み物から摂取する」とされた1.3L分は、最低でも1人2.5L程度と考えて準備する必要があります。

被災自治体では現在、1人当たりの1日上限量を設けて給水活動を行っています。具体的には宇城市が1回4L、八代市、氷川町は1回5Lです。入所者が30人の施設の場合、飲用水だけで最低75Lが必要です。職員分や予備的なものを含めれば1日100Lは確保したいところですが、これが人力で運べるものでないことを誰もがわかることでしょう。

そこで施設が有する車両を使うことになりますが、1台で100Lの水の運搬はなかなか大変です。また、ガソリンの供給不安も考えれば、施設内で使える車両とそのガソリンの残量を考えながら、まずは給水のローテーションを組むことが必要です。時間が経つにつれ、自衛隊や他県の自治体が保有する大型給水車が被災地域内に入ってくるようになった場合、市区町村と交渉し、給水車による施設への直接運搬を要請するのも手です。

いずれにせよ飲用水確保を優先して、可能な限り入所者に水分摂取を促し、熱中症の予防につなげます。ただ、それでも熱中症になる入所者が発生するかもしれません。停電で涼しい場所を用意できない場合は、応急対処として皮膚に水をかけて扇ぐという蒸散冷却法を行います。この方法は米国心臓協会(AHA)と米国赤十字社による「応急処置ガイドライン2024年版」でも推奨されている積極的冷却法です。この応急対処を行いながら救急搬送を要請します。停電・断水時に行える熱中症対策としてはこれが精一杯です。

なお、こうした究極の災害を何とか乗り切ったのちは、非常用自家発電装置や断水時の給水設備の整備を急ぎ検討することを忘れてはいけません。

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