特養における緊急時対応 早朝・夜間は「原則対応しない」割合が約4分の1にも
現在特別養護老人ホームなどの人員の配置基準などに関しては、内閣府規制改革指針会議医療・介護ワーキング・グループで議論が続いています。12月20日に開催された同グループの第7回会合では、特養での業務負荷の高い医療ニーズへの対応やそれにかかわる医師や看護師の配置に関して、令和2年度老人保健健康増進等事業「特別養護老人ホームにおける看取り等のあり方に関する調査研究事業」で明らかになった実態が改めて示されました。今回は、その調査結果について解説します。
まず、特養での医療処置を要する入所者割合を処置別にみると、「胃ろう・腸ろうの管理」、「たんの吸引」が各4.6%、「カテーテルの管理」が4.1%、「褥瘡の処置」が2.7%などの順でした。་また、医療処置を要する入所者(重複を除く)が総入所者に占める割合は15.7%。これら各比率は広域型と地域密着型でほぼ同程度でしたが、いずれも若干広域型で高い傾向がありました。広域型は入所待機に限界がある、より重度の高齢者の受け皿になっていることがうかがわれます。
現在特養の配置医師は法令で人数規定はありませんが、同調査によると施設単位での配置医師数は1名が63.5%、2名が19.4%で、全体の96.6%が非常勤でした。配置医師個人が契約上責任を持つ月当たりの平均勤務時間は22.3時間ですが、実際の施設での平均勤務時間は12.0時間に過ぎず、実際の平均勤務時間が6時間未満の割合が4割弱にも達しています。
また、配置医師が施設内に勤務していない時間帯の緊急時対応で、駆けつけ対応可能な割合は平日日中が48.8%、平日早朝・夜間が36.2%、休日日中が38.9%、休日早朝・夜間が33.9%で、平日、休日の早朝・夜間は「原則対応しない」割合が約4分の1にも上っています。
一方、平均看護職員数は広域型で5.8人、地域密着型で2.8人、50人規模換算では平均3.4人でした。このうち平均常勤職員数は広域型で2.6人、地域密着型で1.4人です。看護職員が必ず勤務している時間帯は、勤務開始時間で最多は8時台が60.1%、次いで7時台が20.8%、勤務終了時間では17時台が45.7%、18時台が36.2%で、夜間の対応は施設の看護職員によるオンコール体制が84.5%となっていました。
これまでも繰り返し指摘されてきた早朝・夜間の医師、看護師の対応の手薄さが改めて浮き彫りになりましたが、平成30年度介護報酬改定ではこれを是正するため配置医師が早朝・夜間に入所者の急変などに対応した場合に算定できる「配置医師緊急時対応加算」が新設されました。調査では同加算を算定していた事業所は全体の7.7%に過ぎないことが明らかになりました。算定しない理由の最多は「配置医師が必ずしもかけつけ対応ができないため」の44.4%、次いで「緊急時はすべて救急搬送で対応するため」25.4%でした。
冒頭に紹介した医療処置に関しては、経鼻経管栄養の管理や酸素療法といった比較的重めの処置割合は1%前後に過ぎませんでしたが、今回の医療人員配置の欠乏ぶりから推定すると、そもそもそうした高齢者は特養ではあまり受け入れていないとも考えられます。
詳しくはこちらから
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/iryou/211220/211220iryou_0104_03.pdf/