福祉人材サービスを行う株式会社ニッソーネットが、同社登録介護派遣スタッフを対象に実施した介護現場の状況に関するアンケート結果を発表しました。今回はこの内容を解説します。
約半数が「早く来てほしい」強まる外国人介護士に対する待望論
コロナ禍では外国人の入国制限により、外国人介護人材が減少して現場の人手不足に拍車をかけたとの指摘もあります。アンケートで今後の外国人介護人材の受け入れについて聞いたところ、「受け入れ体制が整っていないので急ぐ必要はない」が33.5%、「日本人介護士や利用者にとって良い刺激になるので早く来てほしい」が30.9%、「人材不足解消のために早く来てほしい」が19.0%、「日本人介護士だけで充足しているので急ぐ必要はない」が2.8%、「その他」が13.8%という結果でした。
2021年調査と比べると、「受け入れ体制が整っていないので急ぐ必要はない」が4.3%減少し、「人材不足解消のために早く来てほしい」は5.5%増加しました。早く来てほしい(「日本人介護士や利用者にとって良い刺激になるので早く来てほしい」と「人材不足解消のために早く来てほしい」の合計)が49.9%と半数に上り、急ぐ必要はない(「受け入れ体制が整っていないので急ぐ必要はない」と「日本人介護士だけで充足しているので急ぐ必要はない」の合計)よりも13.6%も多く、外国人介護士に対する待望論が強まっているといえます。
外国人介護士と一緒に働くメリットについて、「人手不足の解消、業務軽減」が61.6%と最も多く、以降は順に「異文化コミュニケーション」が51.2%、「職場の雰囲気が良くなる、活気がでる」が23.3%、「レクリエーションの多様化」が17.7%、「利用者が喜んでくれそう」が11.0%などでした。
その背景にある、国内の介護現場の人手不足感について聞いたところ、「大変不足している」が29.8%、「やや不足している」が44.3%、「ちょうどよい」が22.9%、「やや過剰」が1.7%、「大変過剰」が1.3%でした。
「やや不足している」が2021年調査から9.6%減少し、逆に「ちょうどよい」が4.8%増加、一見、コロナ禍当初よりは人手不足感が緩和された傾向があるように思えますが、「大変不足している」は2021年調査より2.8%増加し、不足している(「大変不足している」と「やや不足している」の合計)は依然として7割以上で介護現場の人材不足は慢性化していること自体は変わりありません。
また、「大変不足している」と「ちょうどよい」の割合が昨年から増えたということは、裏を返せば人手確保の点で勝ち組と負け組に分かれ始めている徴候とも言えるでしょう。
人手不足によって更に負担になっている業務について、
・定時に全員の検温と記録、消毒をすることで負担が増えた。今では額で検温ができるようになったが、血圧や血中酸素濃度は簡単には測れず、時間がかかる
・衛生管理が厳しくなり、作業の準備や作業後の工程が増えて、業務遅延のループになっている
・アルコール消毒や感染対策などの予防対策。入浴作業も対策しながらで、ややこしい
・感染者の清潔保持。感染者の洗濯物やリネンの消毒など、感染対策業務の増加を指摘する声が挙がった一方、クラスターが発生した際に、その対応で職員が取られてしまい、残りの少ない人数の職員が通常業務を回さないといけなくなったこと
・職員がコロナ感染した場合、その人が従事していた仕事が手薄になり、通常業務にプラスされる仕事が出る
など、実際の感染者発生に伴う苦労及び、介護現場でのポスト・コロナ時代はまだ先であることがうかがえます。
受け入れ態勢の整備にかかる時間を考えると、まずは日本人介護職員の確保と離職防止を
これらの結果をまとめると「現場の人手不足の慢性化は今も解消されておらず、その中で外国人介護士への期待は以前よりも高まっている」ということになるでしょう。もっとも外国人介護士に対する期待内容の筆頭6割超が「人手不足の解消、業務軽減」と回答していることを考えれば、日本人介護士ならばなお良いとも解釈できます。また、異文化交流への期待もあるとはいえ、外国人介護士が高齢者、とりわけ認知症などを有する高齢者と日本語でコミュニケーションを取るのは容易ではありません。それをマネジメントする日本人職員もかなり気を配らねばならず、外国人介護士を数の上でだけ揃えても残る日本人介護職員の業務負荷は上がる可能性があります。さらにコロナ禍についてはまだ先が見えないため、入国制限の緩和も再び変更される可能性があります。
その意味では外国人介護士に頼ることなく、まずは日本人介護職員の確保と離職防止が最優先事項でしょう。そのために求められるのが現場での業務負荷改善です。もっともコロナ対策に伴う消毒業務などを今すぐ軽減できる状況ではないのも現実です。このように考えると、まずはコロナ対策以外で職員の業務負荷を上げている原因はないかを総ざらいし、その改善に努めることが求められます。さらに言えばこうした業務負荷改善は日本人介護職員の確保や外国人介護士受け入れ時にも有利に働く可能性が高いと言えます。
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