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シリーズ 社会福祉法人の経営適正化に向けて(2) 施設ごとでも読み解ける人件費/採用費のコスト合理性<daily news pickup 11月29日>

法人全体だけでなく施設ごとでも分析可能な人件費に関わるコスト合理性

社会福祉法人の経営適正化に向けて課題を整理して解説するシリーズ。2回目は各施設ごとでも検証可能な人件費/採用費のコスト合理性の試算方法について紹介します。

社会福祉法人の経営分析のための財務指標には、「当期活動収支差額」「次期繰越活動収支差額」「事業活動収入対借入金比率」などさまざまありますが、法人全体という大きなくくりとともに、各施設ごとでも分析できる指標に「(人件費+委託費)比率」と「労働分配率」があり、この2つから人件費に関するコストの合理性が読み解けます。

報告書では経営適正化ができていない社会福祉法人が抱える課題として、「組織管理」「事業経営」「財務管理」「会計・経理」「利用者サービス」「職員管理」の6点を挙げ、モデルケースを記載しています。

(人件費+委託費)比率

算出方法は、

【(人件費支出+福利厚生費+退職給不引当金繰入-退職給不引当金戻入+賞不引当金繰入-賞不引当金戻入)+委託費支出<派遣職員委託費、給食調理委託費等>】
÷
【事業活動収入-寄附金収入―雑収入-借入金元金償還補助金収入-国庨補助金等特別積立金取崩額】
×
100(%)

で、正味の事業活動収入に対する人件費(人件費を代替する委託料を含む)支出総額の占める割合が分かります。人件費には、職員給与・賞与とともに法定福利費、福利厚生費、退職給与引当金繰入、賞与引当金繰入を含みます。委託料には、派遣職員委託費、給食調理委託等の人件費分を算定します。

社会福祉法人においては平均75%程度となっており、この指標が85%を上回ると、当期活動収支差額がマイナスになる傾向があるため、原因を把握する必要があります。また、職員の離職率が高い場合には、この比率が低くなっている場合もあります。

労働分配率

算出方法は、

【人件費支出+福利厚生費+退職給不引当金繰入-退職給不引当金戻入+賞不引当金繰入-賞不引当金戻入)】
÷
【(事業活動収入-寄附金収入―雑収入-借入金元金償還補助金収入-国庨補助金等特別積立金取崩額)-(事業費支出+委託費<事務費>+減価償却費-国庨補助金等特別積立金取崩額)】
×
100(%)

で、収入から事務費の委託費、事業費等を引いた残額に占める人件費の割合で、法人の限界利益に対する人件費の占める割合が分かります。社会福祉法人においては、平均85%程度となっています。労働分配率が100%以上になると、限界利益以上の人件費が支出されていることになり、固定費の増大による恒常的な赤字を生じる可能性があるため、原因を把握する必要があります。

派遣職員委託費と採用費が改善のカギを握る

加算要件や退職リスクを考えると、職員の人件費にメスを入れるのは現実的とは言えないでしょう。また、人件費以外の支出も、サービス品質の観点から削減は難しいといえます。今回の人件費関連の支出で、個々の施設において改善可能なものは、派遣職員委託費と、今回の算出には関わっていませんが採用費(採用手数料含む)がカギを握ります。

夜間人員などを派遣職員中心から、夜間オンコール代行などにアウトソースする。自社ホームページや職員紹介による採用を活発化させて、人材紹介会社への手数料などの負担を減らす、などで支出を抑えることが短期的にできる人件費(関連費用含む)適正化の第一歩と言えそうです。

<参考資料>

東京都社会福祉法人経営適正化検討会「社会福祉法人の経営適正化に向けて」

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