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【ニュース解説】介護職員月額平均6,000円の賃上げや職場環境改善支援など 2023年度一般会計補正予算の内容は?

11月20日、政府は13兆1992億円にものぼる2023年度一般会計補正予算案を国会に提出しましたが、24日の衆議院で可決し、参議院に送られました。今回の補正予算のうち7割弱を占める8兆8750億円は、いわば国の借金となる国債の増発で捻出することになっています。おそらくこのまま参議院でも可決するものと思われますが、その中身はどうなっているのでしょうか?そこで介護関係の補正予算案の中身を解説します。

今回の介護関連の補正予算案は、「医療・介護・障害福祉分野の職員に対する処遇改善に向けた支援(以下、処遇改善支援)」「介護・障害福祉分野へのICT・ロボットの導入等による生産性向上や経営の協働化等を通じた職場環境の改善(同、職場環境改善支援)」「医療・介護・障害福祉分野における人材の養成・確保、定着を図る取組支援(同、人材確保・定着支援)」の3分野に分類されます。

常勤換算介護職員1人当たり月額平均6,000 円の賃金引上げ 処遇改善支援の内容は

最も規模が大きいのが処遇改善支援の364 億円。日本労働者組合総連合会(連合)の調査による2023年度の春闘での全産業平均賃上げ率は3.58%と、30年ぶりの高水準に達しましたが、全国老人福祉施設協議会などの調査による介護職の平均賃上げ率は1.42%にとどまりました。これを受けて介護職員等ベースアップ等支援加算に上乗せする形で、収入を2%程度(月額平均6,000円相当)引き上げるための措置として、この予算案が計上されました。

予算案が承認された際の実施要件(対象、補助率など)ですが、実施対象期間は2024年2~5月の賃金引上げ分で、予算案では「以降も、別途賃上げ効果が継続される取組みを行う」としています。

具体的な補助金額は、介護事業所の常勤換算介護職員1人当たり月額平均6,000 円の賃金引上げ相当額で、より具体的には対象サービスごとに常勤換算介護職員数に応じて必要な交付率を設定し、事業所総報酬にこの交付率を乗じた額の支給を予定しています。対象職種は介護職員ですが、「事業所の判断により、他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」としています。

対象事業所は処遇改善計画書などを都道府県に提出して申請を行い、交付が決定されれば、満額の補助金が交付されます。交付を受けた事業所は処遇改善実績報告書の提出が必要になり、結果として要件を満たさなかった場合は補助金を返還しなければなりません。

職場環境改善支援 その内容は 

職場環境改善支援は、さらに4つの事業分野に分けられます。

最大規模は「介護サービス事業者の生産性向上や協働化等を通じた職場環境改善事業」の351億円。具体的には(1)各介護事業所のICT 機器本体やソフトなどを導入・更新(2)地域全体の事業所の機器導入やそれに伴う人材育成(3)小規模事業者を含む事業者グループが協働して行う人材募集や一括採用、合同研修の実施など職場環境改善の取組に対して補助を行うものです。実施主体は都道府県ですが、都道府県から市町村への補助も可能です。負担割合に関しては(1)と(3)は国・都道府県が3/4、事業者が1/4、(2)は国・都道府県が全額、(1)と(3)を同時に行う場合は国・都道府県が4/5、事業者が1/5となります。

2つ目が「介護ロボット開発等加速化事業」の3.9億円。介護施設・開発企業双方から介護ロボットに関する相談を受け付ける全国15ヵ所の相談窓口、開発実証のアドバイザリーボード兼先行実証フィールドの役割を担う全国8ヵ所のリビングラボネットワーク、全国の介護施設の協力による大規模実証フィールドからなる介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォームの運営充実を図ることを目的とします。

3つ目が「ケアプランデータ連携システム構築事業」の2.1 億円。国民健康保険中央会に構築した居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で交わされるケアプランデータ連携システムについて、ケアプラン標準仕様の改訂やパイロット運用および本格運用で顕在化した課題に対応するための改修、既に地域で連携を行っているサービスなどと連携するためのAPI開発などへの支援が念頭に置かれています。

4つ目が「社会福祉法人の生産性向上に対する支援」の7500万円。社会福祉連携推進法人の設立に向けた一般社団法人の設立手続などの準備や設立後の社会福祉連携推進業務の企画立案・実施を支援します。実施主体は都道府県・指定都市・中核市・一般市(特別区含む)で、1回限りの定額補助として現行の100 万円以内を250 万円以内に拡充する計画です。

人材確保・定着支援 その内容は

人材確保・定着支援は6種類あります。

「介護職員処遇改善加算等の取得促進支援事業」が1.1 億円。処遇改善加算の新規取得やより上位区分の加算取得、今回の補正予算による新規処遇改善の実施や次年度の介護報酬改定での加算の見直しなどに向けて、都道府県、指定都市が行う介護事業所などへの研修会や専門的相談員(社会保険労務士など)の派遣を通じた助言・指導などを行う場合に国が全額支援をします。

2つ目は「介護福祉士修学資金等貸付事業における貸付原資の確保」の52億円。この貸付制度は従来から存在しましたが、今回の補正予算案では貸付原資を積み増します。実施主体は都道府県あるいは都道府県が適当と認める団体で、介護福祉士養成学校の学生に対して定額(月額学費5万円、入学準備金と就職準備金が各20万円、国家試験受験対策費が年4万円など)を貸し付けます

3つ目は「外国人介護人材受入促進事業(地方自治体への補助事業)」の2.3億円。これは▽外国人介護人材の介護現場での円滑な就労・定着を目的とした事業所によるツール導入やそれを有効活用するための環境整備の支援▽海外現地での外国人介護人材確保のために現地学校との連携強化や現地での求人募集などの外国人介護人材確保の取組に対する支援、に分けられます。補助率については、前者は国が1/2 、都道府県が1/4 、受入事業所などが1/4 、後者は国が2/3 、都道府県が1/3です。

4つ目は「外国人介護人材受入・定着支援事業(民間団体等への補助事業)」の2.4億円。これも▽介護技能評価試験等の拡充▽外国人介護人材の日本語学習支援の拡充、に分けられます。

5つ目は「介護の入門的研修から入職までの一体的支援モデル事業介護の入門的研修から入職までの一体的支援モデル事業」の1.6 億円。これまであった介護未経験者向けの入門的研修に職場体験、マッチングなども付加して一体的に行うモデル事業の実施を都道府県、市町村に求めるものです。

6つ目は「地域における介護人材確保促進のための伴走支援事業」の4800万円。各地域での介護人材確保に向けて、地域ごとの必要介護人材の推計や対策の検討や実行の際に有識者が助言などを行う事業です。

以上は医療・介護分野に直接フォーカスを当てた補正予算案ですが、それ以外にも介護が関係するものがあります。その一つは「三位一体の労働市場改革の推進等」として計画されている「人手不足分野における人材確保のためのハローワークの体制拡充」で予算規模は6800万円。さらにオンライン資格確認などのシステムを拡充し、保健・医療・介護の情報を共有可能な「全国医療情報プラットフォーム開発事業」の69 億円も今回の補正予算案に組み込まれています。

これらの支援の申し込みや登録については、予算成立後に厚労省や自治体から公表されるので、チェックを欠かさず、経営支援に活用した方が良いでしょう。

厚生労働省「令和5年度 補正予算案の主要施策集」

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