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【ニュース解説】義務化も近い?「勤務間インターバル制度」 介護経営にメリットとなる3つの理由

従来から過重労働が指摘される介護現場ですが、昨今は業種を問わず働き方改革が進んでいることはもはや周知のことでしょう。そうした状況を踏まえ、昨年1月から厚生労働省の労働政策審議会では、約40年ぶりの労働基準法改正が議論されてきました。

当初の予定では、改正法案は今年1月の通常国会に提出され、2026年中に成立・施行される予定でしたが、2025年10月に就任した高市早苗首相が裁量労働制の適用拡大など労働時間規制の緩和に向けた検討を指示したことにより、1月の通常国会への提出は見送られました。

この改正案に盛り込まれると見られていたものの1つが「勤務間インターバル制度」の義務化です。法改正自体が当面見送られたとはいえ、今後の議論次第では急速に改正が進む可能性は否定できません。また夜勤や早番、遅番などの勤務体制が入り混じる介護現場では、法改正とは無関係にこうした制度の導入が職員の定着に向けた「切り札」になる可能性も秘めています。そこで今回は同制度の基本、介護現場での導入のポイント、そのメリットを解説します。

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「勤務間インターバル制度」とは? 厚労省は努力義務として導入を推奨

勤務間インターバル制度をシンプルに説明すると、「終業時刻」から「次の始業時刻」までの間に、一定時間以上の「休息時間(インターバル)」を設ける仕組みです。たとえば、インターバルを11時間と設定した場合、夜の22時に仕事が終わった従業員は、翌朝の9時までは次の業務を開始してはいけない、ということになります。

実はこの制度の起源は1993年に欧州連合(EU)で採択された「EU労働時間指令」にあります。同指令では、労働者の健康と安全を守るため、長時間労働や休息不足の防止を目的にEU加盟国に対し、「24時間につき最低連続11時間の休息(勤務間インターバル)」の確保を義務付けました。

これを受けて、ヨーロッパ各国が、1990年代後半から2000年代にかけて次々と国内法を整備しました。具体例としては1994年に施行したドイツの「労働時間法」、1998年に成立したフランスの「労働時間短縮指導・奨励法・第一次法(通称・第1次オブリー法:オブリーは当時のフランスの雇用・連帯大臣であるマルティーヌ・オブリーが語源)」などで、11時間連続の休息時間が義務化されました。

ちなみに「なぜ11時間?」と思う人もいるかもしれません。これは「24時間-法定労働時間8時間-休憩1時間=15時間」の中から、通勤や睡眠、私生活の時間を逆算して導き出された数字と言われています。

厚生労働省資料より

こうしたことを受けて日本でも導入に向けた議論が進められ、2019年4月施行の働き方改革関連法、具体的には「労働時間等設定改善法」で初めてすべての事業主への努力義務として導入されました。現時点ではあくまで努力義務にとどまるため、罰則はありませんが、厚生労働省は過労死防止や健康確保の観点から、導入を推奨しています。

実際、「過労死等防止対策推進法」に基づいて3年ごとに変更が行われている「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、2021年に閣議決定された2回目の変更で2025年までに同制度を知らなかった企業割合を5%未満、導入している企業割合を15%以上とする数値目標を盛り込みました。

「人手不足」はもう通用しない? 医療業界では制度導入の流れ進む

厚生労働省による令和7年(2025年)就労条件総合調査の結果では、「導入している」はわずか6.9%にとどまります。これ以外の回答は「導入を予定又は検討している」が13.8%、「導入予定はなく、検討もしていない」が78.7%で、大綱で示した数値目標は未達に終わっています。

同調査では「導入予定はなく、検討もしていない」企業にその理由(複数回答)も尋ねています。そのトップに来るのは「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」が57.3%、次いで「当該制度を知らなかったため」が19.9%、「人員不足や仕事量が多いことから、当該制度を導入すると業務に支障が生じるため」が9.7%などとなっています。

慢性的な人手不足にあえぐ介護業界関係者にとって、少なくとも1番手の理由が当てはまるところはほとんどないでしょう。逆に「うらやましい」と思う関係者のほうが多いのではないでしょうか?一方で3番手の「人員不足や仕事量…」という理由は思わず頷いてしまうかもしれません。

ただ、同様に人手不足や緊急時対応が求められる医師に関しては、2024年にスタートした医師の働き方改革に伴う医療法改正に基づき、医療法施行規則で日勤・宿日直許可のある当直では9時間(宿日直許可のない当直では18時間)の勤務間インターバル制が努力義務として例示されました。また、医療・介護業界以外では、物流業や旅客業での自動車運転手でも2024年から労働基準法と厚生労働省の告示により9~11時間の勤務間インターバルが努力義務とされました。いずれも厳密な意味での法律上の義務ではありませんが、省庁の告示で具体的に例示がある場合、法律上は努力義務でもより強い勧告的位置づけを持ちます。

これに加え、冒頭で説明したように今後労働基準法改正で勤務間インターバルが義務化される可能性が高まっていることを考えれば、介護業界の「人手不足」という理由が、勤務間インターバル制度導入を回避する免罪符としてこれから先も通用するとは思わないほうが良いでしょう。

また、他業種に比べて変則的なシフト勤務が多い介護業務では、適切なインターバルが確保されないと、睡眠不足による業務で利用者に重大な事故を起こしてしまうリスクがあるだけでなく、就業者のメンタルヘルス悪化や離職を一層招きやすくなってしまいます。

勤務間インターバル 導入に向けた6つのステップ

それでも「人手が足りないのに、インターバルなんて無理だ」と感じる方も多いかもしれません。しかし、一気に完璧を目指す必要はなく、進められるところから徐々に進めていくのも1つの方法です。以下にその一例を示します。

<ステップ1:現状の把握>
まず、現在の各部門・各職員の勤務状況を分析し、「退勤から出勤まで何時間空いているか」を可視化する。とくに勤務間インターバルの最低時間といわれる9時間に達していない部門や職員がどれくらいあるかを抽出する。

<ステップ2:勤務間インターバル不足の原因究明>
勤務間インターバルの最低時間9時間を取れていない部門・職員の業務内容を洗い出し、その業務の要否、代替可能性などを分析する。代替可能性については、ICT導入、パート雇用、タスクシェア・シフトによる代替可能性についてコスト・パフォーマンスも含めて検討する。

<ステップ3:業務改善とその効果分析>
不要業務の中止、代替可能手段の実行を進め、その結果、勤務間インターバルの改善程度を測定。改善が不十分な場合は再度原因究明と改善策を立て、それを実行する。

<ステップ4:例外処理のルール化>
緊急対応などでどうしてもインターバルが確保できなかった場合、「翌日の始業時刻を後ろ倒しにする」や「別の日に調整休を与える」が可能かを検討し、可能なものはあらかじめルール化する。

<ステップ5:休息時間の目標設定>
まずは「最低9時間」「インターバル取れる職員から実行」など現実的なラインからスタートする。

<ステップ6:就業規則への規定>
制度を形骸化させないために就業規則に「勤務終了後、次の勤務開始まで〇時間以上の休息時間を置くものとする」と明文化する。

制度導入をサポートするICT導入の助成金は継続に向け国会で審議中

ICT導入については、「そんな予算はない」と嘆く介護事業所関係者も少なくないでしょう。実はこれに関しては、勤務間インターバル制度を導入する中小企業が対象とした国の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」があり、介護保険施設の一部も対象となります。具体的には社会福祉法人で常時雇用者100人以下、医療に区分される介護老人保健施設、介護医療院は300人以下が対象となります。

厚生労働省リーフレットより

対象となる経費は、▽労務管理担当者に対する研修▽労働者に対する研修、周知・啓発▽外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング▽就業規則・労使協定などの作成・変更▽人材確保に向けた取組▽労務管理用ソフトウェアの導入・更新▽労務管理用機器の導入・更新▽デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新▽労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新▽労務管理ソフトの導入▽テレワーク用通信機器の導入▽労働能率を高めるための設備・機器(介護リフトなど)の購入、のいずれか1つ以上です。ただし、原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

助成金額は、前出に要した経費の4分の3で、新規に勤務間インターバルを導入する場合、インターバル時間が9時間以上11時間未満では上限が100万円、11時間以上では上限120万円です。

ちなみに新規導入以外にも、すでに制度導入済みで対象人員を拡大する「適用範囲の拡大」、または制度はあるもののインターバルが9時間未満の事業者が9時間以上へ、インターバル9時間以上11時間未満の事業者が11時間以上に延長する「時間延長」の取組でも助成金は支給されます。ただし、これらのケースは上限額がそれぞれ前出金額の半額となります。さらにこの助成では賃上げを成果目標に加え、それを達成すると助成金にさらに加算が付きます。「予算がないからICT化できない」と諦める前に、ぜひ利用を検討していただきたい制度です。

なお、2025年度の助成金申請はすでに締め切られていますが、現在国会で審議中の2026年度政府予算案では継続を前提とした予算が組まれています。

勤務間インターバル制度が介護経営においてメリットとなる3つの理由

最後に制度導入のメリットについて触れておきます。職員個人だけでなく、施設経営側にも主に3つのメリットをもたらします。

第1は「職員の健康維持と定着率の向上」です。十分な休息が保証されれば、職員の疲労回復促進効果が期待されます。そのうえで職員の健康を重視する職場という姿勢を示されることで、職員のエンゲージメント(貢献意欲)が高まり、離職率の低下が期待できます。

第2は「採用力の強化」です。慢性的な人手不足に悩む介護業界で「うちは11時間のインターバルを徹底しています」というアピールは、採用活動の強力な武器になります。ワークライフバランスを重視する若年層、育児・介護と両立したい層にとって、非常に魅力的な職場に映ります。

第3は「サービスの質の安定」です。リフレッシュした状態で業務に臨むことで、利用者様への接遇が丁寧になり、事故防止にもつながります。結果として、利用者本人やその家族からの信頼も厚くなり、施設の評判向上に直結します。

一般に介護従事者は、責任感が強く、自分が頑張れば良いと考えがちです。しかし、睡眠不足や過労によるダメージは蓄積され、いつかは限界を迎えてしまいます。勤務間インターバル制度は、決して仕事の手を抜く仕組みではありません。むしろ「常に最善の状態で利用者に接するための、プロとしての準備時間」を確保するための仕組みと捉えましょう。

また、施設の運営側にとっても、職員が健康に長く働き続けられる環境を作ることは、経営の安定に不可欠な投資と言えます。「職員を守ることが、利用者を守ることにつながる」と考え、できないと思い込まず、まずは取り組んでみることが肝要です。少なくとも導入に向けて上記のステップ3~4までを実行することで、業務改善効果は期待できるでしょう。

厚生労働省「勤務間インターバル制度をご活用ください」

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