厚労省の社会保障審議会(介護給付費分科会)は12月19日に取りまとめた「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」の中から、看護小規模多機能型居宅介護が対象となる改定項目についてまとめました。
令和6年度介護報酬改定は基本的な視点として「地域包括ケアシステムの深化・推進」「自立支援・重度化防止に向けた対応」「良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」から構成されています。
介護報酬改定の実施時期はサービスごとに分かれており、看護小規模多機能型居宅介護は2024年4月からのスタートとされています。
看護小規模多機能型居宅介護の改定について、テーマごとに全項目をお伝えします。
地域包括ケアシステムの深化・推進〜地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組
総合マネジメント体制強化加算の見直し
定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び(看護)小規模多機能型居宅介護が、地域包括ケアシステムの担い手として、地域に開かれた拠点となり、認知症対応を含む様々な機能の発揮を促進する観点から、総合マネジメント体制強化加算について、地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組を評価する新たな区分を設ける。
なお、現行の加算区分については、新たな加算区分の取組を促進する観点から評価の見直しを行う。
地域包括ケアシステムの深化・推進〜医療と介護の連携の推進<在宅における医療ニーズへの対応強化>
専門性の高い看護師による訪問看護の評価
医療ニーズの高い訪問看護利用者が増える中で、適切かつより質の高い訪問看護を提供する観点から、専門性の高い看護師が指定訪問看護、指定介護予防訪問看護及び指定看護小規模多機能型居宅介護の実施に関する計画的な管理を行うことを評価する新たな加算を設ける。
看護小規模多機能型居宅介護における柔軟なサービス利用の促進
看護小規模多機能型居宅介護において、介護度に寄らず利用者ごとの利用頻度が幅広く、利用料や「通い・泊まり・訪問(看護・介護)」の各サービスの利用ニーズ有無等を理由に新規利用に至らないことがあることを踏まえ、利用者の柔軟な利用を促進する観点から、以下の見直しを行う。
ア:当該登録者へのサービス提供回数が過少な場合は、基本報酬を減算する。
イ:緊急時訪問看護加算について、緊急時の宿泊サービスを必要に応じて提供する体制を評価する要件を追加する見直しを行う。
地域包括ケアシステムの深化・推進〜看取りへの対応強化
訪問看護等におけるターミナルケア加算の見直し
ターミナルケア加算について、介護保険の訪問看護におけるターミナルケアの内容が医療保険におけるターミナルケアと同様であることを踏まえ、評価の見直しを行う。
情報通信機器を用いた死亡診断の補助に関する評価
離島等に居住する利用者の死亡診断について、診療報酬における対応との整合性を図る観点から、ターミナルケア加算を算定し、看護師が情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合の評価を新たに設ける。
地域包括ケアシステムの深化・推進~感染症や災害への対応力向上
業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する。
その際、一定の経過措置を設ける観点から、令和8年3月 31 日までの間、感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないこととする。
なお、訪問系サービス、居宅介護支援については、令和3年度介護報酬改定において感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備が義務付けられてから間もないこと及び非常災害に関する具体的計画の策定が求められていないことを踏まえ、令和8年3月 31 日までの間、これらの計画の策定を行っていない場合であっても、減算を適用しないこととする。
地域包括ケアシステムの深化・推進〜高齢者虐待防止、安全性の確保等の取組の推進
高齢者虐待防止の推進
利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、全ての介護サービス事業者(居宅療養管理指導、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売を除く。)について、虐待の発生又はその再発を防止するための措置(虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)が講じられていない場合に、基本報酬を減算する。その際、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売については、そのサービス提供の態様が他サービスと異なること等を踏まえ、3 年間の経過措置期間を設けることとする。
また、国の補助により都道府県が実施している事業において、ハラスメント等のストレス対策に関する研修を実施できることや、同事業による相談窓口について、高齢者本人とその家族だけでなく介護職員等も利用できることを明確化する。
身体的拘束等の適正化の推進
身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、以下の見直しを行う。
ア:短期入所系サービス、多機能系サービスについて、身体的拘束等の適正化のための措置(委員会の開催等、指針の整備、研修の定期的な実施)を義務づける。また、身体的拘束等の適正化のための措置が講じられていない場合は、基本報酬を減算する。その際、1年間の経過措置期間を設けることとする。
イ:訪問系サービス、通所系サービス、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅介護支援について、利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないこととし、身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録することを義務づける。
地域包括ケアシステムの深化・推進〜認知症の対応力向上
(看護)小規模多機能居宅介護における認知症対応力の強化
(看護)小規模多機能型居宅介護における認知症対応力の更なる強化を図る観点から、認知症加算について、新たに認知症ケアに関する専門的研修修了者の配置や認知症ケアの指導、研修等の実施を評価する新たな区分を設ける。
その際、現行の加算区分については、新たな加算区分の取組を促進する観点から、評価の見直しを行う。
自立支援・重度化防止に向けた対応〜LIFE を活用した質の高い介護
科学的介護推進体制加算の見直し
科学的介護推進体制加算について、質の高い情報の収集・分析を可能とし、入力負担を軽減し科学的介護を推進する観点から、以下の見直しを行う。
ア:加算の様式について入力項目の定義の明確化や他の加算と共通している項目の見直し等を実施。
イ:LIFE へのデータ提出頻度について、少なくとも「6月に1回」から「3月に1回」に見直す。
ウ:初回のデータ提出時期について、他の LIFE 関連加算と揃えることを可能とする。
アウトカム評価の充実のための排せつ支援加算の見直し
排せつ支援加算について、介護の質の向上に係る取組を一層推進する観点から、以下の見直しを行う。
ア:排せつ状態の改善等について評価に加え、尿道カテーテルの抜去についても新たに評価を行う。
イ:加算の様式について入力項目の定義の明確化や他の加算と共通している項目の見直し等を実施。
ウ:初回のデータ提出時期について、他の LIFE 関連加算と揃えることを可能とする。
アウトカム評価の充実のための褥瘡マネジメント加算等の見直し
褥瘡マネジメント加算(介護医療院は褥瘡対策指導管理)について、介護の質の向上に係る取組を一層推進する観点から、以下の見直しを行う。
ア:施設入所時又は利用開始時に既に発生していた褥瘡が治癒したことについても評価を行う。
イ:加算の様式について入力項目の定義の明確化や他の加算と共通している項目の見直し等を実施。
ウ:初回のデータ提出時期について、他の LIFE 関連加算と揃えることを可能とする。
良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり~介護職員の処遇改善
介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置をできるだけ多くの事業所に活用されるようにする観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。その際、令和6年度末までの経過措置期間を設けることとする。
また、以下の見直しを行う。
ア:職種間の賃金配分について、職種に着目した配分ルールは設けず、一本化後の新加算全体について、事業所内で柔軟な配分を認める。
イ:新加算の配分方法について、 新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、一番下の区分の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。その際、それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。
ウ:職場環境等要件について、生産性向上及び経営の協働化に係る項目を中心に、人材確保に向け、より効果的な要件とする観点で見直しを行う。
良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり~生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
テレワークの取扱い
人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、取扱いの明確化を行い、職種や業務ごとに具体的な考え方を示す。
介護ロボット・ICT 等のテクノロジーの活用促進
介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボット・ICT 等のテクノロジーの導入後の継続的なテクノロジーの活用を支援するため、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジー(※1)を1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うことを評価する新たな加算を設ける。
加えて、上記の要件を満たし、提出したデータにより業務改善の取組による成果が確認された上で、見守り機器等のテクノロジーを複数導入し(※2) 、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていることを評価する区分を設ける。
(※1)
見守り機器等のテクノロジーとは、以下のアからウに掲げる機器をいう。
ア:見守り機器
イ:インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資する ICT 機器
ウ:介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資する ICT 機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)
(※2)
見守り機器等のテクノロジーを複数導入するとは、少なくともアからウまでに掲げる機器は全て使用することであり、その際、アの機器は全ての居室に設置し、イの機器は全ての介護職員が使用することとする。
なお、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認することとし、当該利用者の意向に応じ、機器の使用を停止する等の運用は認められるものであること。
外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し
就労開始から6月未満の EPA 介護福祉士候補者及び技能実習生(以下「外国人介護職員」という。)については、日本語能力試験 N1 又は N2 に合格した者を除き、両制度の目的を考慮し、人員配置基準への算入が認められていないが、就労開始から6月未満であってもケアの習熟度が一定に達している外国人介護職員がいる実態なども踏まえ、人員配置基準に係る取扱いについて見直しを行う。
具体的には、外国人介護職員の日本語能力やケアの習熟度に個人差があることを踏まえ、事業者が、外国人介護職員の日本語能力や指導の実施状況、施設長や指導職員等の意見等を勘案し、当該外国人介護職員を人員配置基準に算入することについて意思決定を行った場合には、就労開始直後から人員配置基準に算入して差し支えないこととする。その際、適切な指導及び支援を行う観点、安全体制の整備の観点から、以下の要件を設ける。
ア:一定の経験のある職員とチームでケアを行う体制とすること。
イ:安全対策担当者の配置、指針の整備や研修の実施など、組織的に安全対策を実施する体制を整備していること。
良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり~効率的なサービス提供の推進
管理者の責務及び兼務範囲の明確化
提供する介護サービスの質を担保しつつ、介護サービス事業所を効率的に運営する観点から、管理者の責務について、利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を行うことである旨を明確化した上で、管理者が兼務できる事業所の範囲について、管理者がその責務を果たせる場合には、同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない旨を明確化する。
いわゆるローカルルールについて
都道府県及び市町村に対して、人員配置基準に係るいわゆるローカルルールについて、あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で地域の実情に応じた内容とする必要があること、事業者から説明を求められた場合には当該地域における当該ルールの必要性を説明できるようにすること等を求める。
(看護)小規模多機能型居宅介護における管理者の配置基準の見直し
(看護)小規模多機能型居宅介護における管理者について、提供する介護サービスの質を担保しつつ、事業所を効率的に運営する観点から、他の事業所の管理者及び従事者との兼務可能なサービス類型を限定しないこととする。
その他
「書面掲示」規制の見直し
運営基準省令上、事業所の運営規程の概要等の重要事項等(※)については、原則として事業所内での「書面掲示」を求めている一方、備え付けの書面(紙ファイル等)又は電磁的記録の供覧により、書面による壁面等への掲示を代替できる規定になっているところ、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、介護サービス事業者は、原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人のホームページ等又は情報公表システム上)に掲載・公表しなければならないこととする。
※ 事業所の運営規程の概要等の重要事項、居室及び食堂の広さ、届出事項、特別な食事の提供に係る情報(内容及び料金等)、移動用リフト使用時の留意事項等
特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の対象地域の明確化
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法において、「過疎地域」とみなして同法の規定を適用することとされている地域等が、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算及び中山間地域に居住する者へのサービス提供加算の算定対象地域に含まれることを明確化する。
特別地域加算の対象地域の見直し
過疎地域その他の地域で、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難であると認められる地域であって、特別地域加算の対象として告示で定めるものについて、前回の改正以降、新たに加除する必要が生じた地域について、都道府県及び市町村から加除の必要性等を聴取した上で、見直しを行う。
看護小規模多機能型居宅介護におけるサービス内容の明確化
看護小規模多機能型居宅介護のサービス拠点における「通い」・「泊まり」で提供されるサービスに、看護サービス(療養上の世話又は必要な診療の補助)が含まれる旨を明確化する法改正があったことから、その旨を運営基準に反映する。
基準費用額(居住費)の見直し
※これまでの分科会での意見等を踏まえ、予算編成過程において検討
地域区分
令和6年度以降の級地の設定に当たっては、現行の級地を適用することを基本としつつ、公平性を欠く状況にあると考えられる自治体については特例(※1)を設け、自治体に対して行った意向調査の結果を踏まえ、級地に反映する。
また、平成 27 年度介護報酬改定時に設けられた経過措置(※2)については令和5年度末までがその期限となっているが、令和8年度末までの延長を認める。
(※1)次の場合は、当該地域に隣接する地域に設定された地域区分のうち、一番低い又は高い地域区分までの範囲で引上げる又は引下げることを認める。
ⅰ 当該地域の地域区分よりも高い又は低い地域に全て囲まれている場合
ⅱ 当該地域の地域区分よりも高い又は低い級地が設定された地域に複数隣接しており、かつ、その地域の中に当該地域と4級地以上の級地差がある地域が含まれている場合。なお、引上げについては、地域手当の級地設定がある自治体を除く
ⅲ 当該地域の地域区分よりも高い又は低い級地が設定された地域に囲まれており、かつ、同じ地域区分との隣接が単一(引下げの場合を除く)の場合。
なお、引上げについては、地域手当の級地設定がある自治体を除くイ 5級地以上の級地差がある地域と隣接している場合について、4級地差になるまでの範囲で引上げ又は引下げを認める。
(注1)隣接する地域の状況については、同一都道府県内のみの状況に基づき判断することも可能とする。(アⅰのみ)
(注2)広域連合については、構成自治体に適用されている区分の範囲内で選択することを認めているが、令和5年度末に解散する場合について、激変緩和措置を設ける。
(注3)自治体の境界の過半が海に面している地域にあっては、イの例外として、3級地差以上の級地差であっても2級地差になるまで引上げを認める。
(注4)障害福祉サービス等報酬及び子ども・子育て支援制度における公定価格の両方の地域区分が、経過措置等による特別な事情で介護報酬の級地より高くなっている場合、その範囲内において、隣接する高い級地のうち最も低い区分まで引上げを可能とする。
(※2)平成 27 年度の地域区分の見直しに当たり、報酬単価の大幅な変更を緩和する観点から、従前の設定値と見直し後の設定値の範囲内で選択することが可能とするもの。
厚生労働省 社会保障審議会(介護給付費分科会) 「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」
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