2024年1月22日に開催された社会保障審議会(介護給付費分科会)で提示された、単位数や算定要件などの令和6年度介護報酬改定の具体的な改定案から介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、軽費老人ホームなどが含まれる、特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護の改定項目について、シリーズでお伝えします。
【新規加算】高齢者施設等感染対策向上加算
高齢者施設等については、施設内で感染者が発生した場合に、感染者の対応を行う医療機関との連携の上で施設内で感染者の療養を行うことや、他の入所者等への感染拡大を防止することが求められることから、以下を評価する新たな加算を設ける。
ア 新興感染症の発生時等に感染者の診療等を実施する医療機関(協定締結医療機関)との連携体制を構築していること。
イ 上記以外の一般的な感染症(※)について、協力医療機関等と感染症発生時における診療等の対応を取り決めるとともに、当該協力医療機関等と連携の上、適切な対応を行っていること。※新型コロナウイルス感染症を含む。
ウ 感染症対策にかかる一定の要件を満たす医療機関等や地域の医師会が定期的に主催する感染対策に関する研修に参加し、助言や指導を受けること。
また、感染対策に係る一定の要件を満たす医療機関から、施設内で感染者が発生した場合の感染制御等の実地指導を受けることを評価する新たな加算を設ける。
単位数
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)10単位/月(新設)
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)5単位/月(新設)
算定要件等
<高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)>
・感染症法第6条第17項に規定する第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を行う体制を確保していること。
・協力医療機関等との間で新興感染症以外の一般的な感染症の発生時等の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時等に協力医療機関等と連携し適切に対応していること。
・診療報酬における感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に行う院内感染対策に関する研修又は訓練に1年に1回以上参加していること。
<高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)>
・診療報酬における感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関から、3年に1回以上施設内で感染者が発生した場合の感染制御等に係る実地指導を受けていること。
【新規加算】新興感染症等施設療養費
新興感染症のパンデミック発生時等において、施設内で感染した高齢者に対して必要な医療やケアを提供する観点や、感染拡大に伴う病床ひっ迫を避ける観点から、必要な感染対策や医療機関との連携体制を確保した上で感染した高齢者を施設内で療養を行うことを新たに評価する。対象の感染症については、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する仕組みとする。
単位数
240単位/日(新設)
算定要件等
入所者等が別に厚生労働大臣が定める感染症※に感染した場合に相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保し、かつ、当該感染症に感染した入所者等に対し、適切な感染対策を行った上で、該当する介護サービスを行った場合に、1月に1回、連続する5日を限度として算定する。
※現時点において指定されている感染症はない。
【省令改正】新興感染症発生時等の対応を行う医療機関との連携
施設系サービス及び居住系サービスについて、利用者及び入所者における新興感染症の発生時等に、感染者の診療等を迅速に対応できる体制を平時から構築しておくため、感染者の診療等を行う協定締結医療機関と連携し、新興感染症発生時における対応を取り決めるよう努めることとする。また、協力医療機関が協定締結医療機関である場合には、当該協力医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応について協議を行うことを義務づける。
【新規減算】業務継続計画未実施減算
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する。
単位数
所定単位数の100分の3に相当する単位数を減算(新設)
算定要件等
以下の基準に適合していない場合
・感染症や非常災害の発生時において、利用者に対するサービスの提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
・当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること
※令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しない。
1年間の経過措置期間中に全ての事業所で計画が策定されるよう、事業所間の連携により計画策定を行って差し支えない旨を周知することも含め、小規模事業所の計画策定支援に引き続き取り組むほか、介護サービス情報公表システムに登録すべき事項に業務継続計画に関する取組状況を追加する等、事業所への働きかけを強化する。また、県別の計画策定状況を公表し、指定権者による取組を促すとともに、業務継続計画を策定済みの施設・事業所についても、地域の特性に合わせた実効的な内容となるよう、指定権者による継続的な指導を求める。
【新規減算】高齢者虐待防止措置未実施減算
利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、全ての介護サービス事業者(居宅療養管理指導及び特定福祉用具販売を除く。)について、虐待の発生又はその再発を防止するための措置(虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)が講じられていない場合に、基本報酬を減算する。その際、福祉用具貸与については、そのサービス提供の態様が他サービスと異なること等を踏まえ、3年間の経過措置期間を設けることとする。
施設におけるストレス対策を含む高齢者虐待防止に向けた取組例を収集し、周知を図るほか、国の補助により都道府県が実施している事業において、ハラスメント等のストレス対策に関する研修を実施できることや、同事業による相談窓口について、高齢者本人とその家族だけでなく介護職員等も利用できることを明確化するなど、高齢者虐待防止に向けた施策の充実を図る。
単位数
所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算(新設)
算定要件等
虐待の発生又はその再発を防止するための以下の措置が講じられていない場合
・虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
・虐待の防止のための指針を整備すること。
・従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
・上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと。
全ての施設・事業所で虐待防止措置が適切に行われるよう、令和6年度中に小規模事業所等における取組事例を周知するほか、介護サービス情報公表システムに登録すべき事項に虐待防止に関する取組状況を追加する。また、指定権者に対して、集団指導等の機会等にて虐待防止措置の実施状況を把握し、未実施又は集団指導等に不参加の事業者に対する集中的な指導を行うなど、高齢者虐待防止に向けた取組の強化を求めるとともに、都道府県別の体制整備の状況を周知し、更なる取組を促す。
【加算廃止】口腔衛生管理体制加算
全ての特定施設入居者生活介護において口腔衛生管理体制を確保するよう促すとともに、入居者の状態に応じた適切な口腔衛生管理を求める観点から、特定施設入居者生活介護等における口腔衛生管理体制加算を廃止し、同加算の算定要件の取組を一定緩和した上で、基本サービスとして行うこととする。その際、3年間の経過措置期間を設けることとする。
単位数
現行の「口腔衛生管理体制加算30単位/月」を廃止
※3年間の経過措置期間を設ける
厚生労働省 第239回社会保障審議会介護給付費分科会
【関連トピックス】
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